ホーム > 日本近世における白話小説の受容 曲亭馬琴と『水滸傳』

日本近世における白話小説の受容 曲亭馬琴と『水滸傳』

日本近世における白話小説の受容 曲亭馬琴と『水滸傳』

◎重要刊本「石渠閣補刻本」を看破するとともに『水滸傳』版本の全体像を把握した最新成果なる!

著者 孫 琳淨
ジャンル 日本古典(文学) > 近世文学
日本古典(文学) > 近世文学 > 小説
出版年月日 2021/04/26
ISBN 9784762936579
判型・ページ数 A5・290ページ
定価 8,800円(本体8,000円+税)
在庫 在庫あり
 

目次

序(小松 謙)
序 章

第一部 曲亭馬琴と『水滸傳』諸版本

 第一章 『水滸傳』諸版本の繼承と現存
  第一節 文繁本『水滸傳』の繼承       
  第二節 現存する『水滸傳』諸版本

 第二章 『新編水滸畫傳』「校定原本」諸本の硏究
        ――「李卓吾評閲一百回」と
          石渠閣補刻本『忠義水滸傳』の關係を中心に――
  第一節 先行研究と問題點          
  第二節 『畫傳』の「開詞」と石渠閣本 
        二―一 第五回「開詞」
        二―+二 第九回「開詞」
  第三節 馬琴自筆資料から見える「評閲百回」の特
        三―一 静廬所蔵(特性Ⅰ)
        三―二 明板(特性Ⅱ)

 第三章 日本現存石渠閣補刻本と曲亭馬琴・北靜廬の關わり
  第一節 首巻闕たれば(特性Ⅲ)        
  第二節 平田氏蔵本の書き入れ

第二部 『新編水滸畫傳』における『水滸傳』諸本の利用

 第一章 『新編水滸畫傳』における「校定原本」の利用
  第一節 先行硏究と問題點
  第二節 『畫傳』と「校定原本」諸本の比較
        二―一 文字表記
        二―二 語彙
        二―三 文句
  第三節 「校定原本」諸本の位置づけ

 第二章 『新編水滸畫傳』における『通俗忠義水滸傳』の利用
                『畫傳』と通俗本・和刻本の比較
      ⑴ 原文の省略・削除
      ⑵ 内容の增補
      ⑶ 原文の再編
      ⑷ 誤譯の繼承

 第三章 馬琴手澤本『忠義水滸傳』の語釋書入について
  第一節 先行硏究                
  第二節 語釋書入の内容と出典
  第三節 書入を加えた順序            
  第四節 先立つ所藏者について

第三部 『南總里見八犬傳』における『水滸傳』の受容

 第一章 『南總里見八犬傳』における『水滸傳』の受容
        ――犬田小文吾を中心に――
  第一節 先行硏究と問題提起           
  第二節 小文吾號を得る
  第三節 武州物語
        三―一 猪退治
        三―二 出會い
        三―三 隱蔽
        三―四 軟禁・仇討ちと逃走
  第四節 越後物語 
        四―一 前半
        四―二 後半

 第二章 『南總里見八犬傳』における『水滸傳』の受容
        ――犬坂毛野を中心に――
  第一節 馬加邸出會・仇討物語 
        一―一 仇討ち
        一―二 逃走
  第二節 諏訪湖小會同物語 
        二―一 僞首の護送
        二―二 刀を試す
        二―三 犬士會同
  第三節 湯嶋天神・鈴茂森仇討物語 
        三―一 湯嶋天神
        三―二 仇討ち
        三―三 兩作品による救出劇

 第三章 『八犬傳』犬士列傳の構想に関する考察
          ――『水滸伝』の受容を通して――
  第一節 問題提起
  第二節 各犬士列伝の構成と『水滸伝』の関わり
        二―一 単一の『水滸伝』物語の利用
        二―二 固定した一人の豪傑の活躍場面の利用
  第三節 『水滸伝』物語による犬士列伝の連環
        三―一 一つ目の列伝――「信乃Ⅰ(芳流閣~荒芽山)」
        三―二 二つ目の列伝――「小文吾Ⅰ(+毛野Ⅰ)」
        三―三 三つ目の列伝――「現八・大角Ⅰ」

 附考 『八犬傳』犬士列伝構想の成立
  第一節 犬士列伝の構想            
  第二節 刀をめぐる構想
  
終 章
あとがき
初出一覽
索 引

このページのトップへ

内容説明

【序章 より】(抜粋)

中國白話小説の日本への流入は、遙か江戸初期に遡らせることができるが、唐話學者の學習敎科書として、知識人の閒に廣まったのは享保(一七一六~三五)以降とされる。その後、大きな勢いと速力を以て、近世文人を魅了するだけでなく、新しい文學ジャンル・讀本の生成と發展にも影響を及ぼしている。その中で特に注目すべきなのは、四大奇書の筆頭に數えられる『水滸傳』の、前・後期讀本に與えた衝擊である。……『水滸傳』の影響下に成立した近世小説の最高峰『南總里見八犬傳』(以下『八犬傳』と略稱)は比較對象として多數の硏究者により論じられている。しかし、從來の硏究は『八犬傳』の大まかな構成(發端―列傳―八犬具足―京師の話説―大戰)や、部分的な典據についての指摘に止まり、『水滸傳』の複雜な版本問題には殆ど觸れてこなかった。そのため、『八犬傳』全體における『水滸傳』受容の實態には、未だ不明な點が多い。これらの課題を念頭に置きながら、本書では以下の手順で考察を試みたい。
 まず、當然のことながら、『水滸傳』諸版本の現存狀況と繼承關係を確認する必要がある。その上で、馬琴が初めて『水滸傳』の版本について言及した『新編水滸畫傳』(初編前帙五卷は文化二年〔一八〇五〕九月、後帙五卷は同四年正月刊、以下『畫傳』と略稱)を對象に、彼が閲覧していた『水滸傳』諸版本の書誌問題を把握する。
 次に、『畫傳』の本文と『水滸傳』諸本の本文を比較することによって、馬琴がどのように複數の版本の『水滸傳』を用いて『畫傳』を執筆したのかを檢討し、その上で、馬琴舊藏和刻本『忠義水滸傳』(中國で刊行されている唐本『水滸傳』に訓點を施したもの、馬琴手澤本は現在昭和女子大學櫻山文庫に所藏されている)の語釋書き入れの特性について分析を行う。
 そして最後に、『八犬傳』の主要登場人物である犬士犬田小文吾と犬坂毛野の個人的活躍を抽出し、『水滸傳』と照合することによって、『八犬傳』における『水滸傳』のスト―リ―面での受容の仕方を追究するとともに、『八犬傳』犬士列傳全體の構想を浮かび上がらせる。
 馬琴は『水滸傳』をいかに受容し、自らの文學へと發展させていったのか、その營爲を本書の主軸に据えることで、讀本の確立と中國白話小説の關係、ひいては日中兩國の文學的・文化的交流の過程が示されるのはもちろんのこと、明治期以降の日本近現代文學を硏究する基盤も構築されるはずである。



Acceptance of Colloquial Novels in Early-modern Japan Kyokutei Bakin and Shuihu Zhuan

 

このページのトップへ