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中国新出土文献の思想史的研究

――故事・教訓書を中心として――

中国新出土文献の思想史的研究

◎「上博楚簡」・「北大秦簡」・「北大漢簡」を検討し、「故事」「教訓書」の実態を明らかにする!

著者 草野 友子
ジャンル 中国思想・哲学
中国思想・哲学 > 先秦漢
出版年月日 2022/01/26
ISBN 9784762966934
判型・ページ数 A5・514ページ
定価 13,200円(本体12,000円+税)
在庫 在庫あり
 

目次

専門用語一覧
凡 例
はじめに
序  論

 第一章 中国新出土文献研究概述
  第一節 新出土文献の発見と中国思想史研究    
  第二節 新出土文献の研究概況
  第三節 研究目的・研究方法

 第二章 上博楚簡における誤写の可能性について
        ――『武王践阼』『鄭子家喪』を中心に――
  第一節 上博楚簡『武王践阼』における「義」と「敬」
  第二節 上博楚簡『武王践阼』における「志」と「忘」
  第三節 上博楚簡『武王践阼』における「而」と「天」

 第三章 中国古代における王の呼称
        ――上博楚簡『鄭子家喪』を中心として――
  第一節 上博楚簡『鄭子家喪』における「王」と「君王」
  第二節 上博楚簡における「君王」の呼称      
  第三節 伝世文献における「君王」の呼称

第一部 楚国故事の研究
 
 第一章 上博楚簡『成王為城濮之行』の構成とその特質
  第一節 基礎情報                   
  第二節 釈読   
  第三節 伝世文献との比較              
  第四節 上博楚簡に見える楚国故事の性質

 第二章 上博楚簡『申公臣霊王』の全体構造
  第一節 基礎情報                   
  第二節 釈読     
  第三節 全体構造の検討

 第三章 上博楚簡『邦人不称』の全体構成
        ――「不称」を手がかりとして――
  第一節 竹簡の排列・綴合・帰属          
  第二節 釈読       
  第三節 内容と構成

 第四章 上博楚簡『命』の著作意図
  第一節 基礎情報                  
  第二節 釈読       
  第三節 内容の検討

 第五章 上博楚簡『陳公治兵』の竹簡排列と復原
  第一節 基礎情報                  
  第二節 釈読および竹簡排列・内容の検討

 第六章 上博楚簡『柬大王泊旱』の思想的特質
  第一節 基礎情報
  第二節 釈読
  第三節 思想的特質
  小 結

第二部 故事類文献の研究――魯・斉・晋――

 第一章 上博楚簡『魯邦大旱』における旱魃とその思想
  第一節 基礎情報
  第二節 釈読
  第三節 思想的特質
  第四節 旱魃記事の比較 
  小 結

 第二章 上博楚簡『競建内之』『鮑叔牙与隰朋之諫』の関係とその思想
  第一節 両篇の関係
  第二節 釈読
  第三節 思想的特質
  第四節 著作意図
  小 結

 第三章 上博楚簡『姑成家父』の文献的性格
  第一節 基礎情報
  第二節 釈読
  第三節 百豫について
  第四節 文献的性格
  小 結

第三部 新出土文献から見る教訓書

 第一章 北大漢簡『周馴』の思想史的研究
         ――『詩』の引用を中心に――
  第一節 基礎情報
  第二節 『周馴』引『詩』の検討
  小 結
  
 第二章 北大秦簡『教女』の基礎的研究
  第一節 北大秦簡『教女』について  
  第二節 釈読
  第三節 『女誠』との比較   
  小 結

結  語
初出一覧
あとがき
中文目次
中文摘要
索 引
 

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内容説明

【はじめにより】(抜粋)

本研究は、一九九〇年代以降に発見され、現在、学界で最も注目されている中国新出土文献のうち、大きな特色を持つ「故事」「教訓書」類の古佚書を取り上げ、その成立と展開、思想史的意義を解明することを目的とする。これらの新資料によって、古代中国では、経書や諸子百家の文献以外にも、故事や教訓書といった形で、国や王や女性の理想を説く文献が数多く存在していたことがわかってきた。
本研究の主な対象は、上海博物館所蔵の戦国時代の楚の竹簡(上博楚簡)および北京大学所蔵の秦代・ 漢代の竹簡(北大秦簡・漢簡)であり、以下の三つの観点から研究を進める。
(1)各篇の竹簡排列や文字認定などの問題を解決し、テキストを確定する。
(2)各篇の内容を検討し、その思想的特質や著作意図などを明らかにする。
(3)伝世文献と比較して、共通点や相違点を明らかにし、その文献的性格を探る。
研究するにあたって基礎的かつ重要な作業は、テキストの確定である。上博楚簡などの戦国時代の竹簡は、秦の始皇帝が文字を統一する前の文字で書写されているため、難読箇所が多数存在し、その解読には古文字学的検討が必須となる。また、整理者の竹簡排列や綴合には問題があるものもあり、排列を確定する必要がある。そこでまず、各文献の竹簡排列や文字認定などの問題を解決し、テキストを確定する。
 本研究で取り上げる故事・教訓書は、そのほとんどが国家の運営や王権の存続などの政治思想に関わる内容である。つまり故事といっても単なる昔話ではなく、教訓書といっても単なる個人の処世術ではなく、中国の政治思想と歴史の展開に深く関わるのである。たとえば上博楚簡には、伝世文献には見られない楚国に関する故事が多数含まれている。これまで思想の中心はいわゆる「中原」であるとされてきたが、楚の地域から現地性文献が発見されたことにより、南方の国である楚の思想的水準が高かったことが明らかになってきた。また、上博楚簡の中には、斉・魯・晋など各国を舞台にした文献も多数存在し、少なくとも戦国時代中期にはこれらの文献が広い範囲で流布していたことが判明した。それらはどのような意図のもと、どのような背景で著作されたものなのか、その思想的特質はどのようなものかについて検討する。その上で、『左伝』『国語』『史記』といった史書、『説苑』『列女伝』といった歴史故事集や教訓書、諸子百家の書などと比較し、登場人物、歴史的背景、事件の経過と結果などを対照させながら考察する。さらに、近年、中国古代の女性観が垣間見える文献が発見された。北京大学が入手した秦代の簡牘の中には女性に対する教訓書が含まれており、伝世文献との比較を通して、当時の女性像を浮き彫りにできると考えられる。これらを総合的に検討し、新出土文献と伝世文献との共通点・相違点を明らかにすることにより、故事・教訓書の成立と展開を解明したい。



Historical Study of Thought in Chinese Excavated Manuscripts: with Focus on Epics and Didactic Books

 

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