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渤海国と東アジア 汲古叢書166

渤海国と東アジア 汲古叢書166

◎渤海国とはどのような国なのか―東アジア周辺諸国、新羅・唐との関係から実像に迫る!

著者 古畑 徹
ジャンル 東洋史(アジア)
東洋史(アジア) > 魏晋隋唐
シリーズ 汲古叢書
出版年月日 2021/02/16
ISBN 9784762960659
判型・ページ数 A5・640ページ
定価 16,500円(本体15,000円+税)
在庫 品切れ・重版未定
 

目次

序章――なぜ「渤海国と東アジア」なのか――

第一部 渤海の建国と東アジアの国際関係

第一章 七世紀末から八世紀初にかけての新羅・唐関係
 第一節 新羅によるいわゆる朝鮮半島統一戦争の終結をめぐって
  第一項 『三国史記』文武王一五年条の再検討
  第二項 戦役終結後の羅唐関係
        ――安東都護府・熊津都護府遼東移転の再検討――

 第二節 七世紀末の羅唐関係――新羅の対唐関係を中心に――
  第一項 遣使記事の考証(六七五~七〇〇)   
  第二項 対日関係の検討と新羅の基本方針
  第三項 新羅の旧百済領統治と外交政策     
  第四項 新羅の北進策と対外関係

 第三節 八世紀初頭の羅唐関係
  第一項 遣使記事の考証(七〇一~七一一)   
  第二項 唐の東北政策と対新羅関係
  第三項 日本の遣唐使再開と新羅

第二章 渤海建国関係記事の再検討――中国側史料の基礎的研究――
 第一節 『旧唐書』渤海靺鞨伝と『五代会要』渤海との比較検討
  第一項 両史料の比較整理     
  第二項 張健章『渤海国記』の成立とその史料的性格
  第三項 『五代会要』渤海と『渤海国記』

 第二節 『新唐書』渤海伝と『旧唐書』渤海靺鞨伝・
              『五代会要』渤海との比較検討
  第一項 『新唐書』渤海伝と他二史料との比較  
  第二項 『新唐書』渤海伝新出記事の検討
  第三項 『新唐書』渤海伝建国関係記事の史料的性格

補論一 張建章墓誌と『渤海国記』に関する若干の問題
 第一節 張建章墓誌にみえる渤海使節賀守謙の幽州来到年次について

 第二節 『渤海国記』についての従来の見解に対する三つの検討

 第三節 王貽孫の『渤海国記』所蔵逸話をめぐって

第三章 いわゆる「小高句麗国」の存否問題
 第一節 日野開三郎の語る「小高句麗国」

 第二節 「小高句麗国」を指すとされる史料の再検討
  第一項 黄約瑟の反論をめぐって        
  第二項 『遼史』の高麗遣使記事
  第三項 唐代地理記事に見える高麗

 第三節 七世紀末の遼東情勢
  第一項 狄仁傑「請抜安東表」の理解をめぐって 
  第二項 初代安東都督について
  第三項 契丹余党の平定            
  第四項 七世紀末の唐の対外政策と安東問題

第二部 唐渤紛争と東アジアの国際関係

第四章 大門芸の亡命年時について――唐渤紛争に至る渤海の情勢――
 第一節 黒水州の設置年時について
       ――大門芸亡命開元一四年説の前提をめぐって――

 第二節 大門芸の亡命をめぐる唐・渤海間の外交交渉

 第三節 「勅渤海王大武藝書」第一首の作成年時と大門芸の亡命年時

 第四節 渤海の王位継承問題と唐渤紛争

第五章 日渤交渉開始期の東アジア情勢
       ――渤海対日通交開始要因の再検討――
 第一節 紛争以前の渤海・唐関係
 
 第二節 渤海・新羅の対峙関係

 第三節 七一〇・七二〇年代の新羅の対外政策
  第一項 対唐政策の推移            
  第二項 対唐外交の消極化と渤海問題の登場
  第三項 対唐政策の再転換と対日外交

第六章 唐渤紛争の展開と国際情勢
 第一節 唐渤紛争内諸事件の事実考証
    
 第二節 馬都山の戦

 第三節 唐渤紛争の展開 
         
 第四節 唐渤紛争に対する新羅の動向とその背景

第七章 張九齢作「勅渤海王大武藝書」と唐渤紛争の終結
       ――第二・三・四首の作成年時を中心に――
 第一節 第二・三・四首本文と唐渤紛争の概略

 第二節 第二・三・四首の作成年時についての諸見解

 第三節 石井正敏の第二首理解の再検討  
 
 第四節 第二首・第四首の内容理解

 第五節 第二首・第三首・第四首の作成年時の検討

補論二 張九齢作「勅渤海王大武藝書」第一首の作成年時について
       ――「大門芸の亡命年時について」補遺――
 第一節 第一首作成年時の再考証について 
 
 第二節 自説と石井説の相違点とその論点整理

 第三節 「秋冷」について         

 第四節 「張九齢墓碑銘」について

補論三 張九齢作「勅渤海王大武藝書」四首作成年時再論
 第一節 石井・古畑論争のその後と赤羽目匡由の新説

 第二節 石井正敏[付記]批判、
          特に唐代個人文集所収の勅書理解について

 第三節 赤羽目新説批判、
          特に集賢院学士の職掌と勅書に見られる官銜について

第三部 渤海国と東アジアの国際システム

第八章 渤海と唐関係の時期区分について

 第一節 濱田耕策による渤海対唐外交に時代区分

 第二節 四時期区分への疑問  
      
 第三節 「渤海国王」冊封・進爵をめぐる諸問題

第九章 渤海王大欽茂の「国王」進爵と第六次渤海使
      ――渤海使王新福による安史の乱情報の検討を中心に――

 第一節 第六次渤海使王新福の渤海出発時期
 
 第二節 王新福による安史の乱情報虚報説の検討

 第三節 王新福による安史の乱情報の情報源 

 第四節 「渤海国王」進爵と安史の乱

 第五節 第六次渤海使の使命とその背景

第一〇章 唐王朝は渤海をどのように位置づけていたのか
        ――中国「東北工程」における「冊封」の理解をめぐって――
 第一節 中国における「地方民族政権」の考え方と
           「藩属理論」における「内」「外」区分
  第一項 「民族」と「外国」        
  第二項 中国辺疆史地研究中心と「東北工程」
  第三項 李大龍『漢唐藩属体制研究』と
           黄松筠『中国古代藩属制度研究』

 第二節 日本の東アジア史研究・中華帝国構造研究からみた
                中国王朝の「内」「外」区分
  第一項 西嶋定生・堀敏一・渡辺信一郎の
              「内」「外」区分理解と世界秩序
  第二項 羈縻州の位置づけに関する補正

 第三節 唐王朝の「内」「外」区分から見た渤海の位置

あとがき
初出一覧
参考文献一覧
図表一覧
索 引

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内容説明

【序章より】

 本書は、筆者が一九八三年以降発表してきた、渤海および新羅を東アジアの枠組みのなかで研究した諸論考を集め、現時点の研究水準に合わせて改稿・増補したものである。

 筆者は、学生時代から、未解明な部分の多い渤海という国に興味を抱き、渤海とはどういう国なのかということを考えてきた。もともと未解明なのは、史料があまりに少ないからなので、これを正面から攻めたのでは史料の表面に書いてあること以上のことはわからない。そこで思い至ったのが、渤海の史料はすべて周辺の唐や日本などが残したものであり、そこから第一義的に抽出できるのは周辺諸国が渤海をどのように理解していたのかである。従来の渤海と周辺諸国、特に唐との関係史は史料の記述をトレースしただけの傾向が強かったが、こうしたことに考慮すればそれらとは一味違う歴史を描けるのではないか、そしてそれを突破口に渤海の実像に迫れるのではないか、という研究構想である。この研究構想を実現するためには、史料そのものの情報源を考えることや、どんなに煩雑であっても史料からわかる事実関係を一つ一つ丁寧に考証し可能な限り正確な史実に基づいて歴史像を描くこと、さらには渤海と周辺諸国の関係だけでなく、それに影響を与えたであろう周辺諸国間の関係についても正確な史実を求める作業をおこなって、それらと渤海をめぐる国際関係との連関性を考えること、が必要だと考えた。そうした研究構想に沿って、渤海とその周辺との国際関係を、東アジアという地域(広域)史のなかに位置づけて理解し、渤海とはどのような国かを考える手がかりを得ようとしてきた諸論考を、その究明に深くかかわる新羅と唐との国際関係についての論稿を含めて集大成したのが本書である。



A Study of the History of Bo-hai / Par-hae and the International Relations in East Asia

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