
内容説明
【凡例より】(抜粋)
「三僧記類聚」全九冊の内、第一冊から第五冊を本叢刊第九巻に、第六冊から第九冊までを第十巻に、それぞれ「三僧記類聚(一)」「三僧記類聚(二)」と題して収録した。料紙などの大きさについては、第十巻巻末所収の「解題」を参照されたい。
【解題より】(抜粋) 三僧記類聚 和学講談所旧蔵本 江戸中期写 九冊
『三僧記類聚』は、仁和寺相応院に住した禅覚僧都(一一七四~一二二〇)が紺表紙小双紙など次第類の抄出、御記など記録類の勘例の抄出、交談・口伝の聞書き類を中心に、わが国の密教界に相承されてきた教学・思想・法会・宗教儀礼・習俗・美術・建築など多岐にわたる事項を集大成したものであり、百科全書的性格をもつ。
一、『三僧記類聚』研究史の概要(一部略)
『三僧記類聚』をとりあげた一等はやい論考は、神亀法寿「三僧記類聚を読む(一)(二)」であろう(神亀一九三〇)。これは、「ある方から本書について尋ねられたが即答できなかったので」と書き出し、東京大学史料編纂所にて拝見した仁和寺蔵本の影写本にもとづき、二・三の項目をまじえて本書を紹介した極めて簡略な記事である。本書の研究史上、画期的なできごとは、和多昭夫(秀乘)による『三僧記類聚』第四の翻刻である(和多一九六九)。本書の史料的価値ならびに重要性を指摘され、かつ写本にも言及された。つぎに、『三僧記類聚』の撰者、ならびに内容記事の紹介を積極的にされたのが牧野和夫であった。牧野は仏教文学の立場から、随時、気づいた事柄について記された。ついで、本書に注目したのは、山本吉左右を代表とする仁和寺紺表紙小双紙研究会の方々であった。同研究会では、「三僧記類聚は……全て未翻刻である」といい、『三僧記類聚』『三僧記』の記事一覧を公表された。
本書の研究史上、二度目の画期は一九九九年十一月、『仁和寺研究』の発刊にともなう『三僧記類聚』影印版の掲載であった。『同誌』には、竹居明男による『三僧記類聚』諸本の紹介と選者禅覚僧都に関する詳細な伝記研究、古藤真平による本来の巻立ての考証が収録された(竹居一九九九・古藤一九九九)。特に、前者では①禅覚略年譜、②『三僧記類聚』の交談記録覚書―禅覚僧都とその周辺―、③禅覚と交談・談話した相手六十二名の列挙、の三つが圧巻である。また、後者では仁和寺蔵七冊本の袋綴の折目の書き入れに注目されて本来の巻次を推測されるとともに、諸書に引用された『三僧記類聚』を丹念に蒐集され、本書の本来の巻立てを推測・提示された点には、敬意を表したい。
筆者も、一九九〇年ころから『三僧記類聚』の研究に着手し、一九九一年には撰者は道法の資・禅覚であること、その成立を『三僧記類聚』のもっとも新しい年号にもとづき建保六年(一二一八)ころとみなした(武内一九九一)。その後も写本の蒐集につとめ、一九九九年九月には別掲の「表一、『三僧記類聚』関係写本一覧」のうち、3仁和寺御経蔵本『雑要集』一冊と12勧修寺本『三僧記』を除く諸本の所在確認を終えていた。それとともに、高野山龍光院本・同親王院本・高野山大学図書館本・東京大学史料編纂所本にもとづいて本来の巻立てと題名に付された副題を提示し、本書を論ずる場合、本来の巻立てに拠るべきことを指摘した(武内二〇〇〇)。筆者は、一九九九年四月、文科省科学研究費にもとづく綜合研究「『三僧記類聚』に関する総合的研究」を立ち上げた。その三年間にわたる研究成果を集成した報告書には、従来の『三僧記類聚』に関する諸説を訂正するとともに、新たに知りえた知見が少なからず見られる(武内代表二〇〇二)。その主要なものは、この解題にも反映することを心がけた。





