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三角縁神獣鏡と東アジア世界

三角縁神獣鏡と東アジア世界

日中両国の古代銅鏡データベースを作成し、三角縁神獣鏡研究に新たな地平を切り拓く大著なる!

著者 川勝 守
ジャンル 日本史
日本史 > 古代
出版年月日 2012/10/10
ISBN 9784762929847
判型・ページ数 B5・824ページ
定価 16,500円(本体15,000円+税)
在庫 在庫あり
 

内容説明

【本書 より】(抜粋) 

日本の歴史において東アジア世界が果たした役割は決定的である。1世紀の後漢光武帝の金印や3世紀の「親魏倭王」卑弥呼の時代以来、近世・近代に至る2千年近く、常に然りであった。東アジア世界はいかなる歴史的空間か。一口に言えば、中国王朝国家と周辺国家の関係する「場」である。周辺「国家」がいかに形成されたか、これを東アジアの歴史と関連させて理解する。これが本書の目的である。中国王朝国家と周辺国家との関係は、特に冊封関係と呼ばれる外交秩序があった。近代以前の東アジア世界の外交秩序を理解しようとする時に中国を中心とした冊封・朝貢関係を常に念頭に置く必要があることを記しておきたい。

本書の主題である「三角縁神獣鏡と東アジア世界」について、本書における著者の執筆構想を説明しよう。周知のごとく、三角縁神獣鏡には「景初」・「正始」という三国魏王朝の年号を刻んだ鏡が多く、それが240年(景初4年・正始元年)に倭国女王卑弥呼(いわゆる邪馬台国女王卑弥呼)が魏王朝に遣使朝貢した返礼として魏皇帝から下賜された鏡百枚に関係する鏡に他ならないとされる。問題は三角縁神獣鏡が現在まで中国大陸からは一枚も発見されておらず、そのため同鏡が中国で鋳造された鏡か日本で作造されたものかの議論は決着をみていない。さらに重要課題として、日本における三角縁神獣鏡の発掘発見情況がそのまま女王卑弥呼の所在地、すなわちいわゆる邪馬台国の所在を証明する物的資料であるとして、いわゆる邪馬台国論争に関わる超重要な話題になるからである。これに関してこれまで汗牛充棟とも言える多くの著作が世に出されている。それでも著者が一書を加えようとする企図はどこにあるか。著者は三角縁神獣鏡の問題は三角縁神獣鏡のみを対称としても答えは出てこない。三角縁神獣鏡が何処で鋳造されたかはともかく、それ以前の中国銅鏡の系譜にあることは自明であり、それ故に中国古代銅鏡、特に漢式鏡ともいうべき前漢・後漢両漢代銅鏡の研究が必須であるということは言を俟たない。

本書『三角縁神獣鏡と東アジア世界』の編別構成を説明しておきたい。第一部 日本における三角縁神獣 鏡研究史の問題点は、日本における三角縁神獣鏡研究にとって、特に重要と思われる三人の著書を三章に分けて紹介した。第二部、中国における古代銅鏡文化研究の伝統と各博物館銅鏡目録データベースは、各地博 物館の古鏡紹介を兼ねて中国銅鏡文化研究を総括した。第三部の日本における出土鏡及び博物館美術館所蔵鏡の研究では、第十三章に伊都国平原遺跡出土鏡について、平原1号墓出土銅鏡の大鏡の意味、倭国王帥升の東アジア世界での位置を述べた。……要するに、本書は中国・日本の各博物館等機関所蔵の鏡鑑の各種データベースを作成し、三角縁神獣鏡の鏡鑑研究上の位置の正確な測定を行うことに努力したのであった。

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