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朱子学とその展開

――土田健次郎教授退職記念論集――

朱子学とその展開

◎土田健次郎教授の教育者としての成果!

著者 土田健次郎教授退職記念論集論集刊行委員会
ジャンル 中国思想・哲学
中国思想・哲学 > 総記・論集
出版年月日 2020/02/03
ISBN 9784762966408
判型・ページ数 A5・420ページ
定価 13,200円(本体12,000円+税)
在庫 在庫あり
 

目次

口絵
はじめに(永冨青地)


【中国】

朱子と二人の亜聖 (垣内景子)

朱熹の言説における負債感情の考察
     ――君臣関係と家族関係における恩を中心に―― (宮下和大)

王畿における『易』大象解釈について
     ――程頤、朱熹の説との関係から―― (三澤三知夫)

朝鮮古写徽州本『朱子語類』編纂考
     ――黄土毅語類と黎靖徳語類―― (松野敏之)

『悟真篇註疏』翁葆光注成書考
     ――新出の薛道光自序に基づく、戴起宗説の再検証―― (江波戸亙)

南宋銭時思想再考:「礼」と「自得」をめぐって (中嶋 諒)

「答顧東橋書」に見える王陽明万物一体論の動機 (大場一央)

李贄と宋儒――「道統」と「儒臣」のあいだ―― (阿部 亘)


【日本】

主張としての「福善禍淫」
     ――仁斎と藤樹。それぞれの教導―― (阿部光麿)

春台と徂徠との間 (許 家晟)

日本の「周辺」から見た東アジアの平和と宗教
     ――安藤昌益の平和論を中心に―― (片岡 龍)

十八世紀前半の朱子学者について――徂徠以後の朱子学者―― (清水則夫)

佐藤一斎は朱子学者か――『欄外書』の記載より見たる―― (永冨青地)

会沢正志斎の朱子像 (蔣 建偉)

三島中洲と岡本天岳
     ――山田方谷思想の継承をめぐって―― (原信太郎アレシャンドレ)

土田健次郎先生略歴・著作一覧
大学院での授業(土田健次郎)
あとがき(垣内景子)
執筆者紹介

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内容説明

【「はじめに」より】(抜粋)

本論文集は早稲田大学文学学術院教授である土田健次郎先生の御定年を記念して、先生の受講生たちによる、それぞれの最新の研究成果を編纂したものである。……その内容は、土田先生の長期にわたる学生に対するご指導を反映して、他分野に及ぶものとなっている。そのため編纂にあたり、中国編および日本編に分けることとした。以下、それぞれの論文について、概略を述べてみたい。
 中国編冒頭の垣内論文は、『朱子語類』における顔氏と孟子に対する評価から、朱子の人物評価の特徴的な観点を見て取ろうとしたものである。……続く宮下論文は、朱熹の言説における感謝感情に伴う負債感情について考察を試みたものである。…… 三澤論文は、王畿の易解は、王守仁のそれよりも程頤・朱熹のそれに多くを負っているのではないかという観点から、「易解上」の无妄卦・艮卦によってそれを論証しようとしたものである。……松野論文は、朝鮮古写徽州本『朱子語類』、いわゆる「楠本本」についての調査の記録である。…… 江波戸論文は、本論文集における唯一の道教関係の論考である。『悟真篇註疏』は『悟真篇』の代表的な注釈であるが、氏は同書における、「従来薛道光注として流通していた注は、実は翁葆光の作である」という戴起宗の主張について検証を行い、結論として、『註疏』翁葆光注は疏解者である戴起宗の信念を色濃く反映した編集が施されたものであり、翁葆光注本来の文章をそのままの形で保存しているとは考えがたいとしているのである。中嶋論文はいわゆる「朱陸折衷」論者の一人と位置づけられる南宋の銭時について、その「礼」に関する学説を中心として検証を行い、その結果として、彼においては、「礼」の決定権は我々の心にあるという、楊簡ほどの鮮烈な心への傾倒は見受けられず、先人の言うがごとく、陸学的観点からするならば、それは心の萎縮を意味するものである、と結んでいる。大場論文は、従来多くの学者によって説明がなされてきた王陽明の万物一体観について、その文脈と動機とを、「答顧東橋書」(「答人論学書」)を主な材料として分析を試みたものである。……阿部亘論文は、『蔵書』をはじめとする李贄(李卓吾)の史論における宋儒に関する記述を分析し、宋儒のいわゆる「道統論」に関するその見解を追っている。……
 日本編冒頭の阿部光麿論文は、伊藤仁斎の「福善禍淫」論に焦点を当てて、仁斎と中江藤樹との学説の比較を行い、そこから、両者の独自性と問題意識とに迫ろうとしたものである。…… 続く許論文は、太宰春台の『経済録』および『経済録拾遺』との比較を中心に、徂徠学における経世論の本質の再検討を試みたものである。……片岡論文は、「忘れられた思想家」安藤昌益の思想について、ハーバート・ノーマンによる昌益論の示唆を手がかりに、「東アジアにおける宗教と平和」という観点にもとづき、特に「周辺」という視角から考察したものである。……清水論文は、十八世紀前半に活動した朱子学者である室鳩巣、三宅尚斎、五井蘭洲の三人およびその周辺を対象に、彼らに共通の課題としての「文」と「道徳」を軸に、当該期朱子学者の思想傾向を明らかにしようとしたものである。……永冨論文は、幕末の儒者である佐藤一斎のことを、朱子学者、あるいは朱王折中の学者とする見解に対して、彼が陽明学者であることを、東京都立中央図書館河田文庫に所蔵される一斎の写本である、『大学欄外書』、『近思録欄外書』、『孟子欄外書』の記載によって論証したものである。蔣論文は、その題目の通り、江戸後期水戸藩の思想家である会沢正志斎の朱子像を明らかにしようとしたものである。……最後に、原論文は、幕末から明治初期にかけての経世家・陽明学者である山田方谷について、その門人による思想の継承様態を検討したものである。……
 以上の諸論文の内容は日本、中国の儒学はもちろん、道教や水戸学など、より広い分野にも及んでおり、土田先生のご指導がいかに幅広い分野に渡るものであるかを如実に示すものとなっている。土田先生のご授業の受講生は、ここに論文を提出することのできた十五名にとどまるものではなく、留学生を含むより多くの学生が、先生を師として学問に励んできた。しかしながら本論文集においては、諸般の事情によって、土田先生に博士論文の主査をしていただいた学生のみに投稿していただくこととなった。この点、御寛恕をいただければ幸いである。

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