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グローバルヒストリーの中の辛亥革命 孫中山記念会研究叢書Ⅵ

グローバルヒストリーの中の辛亥革命

◎2011年12月10日に開催された「辛亥革命100周年国際シンポジム(神戸会議)」講演録

著者 日本孫文研究会
ジャンル 東洋史(アジア)
東洋史(アジア) > 近現代
出版年月日 2013/03/22
ISBN 9784762965029
判型・ページ数 A5・392ページ
定価 本体8,000円+税
在庫 在庫あり
 

目次

開会の辞 田﨑雅元/井戸敏三

基調講演
近代世界史における多民族国家―中国の実験―  プラセンジット・デュアラ

第1部 複数の辛亥革命
秘密結社と辛亥革命  孫 江
辛亥革命とジェンダー:革命に耐える/進化を見せる装置(試論)  坂元ひろ子
福建の辛亥革命―『台湾日日新報』を例に  許毓良
モンゴル人留日学生と辛亥革命  田中 剛
まとめとコメント 江田憲治、島田美和

第2部 辛亥革命はいかに表象されたか
革命が憲政を凌駕したのは何故か―辛亥革命前後における制度変容の分岐点  許紀霖
革命、共和国と文化―『東方雑誌』を中心に  車泰根
形象化された辛亥革命―マッチラベルから見る近代中国の社会変遷  蔣海波
まとめとコメント 高嶋 航、小野寺史郎

第3部 都市文化ヘゲモニーと辛亥革命
革命がもたらした差異―民国初期の上海における「経済学」、個人の自由と国家主権 ブライナ・グッドマン
成都における保路運動―国家の主権と人民の権利  鄭小威
税金の代理徴収より見る清末蘇州商会の「代表性」問題  邱澎生
中国キリスト教史からみた辛亥革命―梁発の「発見」と太平天国叙述の再形成  土肥 歩
まとめとコメント 陳来幸、城山智子

第4部 辛亥時期人物研究
孫文思想における理想の国家  三輪雅人
近代科学思想と孫文  武上真理子
革命に対する揺らぎ―唐璆の生涯における革命への参加と拒絶  彭 剣
まとめとコメント 石川禎浩、安井三吉

総合討議
パネリスト:プラセンジット・デュアラ、西村成雄、中村哲夫、許毓良、車泰根、許紀霖、
ブライナ・グッドマン  司会:緒形 康  通訳:城山智子、 袁広泉、 宋晴美

閉会の辞  山田辰雄

あとがきにかえて 「辛亥革命100周年記念国際シンポジウム(神戸会議)」が問いかけるもの  緒形 康

編集後記  緒形 康

付 録
シンポジウム関係者名簿/「グローバルヒストリーの中の辛亥革命」プログラム/助成団体・個人寄付者一覧
執筆者プロフィール  索 引(人名索引・事項索引)

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内容説明

【本書】より(抜粋)

 100年前の辛亥革命がアジアで初めての共和制国家を実現させたことは、世界とりわけ日本を震撼させた。

 国家や政治形態の相違に関する議論は、その後の日中戦争の過程にも深い影響を及ぼした。戦後の歴史社会学は、そうした日中の国家社会の発展形態の差異に関する認識を、全人類に普遍的な歴史的発展法則にもとづいて、もう1度考察しようとした。辛亥革命については、フランス革命・アメリカ革命やイギリス名誉革命といった欧米の市民革命との比較や、ロシア社会主義革命との比較といったテーマが追求されたのだった。

 しかし、1つの普遍的なモデルだけで世界のさまざまな社会発展の在り方を考えることはできない。辛亥革命の考察に限らず、歴史学はやがて、普遍性ではなく個別性を重視する方向へと舵をきることになる。もっとも、個別性の重視は文化の多元主義を容認する方向へとつながり、異なる文化と文化のあいだで意見が食い違う場合に、共通の解決の方途を模索することをますます困難にした。

 新しい歴史社会学は、文化の多元性を内包した新しい普遍性とは何かについて考えてゆく必要がある。本シンポジウムにて基調講演を行ったデュアラ教授によれば、20世紀の政治的文化的実験の中で最も重要なものの1つは、中国が創造した多民族国家モデルであった。それは満州国から旧ソ連にいたる、さまざまな多文化共生の社会モデルとして機能した。この新しい国家モデルの創出こそ、辛亥革命がグローバルヒストリーに残した最も重要な遺産なのであった。しかし、デュアラ教授は同時に、次のことを指摘するのも忘れなかった。それは、この多民族国家モデルは異なる文化に寛容であると同時に、異なる文化を抑圧する暴力にも転化しうるということであった。

 そうしたさまざまな矛盾をはらみながらも、この多民族国家モデルは、現代中国が香港や台湾、少数民族と対峙する際に常に参照されるような一種の普遍性を体現していることは紛れもない事実である。今後、この普遍性は中国から世界に広がるのだろうか。この現代まで継続する中国の実験は、私たちがハイブリッドな共同体やハイブリッドな社会を構成してゆく際、新しい公共を実現するための手掛かりになるのだろうか。

 すでに辛亥革命110年へのカウントダウンが始まった現在、私たちが問うべき課題は、ここにあるように思われる。

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