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汲古叢書122 唐代勲官制度の研究

汲古叢書122 唐代勲官制度の研究

◎唐代社会における「勲官」の位置づけを問い直し、唐代の新たな一面を明らかにする画期的論考なる

著者 速水 大
ジャンル 東洋史(アジア)
東洋史(アジア) > 魏晋隋唐
シリーズ 汲古叢書
出版年月日 2015/03/19
ISBN 9784762960215
判型・ページ数 A5・312ページ
定価 13,200円(本体12,000円+税)
在庫 在庫あり
 

目次

【主要目次】
前 言
第一章 唐代勲官制度研究の現状と課題
第一節 勲官制度の成立過程とその画期       
第二節 官制研究から見た唐代の勲官
第三節 勲官の負担と特典             
第四節 税役制度との関係から見た勲官
第二章 唐代勲官制度の成立
第一節 唐建国期の「散官」            
第二節 唐武徳年間の「散官」と勲官
第三章 唐武徳年間の法律について
第一節 先行研究の見解              
第二節 武徳元年五月二十八日の命令
第三節 六月一日詔の内容             
第四節 武徳元年六月の官制の変化
第五節 開皇律令の適用時期
第四章 唐武徳年間の散階と属官
第一節 開皇令の開府制度             
第二節 武徳七年令の開府制度
第五章 唐太宗の高句麗親征と勲官の濫授
第一節 太宗の高句麗親征の概要          
第二節 親征従軍者に対する授勲基準の緩和
第三節 「渡遼海人」に対する勲官の賜与      
第四節 「渡遼海人」に対する授勲の慣例化
第五節 高宗朝から表面化する新たな問題      
第六節 官名の重複に対する唐の対策
  第六章 唐代古爵考
第一節 爵制と皇帝支配に関する先行研究    
第二節 唐代における百姓を対象とした「爵」の賜与
第三節 出土史料から見た古爵
  第七章 唐代勲官の昇進と降除の規定
第一節 官階としての勲官制度の特徴        
第二節 日本古代の勲位規定
第三節 唐令研究における勲官の昇進・降叙問題
第四節 勲官の昇進・降除をめぐる唐令条文の復原について
第八章 勲官の上番規定と迴授規定の関係
第一節 勲官の上番任務と勲官の増加に関する問題
第二節 勲の迴授制度
  第九章 勲官内の分類と納資額
第一節 勲官の資課をめぐる研究とその課題     
第二節 勲官の納資額
第三節 納資の増額について――開元十九年勅の解釈をめぐって
第十章 勲官の負担と報酬――唐代の律令官制における勲官の位置
第一節 勲官の基本任務とその目的――近接身分との比較から
第二節 異身分同任務の中の差異
  終 章
 あとがき/索 引

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内容説明

【前言】より(抜粋)

魏晋南北朝の動乱期、諸王朝で用いられた様々な制度は、隋に至って整理統合され、それを継いだ唐王朝で完成すると考えられている。それは官制の場合にもあてはまり、唐律令官制は魏晋以来の官制体系を基盤として成立した。…律令官制は、散官・職事官・勲官・封爵の四系統の階官に分かれる。なかでも中心となるのは散官と職事官とである。散官は文散官・武散官の別があり、官人の身分序列・俸禄特典・儀礼服飾などの基準となった。唐ではこれを本品といって重視した。そして、建前上は散官の品階と同等となるべき実際の職務が職事官である。散官は職務遂行後の考課によって昇格するため、さらなる上級職への昇進には、職事官での任務遂行が必要だった。他方、封爵と勲官はこの二官から独立した形で存在していた。封爵は、皇族や功臣に与えられ、経済的な特典として食封が付与された。勲官は兵士の軍功に対して与えられたことを始まりとし、この官を帯びることで数種の特典が与えられたと考えられている。

これまでの研究では、多くの場合、勲官は功績ある一般民に賜与される称号で、価値が低く社会への影響は少ないものと考えられてきた。そのため、勲官自体は主たる研究対象とはならず、勲官が唐代にどのような役割をはたしたのかは、ほとんど省みられることはなかった。その結果、おおよその見方は一致するものの、詳細な点になると各人各説に終始するという状況に陥っている。しかしながら、律令官制の中心ではないから、おおよそで十分であるとは言えない。勲官制度は官制のみならず身分制や府兵制、さらには税役制度などと深く関わり合い、ないがしろにはできない問題なのである。例えば、授与対象の広さに目を向けると、勲官は官人から賤民にまで与えられ、唐代官制のなかで最も広範な身分にわたって授与された官であることが明らかとなる。しかし、従来の研究では、一般民丁と勲官所得者との関係が重視され、残念ながら、官人や賤民が勲官を取得することの意義を正面から取り上げることはなかった。また、勲官の軍事的な側面に注目することで、新しい勲官像を発見することができる。これまでの研究では、勲官が一般民にまで広く与えられたことを前提に、白丁と勲官の同質性を強調する傾向があった。それは、勲官が白丁と同等の税役負担を課せられたとの見方に由来する。両者の負担が同じであるから、地位も同程度であるという見方である。しかし、この見方に従うと、勲官は白丁や品子出身の兵士達が昇進する第一の段階であり、白丁以上の身分の者が、白丁と同等の地位に昇格するという撞着をおこしている。これまでは、勲官が直接的な研究の対象でなかったために、このような単純な行き違いさえ問題とされてこなかった。唐代における勲官のとらえ方が曖昧なまま比較された当然の結果である。

本書では、従来の研究を整理検討して課題を抽出し、個々の課題を解決することを通して新たな勲官像の構築を目指している。第二章から第六章までは、唐代における勲官の成立から玄宗期までの運用を明らかにしている。第七章から第十章までは、玄宗期の規定をもとに制度について検討した。これらの検討を通して、唐代の勲官制度の実態を解明したい。

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