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中国農書・農業史研究  新刊

中国農書・農業史研究

◎農業生産力論を基礎に中国農業史上の諸問題を考察した著者長年の研究の集大成!

著者 大澤 正昭
ジャンル 東洋史(アジア)
東洋史(アジア) > 魏晋隋唐
東洋史(アジア) > 宋元
東洋史(アジア) > 明清
出版年月日 2025/03/14
ISBN 9784762967559
判型・ページ数 A5・482ページ
定価 10,450円(本体9,500円+税)
在庫 在庫あり
 

目次

まえがき
序章 農業生産力研究の課題と方法
問題意識
課題の限定と方法論
生産力論の到達段階と課題
農業経営をめぐって
第Ⅰ部 中国農書の研究
第一章 中国農書をどう読むか――その有効性と限界――
中国の農書について
農書の有効性と限界
第二章 『居家必用事類全集』所引唐・王旻撰『山居錄』研究
『山居錄』とその著作年代
『山居錄』と農書類の比較
第三章 『王禎農書』のなかの『陳旉農書』
問題の所在
『王禎』の『陳旉』引用部分
陳旉の名を出さなかった理由
『陳旉』の記述の重要性
第四章 明清時代の二つの農書――食糧問題と『農言著實』『補農書』(含『沈氏農書』)
『農言著實』『補農書』について
二つの農書を読む
第五章 『浦泖農咨』から考える
Ⅰ 地勢環境と稲作方式
「浦泖」地区の環境と稲作農業
二つの先行研究――西嶋定生と北田英人の研究
松江府東・西両郷の地域像
Ⅱ 農事暦と稲作技術
主要な農事、農業技術/主な農作業と実施時期
Ⅲ 田植方式と耘盪および面積単位「箇」
問題の所在/『浦泖』の田植方式について
第Ⅱ部 農書による農業史研究
第六章 元代までの畑作穀物栽培の技術
宋代以前のおもな農書と技術の発展
元代の農書に見る畑作穀物栽培の技術
第七章 元代までの農書における作物売買記事
農書に見る作物の売買――『氾勝之書』から『陳旉農書』まで
元代の農書との比較
第八章 太湖デルタ地域の〈農業危機〉――宋~清代の農書を題材に――
農書五種とその他の史料の基本的情報
農書執筆の動機
〈稲作の危機〉について
第Ⅲ部 桑栽培と小農経営
第九章 中国農書の「栽桑」技術素描――桑畑・樹形(仕立て法)・品種――
はじめに――課題の設定
桑栽培に関する先行研究
主要農書の問題
桑栽培法の技術的発展
第十章 唐から明初の栽桑技術――『四時纂要』と通俗農書・日用類書を中心に――
問題の所在――史料の特長
『四時纂要』『山居錄』の栽桑記事
通俗農書・日用類書の栽桑技術
第十一章 唐宋時代の「農・桑」経営――小説史料を読む――
先行研究の到達点
小説史料に登場する栽桑と小農経営
小農経営における「桑」部門の成長とその意義
あとがき
英文目次/中文目次/事項索引・研究者名索引

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内容説明

【「まえがき」より】(抜粋)
 本書はこの二〇年余りの間続けてきた中国農業史研究の成果をまとめたものである。かつての拙著『陳旉農書の研究』(農山漁村文化協会、一九九三年)および『唐宋変革期農業社会史研究』(汲古書院、一九九六年)をさらに深めようと試みてきた足跡である。
 この研究課題に対する基本的な問題意識は依然として変わりはない。ロシアのウクライナ侵略により農産物の世界的な流通構造が浮き彫りにされ、食糧安全保障が焦眉の課題になっているいま、農業問題とくに農産物の需給関係が緊迫の度合いを高めており、国際的分業体制の再検討が必須の課題となっている。こうした情勢の下、歴史的な視角から農業生産をとらえる研究の役割も見直さねばならない段階に来ている。より具体的な課題でいえば、農業生産力の研究は歴史学研究の基礎であり、基層社会における小経営の発展を把握することが歴史社会を見渡すために必要な作業であるが、さらに持続的な再生産が可能な生業としての農業を位置づけなおす必要があろう。こうした課題意識から本書で新たに取り入れた論点は以下の四点であった。一、基礎的史料である農書の研究において、南北朝期から清末まで視野を広げ、代表的農書の性格を検討すること。二、それらの農書と関連する農業史上の問題を考察すること。とくに農業と流通の関係に注目し、農業自体の史的、質的変化を探ること。三、これまでの研究において位置づけが弱かった衣料生産の問題を視野に入れ、さしあたり絹織物生産の前提となる栽桑技術を追いかけること。四、これら食と衣の生産活動をふまえ、小経営の史的発展過程の展望を切り開くこと。以上である。……

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