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「李娃伝」と鞭

―唐宋文学研究余滴―

「李娃伝」と鞭

◎「李娃伝」の作者は白行簡ではない!?——独自の発想と視点から中国文学に挑み続けた軌跡!

著者 岡本不二明
ジャンル 中国古典(文学)
中国古典(文学) > 唐宋元
出版年月日 2015/10/10
ISBN 9784762965555
判型・ページ数 A5・288ページ
定価 本体8,000円+税
在庫 在庫あり
 

内容説明

【主要目次】

 序 文

 第一章 「李娃伝」と鞭―平康里・曲江池・剣門―

  第一節 「墜鞭」という言葉           第二節 詞語としての「墜鞭」

  第三節 陸游と「李娃伝」          第四節 劉克荘と「李娃伝」

 第二章 『左伝』と「李娃伝」

  第一節 寤生                第二節 大隧

  第三節 融融と洩洩             第四節 唐代伝奇「李娃伝」

  第五節 「李娃伝」の作者

 第三章 審雨堂の謎―「南柯太守伝」異聞―

  第一節 審雨堂               第二節 候雨殿

  第三節 「堂審」の話

 第四章 宋詩にみえる「枕中記」の影響について

  第一節 宋詩と「枕中記」          第二節 王安石

  第三節 黄庭堅               第四節 范成大と陸游

第五節 劉克荘

 第五章 「隠」「秀」表現の知覚言語的検討―宋代詩話を中心に―

  第一節 「秀」的表現            第二節 「隠」的表現

  第三節 簡約体と漫延体

 第六章 鄭剛中「西征道里記」訳注稿

 第七章 統辞法(SYNTAX)から見た駱賓基「一九四四年の事件」の構造

  第一節 語り手の記述の視点         第二節 記述の遠近法

第三節 視点の移動と統辞構造        第四節 受動態の効果

第五節 人物像の変貌

 随想 北京の蓮―一九八七年の夏―

  初出一覧/英文要旨

【「序文」より】(抜粋)

本書は、すでに汲古書院から刊行した『唐宋の小説と社会』『唐宋伝奇戯劇考』を承けて、その後に執 筆したいくつかの論文や、筆者の研究の出発点となった初期の論文などを合わせて一冊にまとめたものである。

 第一章「「李娃伝」と鞭―平康里・曲江池・剣門―」は、唐代伝奇小説「李娃伝」にでる「墜鞭」の語を手がかりに、それが唐宋の詩詞でどのように典故として使われたかを追跡し、「李娃伝」が晩唐から南宋後期まで、浸透し定着していった過程を分析した。

 第二章「『左伝』と「李娃伝」は、『左伝』隠公元年にみえる鄭荘公と母親武姜の対立と和解の事件が滎陽の鄭氏を主人公とした唐代伝奇小説「李娃伝」に投影しているとする説(Glen Dudbridge および小南一郎)を検討し、六朝から唐代までの賦や詩文に取り入れられた荘公母子の用例を調査した上で、それが成り立たないという結論を示した。

 第三章「審雨堂の謎―「南柯太守伝」異聞―」は、中唐伝奇小説「南柯太守伝」の晩唐から宋代までの類話を調べ、その影響の大きさを通覧した。また盧汾の審雨堂の話(妖異記)を「南柯太守伝」の原話とみなす説(李剣国や黒田真美子ほか)に対して、「審雨」という語が初見であること、時代設定のちぐはぐさ、話柄の新しさなどからみて、その可能性が少ないことを論証した。

 第四章「宋詩にみえる「枕中記」の影響について」は、唐代伝奇小説「枕中記」が、宋詩に典故としてどのように取り込まれてきたかを、王安石・黄庭堅・范成大・陸游・劉克荘という詩人たちについて調べて、分析を加えた。北宋から南宋に移行するに従い、「枕中記」の摂取や受容が、単なる語彙や修辞技巧という表面的なレベルから、次第に深化し多様化していき、詩人たちの人生観に深く関係していったことを論じた。

 第五章「隠」「秀」表現の知覚言語的検討―宋代詩話を中心に―」は、含蓄や余韻を漂わせる「隠」、目に見えるような明晰さを旨とする「秀」という二つの対照的な表現手法に関して、おもに宋代詩話を中心に取り上げて論じた。

 第六章「鄭剛中「西征道里記」訳注稿」は、南宋初期に鄭剛中が、陝西に軍事視察団の一員として往復した際の報告書の訳注である。金軍と対峙した河南、陝西の緊迫した政治状況や、荒廃した古都の様子、陝西の民俗などが克明に記されており、興味深い資料である。

 第七章「統辞法(SYNTAX)から見た駱賓基「一九四四年の事件」の構造」は、現代文学の駱賓基(一九一七ー九四年)の短編小説「一九四四年の事件」を取り上げ、語り手のおこなう記述描写の視点の移動が、ストーリーの展開と密接に関連していることを、統辞法の面から構造分析を行った。

 随想 北京の蓮―一九八七年の夏― (北京に滞在した際の随想)

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