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中世地域社会と将軍権力

中世地域社会と将軍権力

◎史料との格闘のなかから、新たな歴史概念としての「地域社会論」・「将軍権力論」を提起した画期的論考

著者 菱沼 一憲
ジャンル 日本史
日本史 > 中世
出版年月日 2011/06/30
ISBN 9784762942105
判型・ページ数 A5・440ページ
定価 13,200円(本体12,000円+税)
在庫 在庫あり
 

目次

序 章 本書の視角――鎌倉幕府成立史の議論と課題から―― 
     幕府成立史論の骨格――私的主従制から封建国家へという視角――/
     公権授受論と川合康の地頭論/幕府論・内乱論の再構築にむけて 
    本書の概要
     大名小名社会論の提起――Ⅰ部を中心として――
     内乱史における地域社会論の模索・大名小名社会の抽出・大名小名社会から御家人制へ・
     頼朝権力による大名小名社会の改編
     幕府内・外秩序の構築と将軍権力――Ⅱ部を中心として――
     御家人制における上下秩序・幕府内上下秩序と将軍権力・
     武士狼藉停止令と統治権的支配の問題・内乱後秩序の構築における武士狼藉停止の役割・
     幕府内、外秩序と将軍権力・まとめにかえて――中世の社会・国家における上下秩序――
Ⅰ部 内乱と地域社会
第一章 地域社会の成立と内紛
   1節 曾我物語にみるプレ武家社会
   2節 鎌倉幕府の前身としての東海道東辺大名小名社会――駿河・伊豆・相模・武蔵・房総――
第二章 地域社会間抗争から政権争奪へ
   1節 木曾義仲の挙兵と東信濃・西上野地域社会〔挙兵と市原の合戦/横田河原の合戦〕

   2節 地域紛争から政権争奪へ〔保元新制体制と北陸紛争/東国の地域紛争とその結末〕
第三章 公武権力の連携と地域
   1節 在京頼朝代官源義経〔上洛以前/軍事・警察/行政/総括〕
   2節 伊勢伊賀地域をめぐる公武権力
〔伊勢伊賀平氏の乱(元暦元年の反乱・元久元年の反乱・両反乱の共通点)〕
〔伊勢の地域支配と公武権力〕
第四章 幕府の成立と地域社会の転換
   〔幕府の成立と地域社会/地域社会の転換〕
  Ⅱ部 将軍権力の生成
第五章 源頼朝「御権威」の成立と新秩序
   1節 源頼朝独裁権力への道のり〔挙兵期における土肥実平/地域棟梁連合体制における上総介広常/
      独裁権力の後継者〕
   2節 御家人制の立体的把握〔勝長寿院供養の儀/布衣供奉人と門客/随兵と昵近衆/門客門葉・
      昵近衆にみる幕府内上下秩序/鎌倉内供奉衆の抽出とその位置付け〕
      《頼朝期守護人表》・《非鎌倉内供奉衆で新恩給付された御家人の内訳》・《鎌倉内供奉衆表》
   3節 勧進にみる諸国大名と源頼朝の「御権威」
第六章 武士狼藉停止と安堵
   1節 武士狼藉停止の機能〔寿永三年二月宣旨について/鎌倉殿両御使の狼藉停止〕
   2節 武士狼藉停止から所務沙汰へ〔文治・建久年間の武士狼藉停止/理非裁判への政治的道筋〕
第七章 統治手段としての地頭制度
   1節 文治勅許と没官領地頭制度〔没官刑に関する先行研究と問題点/
     没官刑の主権と執行手順(没官刑の主権の所在について・謀人跡暫定占拠(=点定)期間の想定)〕
  2節 地頭淵源――地域軍事管理官としての地頭――〔文治勅許以前の地頭の地域性の問題/地頭の軍
事管理官的性格/文治勅許以前の「地頭職」知行例〕
第八章 地域社会と将軍権力
     寿永二年十月宣旨の位置付け/西国軍政機構と安堵体系/新支配身分の創出/平家政権と内乱/
     支配手段としての没官安堵システム
終 章 前近代における地域と権力――その俯瞰的検討――
 あとがき
  索 引(事項・人名・地名)
  附表1 《頼朝期新恩給与表》          附表2 《頼朝期供奉人表》
   附表3 《文治~建久年間武士狼藉表》    《御家人分布図》

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内容説明

本書】より

本書は、著者の一九九六年から二〇〇六年までに発表した論文に、新稿を加えて構成している。ただし、既発表の論文については大幅に加除再編して掲載したので、ほぼ全編、書き下ろしといっても過言ではない。

 題名に地域社会と権力とあるように、地域社会と権力の関係について、平安末期の内乱と、それに伴う鎌倉幕府の成立を素材として検討した。一地域社会とはいっても、各分野で様々な使われ方をするが、本書では、国家と対置されるべき、共同体、コミュニティーといった組織体を念頭においている。また将軍権力については、源頼朝が征夷大将軍=将軍に補任されて以来、武家棟梁たる者がこれに補任され、何らかの国家的機能を果たしていた、という前提から、武家政権の首班が行使すべき国家的権力という意味で使用している。よって、特に「征夷大将軍」という官職にこだわっているわけではない。

  封建制・主従制・在地領主制は、中世史研究のベースとなる概念であり、これら概念に基づいて史料が読み解かれ、封建制論・主従制論・在地領主制論が導かれてきた。本書では、これらに替わるべき歴史理論・概念として地域社会論、将軍権力論を提起したつもりである。あるいは、「はねっかえり」と眉をひそめたり、意味が分からないと無視したりする人が多いやもしれない。しかし史料に書いてあるとおりに読み解き、事

例を収集して整理してみた結果がこれであり、自分では奇をてらったつもりは全くない。大方のご批判をいただき、議論を深められれば幸いである

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