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唐宋八大家古文の計量文体学  新刊

データで解き明かす名文家たちの文体的特徴

唐宋八大家古文の計量文体学

◎千年を超え受け継がれてきた古文の魅力を、「計量文体学」で読み解く!

著者 東 英寿
久保山 哲二
ジャンル 中国古典(文学)
中国古典(文学) > 唐宋元
出版年月日 2026/02/27
ISBN 9784762967689
判型・ページ数 A5・238ページ
定価 8,800円(本体8,000円+税)
在庫 在庫あり
 

目次

序 文 ――新たな文学研究の地平――
第Ⅰ部 計量文体学的アプローチ
第1章 本書の目的と構成
第2章 「虚詞」から迫る唐宋八大家――方法論の確立――
第3章 唐宋八大家古文コーパス収録作品
第Ⅱ部 データが映し出す唐宋八大家古文の全体像
第4章 唐宋八大家古文の計量文体学的考察――階層クラスタリングによる分析――
第5章 韓愈・柳宗元vs宋六大家(歐陽脩、蘇洵、曾鞏、王安石、蘇軾、蘇轍)――唐宋八大家古文比較考――
第6章 大規模言語モデルを用いた唐宋八大家古文の内容分析
第Ⅲ部 名文家たちの個性を探る――作者別文体分析――
第7章 歐陽脩「啓」文体の特色――歐陽脩四六文と『文選』四六文との比較――
第8章 曾鞏の散文文体の特色(修訂版)――歐陽脩散文との類似点――
第9章 王安石古文文体の実証的考察
第10章 蘇軾の尺牘文に用いられた「呵呵」について
第11章 蘇軾と蘇轍――大規模言語モデルを用いた「論」の内容比較――
附録 クボヤマ教授の統計学講義——本書の分析手法に関する講義形式の解説——
あとがき(東 英寿)
索 引

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内容説明

【「本書の目的と構成」より】(抜粋)
 本書『唐宋八大家古文の計量文体学――データで解き明かす名文家たちの文体的特徴――』は、中国文学史に大きな足跡を刻んだ唐宋八大家――韓愈、柳宗元、歐陽脩、蘇洵、曾鞏、王安石、蘇軾、蘇轍――の古文を対象に、計量文体学的アプローチを駆使して、その文体的特徴を解明することを目的としている。彼ら八大家は、単なる散文の名手にとどまらず、古文復興という文体改革の原動力となり、中国文学史の流れを大きく変えた存在である。しかし、これまで八大家の個別研究は数多く積み重ねられてきたものの、8人の文体を横断的かつ統合的に分析し、その共通点や相違点を客観的に浮かび上がらせた研究は驚くほど少なかった。本書は、まさにこの研究上の空白地帯に光を当て、計量文体学的手法を駆使して新たな知見を提示することを目指している。
 計量文体学(stylometry)とは、テキストの言語的特徴を数値化し、統計学的手法によって分析する学問である。本書は、この科学的アプローチを中国古典文学研究に適用し、従来の印象批評や主観的な考察では捉えきれなかった唐宋八大家の文体的特徴を定量的に把握し、客観的データに基づいた新たな視点を提供することを目指している。このような計量的な分析によって、人文学研究に実証的な基盤を与え、中国文学研究の可能性を広げることが本書の狙いでもある。
 第Ⅰ部「計量文体学的アプローチ」第1章「本書の目的と構成」に続く第2章「「虚詞」から迫る唐宋八大家――方法論の確立――」では、虚詞の使用が古文の文体考察において重要であることを論じた。具体的には古文における虚詞の重要性に関する従来の指摘を検証し、唐宋八大家自身もまた文章作成において虚詞の選択と配置に細心の注意を払っていたことを明らかにした。
 第Ⅱ部「データが映し出す唐宋八大家古文の全体像」では、構築したデータベースを基に、唐宋八大家の文体を俯瞰的に分析し、全体としての特徴や傾向、さらには時代による変化を描き出した。ここでは、計量文体学の手法を駆使して、従来の文学史では捉えきれなかった唐宋八大家古文の新たな全体像を浮かび上がらせる試みを展開している。
 第Ⅲ部「名文家たちの個性を探る――作者別文体分析――」では、唐宋八大家の個々の作者に焦点を当て、その文体的特徴や独自性を計量的手法によって掘り下げている。第Ⅱ部の俯瞰的アプローチとは対照的に、ここでは各作者の文体的個性という細部に分け入り、その独自の魅力を数値という新たな言語で描き出した。
 本書は千年以上の歴史を持つ中国古典文学という研究対象に、計量文体学というデータ駆動型のアプローチを適用することで、人文学研究の新たな地平を切り拓くことを目標とした。唐宋八大家という文学史上の巨匠たちの文体を、主観的・印象的な評価から解放し、虚詞の使用頻度や分布パターンという客観的指標によって捉え直すという試みは、文学研究に科学的厳密さをもたらすとともに、従来見過ごされてきた新たな文体的特徴や関係性を浮かび上がらせている。
 計量文体学、統計学、AIなどの異分野の手法を中国古典文学研究に導入することは、単に研究の「道具」を増やすことにとどまらない。それは、文学をどのように読み、理解し、評価するかという根本的な問いに新たな視点をもたらし、人文学研究の本質にも関わる挑戦と言えるかもしれない。数値と主観、計量と直感、科学と人文――これらは対立するものではなく、相補的な関係にある。本書が提示する方法論と知見が、中国文学研究のみならず、広く人文学全体の発展に寄与し、伝統的な学問と最先端の科学技術が融合する新たな学術の地平を切り拓く一助となることを確信している。

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