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中國出土資料の多角的研究

中國出土資料の多角的研究

◎非発掘簡の史料価値を確立し、伝世文献を再検討し、複眼的に戦国秦漢時代中国像を解析する

著者 谷中 信一
ジャンル 東洋史(アジア)
東洋史(アジア) > 殷周秦漢
中国思想・哲学
中国思想・哲学 > 先秦漢
出版年月日 2018/03/16
ISBN 9784762966132
判型・ページ数 A5・584ページ
定価 11,000円(本体10,000円+税)
在庫 在庫あり
 

目次

序 文 (谷中信一)


第1部 辨僞學の確立


「非發掘簡」を扱うために (大西克也)

考古學研究からみた非發掘簡―商周靑銅器研究との對比を中心に― (丹羽崇史)


第2部 非發掘簡の資料價値の確立


上博楚簡『君子爲禮』譯注 (今田裕志)

淸華簡『繫年』抄寫年代の推定―及び文字の形體から見た、
      戰國楚文字の地域的特徴形成の複雜なプロセス (郭 永秉(宮島和也 譯))

從淸華簡《繫年》看兩周之際的史事 (劉 國忠)

重讀淸華簡《厚父》筆記 (趙 平安)

淸華簡《湯在啻門》譯注 (曹  峰)

淸華簡『鄭武夫人規孺子』の謙虛な君主像について (小寺 敦)

淸華簡(六)『管仲』譯注並びに論考 (谷中信一)

北京大學藏秦牘「泰原有死者」考釋 (池澤 優)

北大藏秦漢《敎女》釋文再探 (朱 鳳瀚)

北京大學漢簡「揕輿」と馬王堆帛書『陰陽五行』甲篇「堪輿」の對比研究 (名和敏光)

北大漢簡所見的古堪輿術初探及補説 (陳 侃理)


第3部 出土資料を通した中國文獻の再評價


楚國世族の邑管領と呉起變法 (平㔟隆郎)

坊記禮説考 (末永高康)

老官山漢簡醫書に見える診損至脈論について (廣瀬薫雄)

戰國秦漢出土文獻と『孔子家語』成書研究 (鄔 可晶(北川 直子譯))

『老子』における「天下」全體の政治秩序の構想―馬王堆帛書甲本に基づいて― (池田知久)

見果てぬ三晉簡―後書きに代えて (大西克也)


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内容説明

【序文より】(抜粋)

本論集『中國出土資料の多角的研究』は、2014年4月から2018年3月までの科學研究費による助成を受けて進めてきた中國出土資料研究の成果の一端である。過去に刊行した『楚地出土資料と中國古代文化』(汲古書院 2002)及び『出土資料と漢字文化圈』(同 2011)と合わせて三部作と稱することができる。これまで、中國の地では考古學上の發掘の成果としての「發掘簡」に止まらず、盜掘など非合法手段によって發掘されたいわゆる「非發掘簡」が學界に提供されてきた。その數量は夥しいものがあり、例えば『上海博物館藏戰國楚竹書』・『淸華大學藏戰國竹簡』・『北京大學藏西漢竹書』などである。しかもそれらの學問上の價値は、それが僞でないという前提條件附きであるが、發掘簡に勝るとも劣らないと言うことができる。この事實は、我々が今後も引き續き中國古代の歷史や思想、文化、文字、言語、宗敎などを研究し、これまでの研究成果を更に深化させようとするならば、決して無視することのできない新資料群であることを意味している。しかしそれら非發掘簡を扱うにせよ、これまで傳世文獻だけで研究をしてきた者にとって、竹簡に記された文字を解讀することほど困難を伴うものはない。始めて楚簡の寫眞版を見た者は、直ちに絶望的な氣分に襲われるであろう。全く解讀不能と言ってもよいからである。このように新出土資料研究は傳世文獻研究とは異なる研究手法が求められる。一人で長時閒研究室に、或いは書齋に籠もっていれば、何かが分かると言うような代物ではない。絶えず新しい情報に目を配り、新しい研究成果に目を通す必要がある。更に古文字學者、音韻學者との共同作業が不可缺となる。そこで我々は、谷中(代表者)・池澤優・大西克也・小寺敦・末永高康・名和敏光(以上分擔者)の合わせて6名が共同してこのプロジェクトを發足させることとなった。谷中が所屬する日本女子大學に事務局を置き、今田裕志氏がこれを擔った。さらにこの他、研究協力者として國内外から若手を中心に募って本研究プロジェクトは始動した。初年度の研究課題は「辨僞學の確立」であった。傳世文獻には必須である辨僞の手續きは出土資料と雖も不可缺である。しかも所謂非發掘簡が近年增加傾向にあり、一部で僞簡も出回っていると聞くからである。2年目の研究課題は「非發掘簡の資料價値の確立」であった。所謂非發掘簡の存在を無視して先秦秦漢時代の研究は進まないと考えたからであった。3年目の研究課題は「出土資料を通した中國文獻の再評價」であった。前年度にひとまず非發掘簡の資料價値を檢討し、研究の俎上に乘せることが可能になったとしても、忘れてはならないのが傳世文獻の扱いである。これをないがしろにしてはならない。そこで取り組んだのが、これら出土資料を通して傳世文獻の資料價値を改めて檢討することであった。4年目は、これまでの研究成果を總括することである。すなわち、研究のための素材を吟味することに主眼が置かれているに過ぎないではないかとの予想される批判を考慮すれば、何を明らかにし得たかをより明確にしなければならない。それこそがMulti Disciplineによる出土文獻研究へのApproachであり、こうした方法論的Approachこそが、戰國秦漢時代をあらゆる視點觀點から複眼的に對象を解析することができ、それによって始めて立體的で活き活きとした戰國秦漢時代の中國像を結ぶことができるであろうと考えた。このような研究實績を踏まえて刊行する本論文集の目的と意義は自ずから明らかであろう。その目的の第一は、現時點での中國出土資料研究の最新の成果を問うことであり、第二に、Multi Disciplineすなわち多角的な方法論から出土資料に迫るという我々の研究態度がどれほどの成果を擧げ得たかを示すこと、第三に、我々の研究方法の評價すべき點は評價し、及ばざるところは更に發展させ、或いは至らざるところは修正して、ひいて今後の中國出土資料研究の發展に寄與すること、である。本論文集を手に取った讀者は、日本語論文有り、中國語論文有り、更にそのうえさまざまなテーマが掲げられていることから、或いはまとまりなく雜駁な印象を懷かれるかも知れない。しかしそれは上に述べたことに由來することをご理解頂けば、必然のこととして受け容れて頂けることと思う。中國出土資料研究に國境はない。ただ、そこに存在するのは言語の壁である。こればかりは如何ともしがたいが、それを前にたじろいでいたのでは、研究の進展は望むべくもないであろう。戰國秦漢時代の中國とても、現代とは大いに異なり、地域毎に言葉や文化が存在していたにもかかわらず、それを包み込んでしまうほどの廣大な漢字文化圈ができあがっていたのである。

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