
目次
前編 女仙伝記集の譜系の起源と展開
第一章 序 論
第二章 女仙伝記集の源流と系譜
第三章 『新鐫仙媛紀事』の編纂者楊爾曽
第四章 『新鐫仙媛紀事』の版本の系譜及び内容の形成について
第五章 東アジア文学における九天玄女の変容──宋代の道教信仰から明代の白話小説への道程
後編 東アジアにおける女仙文化の伝播と受容
第六章 五岳真形図と日本における女仙信仰文化
第七章 江戸時代の女仙文化の受容の一例(一)――東臯心越と江戸時代の天妃信仰について
第八章 江戸時代の女仙文化の受容の一例(二)――平田篤胤と道教五岳真形図について
第九章 結論と余論
付録 平田家資料における五岳図・三皇文関係書簡日記類
あとがき/引用及び重要参考文献一覧/索 引
内容説明
【はじめに より】(抜粋)
道教文化の長い歴史において女仙という存在は独特の地位を占めてきた。母性的な権威、智慧による教導、救済を行う慈悲といった多面的な属性を有する女仙像は、男性中心的な世俗社会とは対照的に、道教における女性の宗教的主体性を顕現させる。女仙とは単なる神話的存在ではなく、中国宗教文化における性別観念の独自性を体現する文化的象徴として理解されるべきである。世界宗教の中でも、道教は女性に相対的に自由な活動空間を提供した宗教といえよう。東漢期には孫夫人のような「女師」(女性指導者)も存在し、その伝統は後世まで継承された。
東アジア文化交流史の脈絡において、女仙信仰は海を越えて日本に伝播し、そこで独自に受容され独特の変容を遂げた。東皐心越による天妃信仰の江戸への伝来、平田篤胤による五岳真形図の受容、さらには修験道・神道との習合――これらは女仙文化の越境的展開を示した重要な事例となり得よう。
本書はこのような問題意識に基づき、女仙信仰文化の源流から東アジアへの伝播に至る全体像の解明を試みるものである。




