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和漢草木文化  これから出る本

――「名物学」「文字学」「本草学」の伝統を承けて

和漢草木文化

植物の名前にはどのような由来やいわれがあるのか?古今の 古典作品や文献資料をもとに、日中の伝統文化もふまえつつ詳細に解明

著者 寺井 泰明
ジャンル 中国古典(文学)
中国思想・哲学
日本古典(文学)
出版年月日 2026/04/28
ISBN 9784762937026
判型・ページ数 A5・1440ページ
定価 33,000円(本体30,000円+税)
在庫 未刊・予約受付中
 

内容説明

【序より】(抜粋)
 植物には名前がある。しかし、その名前には漢名、和名、学名、通称、別称……と、様々な種類がある。そして、それらの多様な名前が指し示す植物の実体は単純ではない。同じ植物であっても、時代や地域によって、名称に違いが生まれる。だから、相互の関係を正確に捉えることは至難の業である。「名物学」という学問は、この問題に対応しようとしてきたが、未だその成果が十分に蓄積されたとは言い難い。
 また、漢名については、用いられる漢字についての形・音・義にわたる分析も重要である。そこから名称の原初的な意味が明らかになる場合がある。つまり、「文字学(漢字学)」と「名物学」の連携も重要だということになる。
 無論、それぞれの植物の形態や生態の特徴、あるいは有用性などについての知識が前提として蓄えられていなければならない。そこには「生物学」や「本草学」、そして諸分野の伝統文化についての知識が必要となる。そうした各方面の知識が総合されてはじめて、植物の実態が伝わってくるように思われる。
 本書は、さまざまな植物の、さまざまな生活との関わりを記すことにも注力した。……随所に植物に対する人々の濃密な関わり方と、そうした文化の伝統を記すように努めたので、味わっていただければ幸いである。
 ところで、人が植物を必要とするのは、第一には食べるためであるが、医薬品(本草)としても、大きな需要があった。そこから本草学が発展してきたのであるが、この分野が植物文化の進展に大きな働きをしてきた。中国において大きな働きをしただけでなく、中国の文化が日本の文化に与えた影響と、日本の文化の独自性を考える時、本草に関する知識の伝播が大きな意味を持っていたことに気付かされる。……もう一つ、草木に関わる文化について考察する過程で、強く感じたことがある。それは、地中海の沿岸や西南アジア、あるいはインドなどの遠い地域から、中国や南海を経て日本に至る文物の流れについてである。ペルシャから正倉院に至るシルクロードのことはよく知られているが、それよりも遥かに古くから、植物においてもこうした流れがあった。
 言うまでもないが、植物の緑や花の姿は人の心を癒やしてくれる。枯れて落ちる葉や、葉の落ちた枝にも、人は心を動かされ、詩文が生まれる。国や民族を問わず、古くから残された文献には、こうした詩文が豊富である。本書では、そのごく一部を紹介した。
 本書に限らず、古い詩文を現代に紹介する著作は多いが、詩文における植物の姿は、その詩文の理解、詩情の感取にとって極めて重要である。しかし、その古名で記された植物がどんな植物であったかについて、丁寧な説明に欠ける注釈書が多いことは悲しいことである。語釈欄を見ても、「草名」とか「植物名」とあるだけで、現代の呼称すら記されていない注釈書が多く、落胆させられた経験は、多くの方が持っていらっしゃることだろう。こうした落胆を解消するには、古典の多くの植物名について、現代名に限らず、さまざまな背景を解き明かす作業が必要である。これは容易なことではないが、どうしても必要な作業でもある。本書が取り上げた植物の数は、既発表の拙著を含めてもあまりにも少ないが、僅かながらも、その渇を癒やすことができるよう願う次第である。

 

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