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磚画・壁画からみた 魏晋時代の河西

磚画・壁画からみた 魏晋時代の河西

◎甘粛省西部河西地域出土図像(磚画・壁画)研究の最新成果なる

著者 関尾 史郎
町田 隆吉
ジャンル 東洋史(アジア)
東洋史(アジア) > 殷周秦漢
東洋史(アジア) > 魏晋隋唐
出版年月日 2019/09/30
ISBN 9784762966354
判型・ページ数 A5・310ページ
定価 8,250円(本体7,500円+税)
在庫 在庫あり
 

目次

はしがき (關尾史郎)


第一部 総 論

河西各地の魏晋墓出土画像磚について
       ――出土資料の問題点と今後の展望―― (北村 永)

河西磚画墓とその時代――新城墓群を中心として―― (関尾史郎)

敦煌祁家湾古墓出土「五胡十六国」時代の磚画をめぐって
       ――敦煌地区における来世観とその周辺―― (町田隆吉)

魏晋時代河西の壁画墓と壁画の一面――遼陽との比較を通して―― (三﨑良章)


第二部 各 論

河西出土文物から見た朝服制度の受容と変容  
       ――魏晋・五胡期、胡漢混淆地帯における礼制伝播のあり方―― (小林 聡)

魏晋時代の河西にみられる楽器
       ――琵琶系楽器・琴瑟系楽器・洞簫系楽器を中心に―― (荻 美津夫)

画像資料に見る魏晋時代の武器――河西地域を中心として―― (内田宏美)

粛省河西地方出土の犂耕関係画像一覧(稿) (渡部 武)


引用文献目録
あとがき(町田隆吉)
執筆者紹介

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内容説明

本書は、二〇〇八~二〇一一年度日本学術振興会科学研究費補助金・基盤研究(A)(一般)プロジェクト「出土資料群のデータベース化とそれを用いた中国古代史上の基層社会に関する多面的分析」(研究代表者:関尾史郎/課題番号:二〇二四二〇一九。通称は「南北科研」)の研究成果をまとめた二冊目の論集である。プロジェクトが終了してからすでに七年、一冊目の論集『湖南出土簡牘とその社会』を刊行してからも四年が経過してしまった。本科研は、走馬楼呉簡をはじめとする湖南省の長沙市で出土した簡牘を対象とする西南班と、甘粛省西部の河西地域で出土した魏晋時代(本書のタイトルも含め、「五胡十六国」時代も包括する)の図像資料を主たる対象とする西北班に分かれて調査・研究活動を進めてきた。西北班は、中国史・内陸アジア史・日本史・西洋史など歴史学を専門とする研究者を中心に、考古学や美術史を専門とする研究者も加わった横断的な組織であったが、編者をはじめ、日頃は文字資料を主たる分析対象としている歴史研究者が過半を占めていたこともあり、このように一書にまとめるまでに予想以上に長い時間がかかってしまった。
その本書の構成であるが、総論と各論からなり、それぞれに四編の論稿を収める。総論の北村永「河西各地の魏晋墓出土画像磚について――出土資料の問題点と今後の展望――」は、本プロジェクトの発足以前から現地で調査に従事してきた経験をふまえ、磚画・壁画研究の成果と課題を指摘する。関尾「河西磚画墓とその時代――新城墓群を中心として――」は、発掘報告や先行研究に恵まれた嘉峪関市の新城古墓群の磚画墓について、その全体像の把握につとめる。町田隆吉「敦煌祁家湾古墓出土「五胡十六国」時代の磚画をめぐって――敦煌地区における来世観とその周辺――」は、従来あまり注目されてこなかった敦煌市の祁家湾古墓群出土の画像磚を取り上げ、図像の背後にある冥界観を剔抉する。最後の三﨑良章「魏晋時代河西の壁画墓と壁画の一面――遼陽との比較を通して――」は、後漢から魏晋時代にかけて同じように造営された東北の遼陽地区の壁画墓との比較を通じて河西地域の特質を論じる。
各論の小林聡「河西出土文物から見た朝服制度の受容と変容――魏晋・五胡期、胡漢混淆地帯における礼制伝播のあり方――」は、磚画や壁画に描かれた墓主像に見られる衣冠について論じたもの。墓主像はほとんどの墓で描かれているが、その衣冠は墓主の社会的な身分を知る手がかりになるが、ここではさらに広い視野で論じる。荻美津夫「魏晋時代の河西にみられる楽器――琵琶系楽器・琴瑟系楽器・洞簫系楽器を中心に――」は、やはり多くの墓で描かれている賓客を交えた宴飲場面に登場する楽器を取り上げ、その来歴について検討する。内田宏美「画像資料に見る魏晋時代の武器――河西地域を中心として――」は、各種の考古資料も援用しながら、磚画や木板画に描かれた武器の特徴について考える。それぞれ朝服・楽器・武器を取り上げたこれら三編は図像資料の分析を起点にして、時代的・地域的な比較検討を意図したものである。最後の渡部武「甘粛省河西地方出土の犂耕関係画像資料一覧(稿)」は、磚画・壁画に見える農耕具を博捜し、一点ごとに詳細な解説を附したものである。(「はしがき」より)
本研究は、河西地域出土の図像資料(磚画・壁画)を主たる対象にしている。こうした図像資料が外部から意図的に墓室内にもたらされたものである以上、それは埋葬された墓主のために造られていたはずであり、このことを念頭においたとき、こうした図像資料のみを取り上げるだけでなくそのほかの副葬品や墳墓の構造などとあわせて検討することも必要とされよう。さらには墓域全体の構成までふくめた分析を通して科研の課題として示された「基層社会」の解明にまで至れるものと考えており、その意味で本書の成果もまた、未だその途上にあるともいえよう。「はしがき」でもふれているように、本研究は歴史学を専門とする研究者及び考古学や美術史を専門とする研究者がかかわる横断的な組織で多面的に進められてきたわけであるが、こうした手法を継続しておこなうことが更なる研究の進展につながるのではないかと考えている。まだまだ試行錯誤を繰り返すことになろうが、本書に対して忌憚のないご批正をいただければ幸いである。(「あとがき」より)



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