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汲古叢書174 福建人民革命政府の研究

――第三勢力による反蔣抗日政権と内外諸勢力――

汲古叢書174 福建人民革命政府の研究

◎第三勢力としての福建人民革命政府(福建事変)の全体像と歴史的意義を解明する!

著者 橋本 浩一
ジャンル 東洋史(アジア)
東洋史(アジア) > 近現代
シリーズ 汲古叢書
出版年月日 2022/12/28
ISBN 9784762960734
判型・ページ数 A5・368ページ
定価 10,450円(本体9,500円+税)
在庫 在庫あり
 

目次

序章
 第一節 関心の所在と第三勢力史研究  
 第二節 福建人民革命政府に関する先行研究とその問題点
 第三節 本書における課題と史料

第一章 福建人民革命政府の成立とその主張 
 はじめに               
 第一節 人民政府成立の背景と過程     
 第二節 人民政府の基本的主張とその特色  
 小結

第二章 福建人民革命政府の政権構想と組織、および民衆政策
 はじめに               
 第一節 「生産人民政権」構想とその特色   
 第二節 人民政府の組織と生産人民党  
 第三節 人民政府における民衆の組織化   
 小結

第三章 福建人民革命政府の諸政策、財政経済基盤、および思想的背景
 はじめに
 第一節 人民政府における対外政策の実際  
 第二節 人民政府の財政経済基盤
 第三節 人民政府の財政経済政策      
 第四節 土地政策としての「計口授田」
 第五節 人民政府の主張・政策における思想的背景   
 小結

第四章 福建人民革命政府と華僑
 はじめに
 第一節 一九三〇年代前半における華僑と中国・福建省
 第二節 人民政府の華僑政策とフィリピン華僑
 第三節 人民政府に対する華僑の動向    
 小結

第五章 福建人民革命政府と国内政治勢力
 はじめに
 第一節 反蔣抗日政権構想と「西南派」    
 第二節 人民政府成立後における南京中央の対応
 第三節 人民政府の政治的孤立と「西南派」  
 第四節 福建事変時における国民党内権力闘争
 小結

第六章 福建事変をめぐる日本政府の対応方針と問題意識
 はじめに
 第一節 外務省の基本方針と軍部・台湾   
 第二節 外務省および軍部の問題意識
 第三節 外務省および軍部の人民政府認識  
 小結

第七章 福建事変時における日本政府の具体的対応
 はじめに
 第一節 「居留民保護問題」における対応   
 第二節 「臨検・封鎖問題」における対応
 第三節 「抗日的論調取締問題」における対応 
 小結

終章
 第一節 本書の成果    
 第二節 一九三〇年代中国における人民政府の位置づけ、意義・限界

あとがき
主要参考文献
索引(人名・事項)

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内容説明

【序章より】(抜粋)
 一九三三年一一月二〇日、反蔣抗日と民主政治の実現を標榜し、新たな国家体制を構想・提起した 政権が福建省において誕生した。福建人民革命政府がそれであり、その成立から崩壊までの過程は、一般に福建事変として知られるところである。本書が検討の対象とするのは、この福建人民革命政府(以下、人民政府と略称)についてである。
 人民政府は、蔡廷鍇・蔣光鼐を指導者として福建に駐留し、省政を担っていた十九路軍を軍事的基盤として、陳銘枢や李済深ら国民党系の軍事的指導者、および第三党・神州国光社・国家主義派など、中国国民党と中国共産党のいずれにも属さない中間的勢力が結集することで成立した。すなわち、人民政府は、一九三〇年代前半の中国において蔣介石の指導のもと、統一政権として中央集権国家の建設を推進していた第一勢力たる国民党の南京国民政府と、それに対抗すべく存在した第二勢力としての中国共産党・紅軍による中華ソビエト共和国臨時中央政府という二大勢力の間に出現した、いわば第三勢力としての政権ということができる。
 人民政府はその成立からわずか二ヶ月たらずの一九三四年一月中旬には消滅するが、それに参画した主要な人物・党派は一九三〇年代後半から四〇年代にわたる抗日民族統一戦線形成過程や抗日戦争期、さらには戦後中国における国共内戦期から中華人民共和国の成立前後の期間を通じ、第三勢力の一員としてその時々における政治や民衆運動の展開に関わりつづけることになる。また、人民政府はその成立過程において、中国共産党との間に反蔣抗日を共通項とした一定の提携を具体化させるという、注目すべき動向をも示した。
 それゆえ、人民政府についての総合的な解明は、満洲事変以後の中国における抗日ナショナリズムの高揚と連動した一九三〇年代から四〇年代前半の中国政治史、第三勢力史、蔣介石・南京国民政府と中国共産党および第三勢力が織りなす統一戦線史、さらには戦後中国における国共内戦期や人民共和国成立期を歴史的に検討するうえで、決して看過することのできない重要な意味を有していると考えられる。本書が第三勢力としての人民政府(福建事変)を研究の対象としてとりあげる主たる理由は、そのような基本的問題意識と関心に基づいている。

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