ホーム > 中國白話文學研究

中國白話文學研究  新刊

中國白話文學研究

◎中国文学史における「近代文学」のはじまりを明らかにする!

著者 小松 謙
ジャンル 中国古典(文学)
中国古典(文学) > 唐宋元
出版年月日 2016/11/22
ISBN 9784762965777
判型・ページ数 A5・370ページ
定価 本体8,500円+税
在庫 在庫あり
 

目次

序 章

 第一部 元曲について 

第一章 元代に何が起こったのか
〔北宋の状況/南宋の状況/金の状況/モンゴル期の状況/元代の状況/明代前期・中期の状況〕

第二章 「元曲」考(一)――散曲について――
〔元代散曲の何を問題とすべきか/「曲」の二面性/散曲作家の二類型/散曲制作の場と作家の姿勢/後期の散曲作家/「元曲」とは〕

第三章 「元曲」考(二)――雑劇について――
〔元雑劇の謎/雑劇の演じ手/雑劇の成立過程/妓女と雑劇/散曲を踏まえた雑劇/演じ手が持つ演劇的効果/元雑劇を生んだもの〕

 第二部 『三国志演義』『水滸伝』と戯曲

第四章 三国志物語の原型について――演劇からの視点――
〔呂布の金冠/孫堅の赤幘/糜夫人の死/龐統の死/藝能と小説〕

第五章 梁山泊物語の成立について――『水滸伝』成立前史――
〔初期の梁山泊物語/南宋臨安の梁山泊物語/楊志と梁中書の謎/南宋における梁山泊物語/北方における梁山泊物語(1)――梁山泊物雑劇の作者――/金・元期北方における梁山泊物語(2)――梁山泊物雑劇の内容――/「太行山梁山泊」の謎/『水滸傳』原型の成立〕

第六章 『寶劍記』と『水滸傳』――林冲物語の成立について――
〔『寶劍記』と『水滸傳』/林冲の謎/『寶劍記』の謎/『寶劍記』の原作者たち/原『寶劍記』の成立年代/『寶劍記』と明代の時事/林冲物語の誕生/現行『水滸伝』の成立時期〕

 第三部 明清期における戯曲と小説

第七章 読み物の誕生――初期演劇テキストの刊行要因について――
〔二種類の「元刊雑劇」/雑劇『嬌紅記』の謎/『嬌紅記』を継ぐものたち/「白話文学」というジャンル〕

第八章 明代戯曲刊本の挿絵について
〔最初期の戯曲刊行物/明代初期の戯曲刊行物――戯曲刊本挿絵の誕生――/南京における戯曲刊行物の挿絵――読み物としての演劇テキスト――/杭州における戯曲刊行物の挿絵――高級知識人の読者への参入――/建陽における戯曲刊行物の挿絵――実用書の流れの中で/挿絵を規定するもの〕 

第九章 『麒麟閣』について――隋唐物語と演劇――
〔『麒麟閣』の謎/『麒麟閣』の矛盾/李玉作『麒麟閣』の復元と現『麒麟閣』の成立過程/『麒麟閣』と隋唐物語〕

第十章 楊家将物語と演劇の関わり
〔元明の楊家将物演劇作品/なぜ楊家将物の雑劇が存在するのか/元雑劇の内容/明宮廷の楊家将雑劇〕 

第十一章 『平妖伝』成立考
〔四十回本に関する問題――「叙」の日付の謎を巡って――/二十回本に関する問題/『平妖伝』の成立過程〕

終 章    

あとがき/索 引

このページのトップへ

内容説明

【はじめにより】(抜粋)

白話による文学作品の制作・刊行は、十三世紀から十四世紀にかけて、元代の頃から本格化する。知識階級、即ち士大夫が支配層を構成するという、当時としては極めて特殊な体制を取っていた中国において、文字を操る人々である士大夫にとっては文言が唯一の書記言語であったはずであるにもかかわらず、なぜこの時期に白話文学が出現するのか。それが本書において問おうとする第一の問題である。

白話文学といえば、まず念頭に浮かぶのは白話小説、続いて元雑劇などの戯曲である。従来の研究では、これらはそれぞれ固有のジャンルとして扱われ、小説研究と戯曲・演劇研究は別ジャンルのものと把握されがちであった。しかし、実演の場はともかく、文字の形で刊行されたテキストを読む時、当時の人々、刊行者や読者にとっても小説・戯曲・語り物は別々のジャンルと認識されていたのか。これが、本書において問おうとする第二の問題である。

また、小説と演劇は多くの場合同じ題材を取り上げる。両者の間にはいかなる関係があるのか。更に、両者がともに依拠しているはずの原型となる物語とはどのような関係にあるのか。そもそも、原型となる物語とはどのようなものだったのか。その物語は、小説や演劇の形を取ることによって変貌していくのか。これが、本書において問おうとする第三の問題である。

これらの問題を解明することにより、中国においてはどのようにして白話、つまり俗語による文学作品が出現し、展開していったのか、その要因と過程を明らかにすることができるはずである。そこからは、中国においてエリート層以外の人々がどのように文化に関与し始めたかが浮かび上がってくるであろう。そして同時にそれは、今日私たちが「読書」と呼ぶ行為、一握りのエリートではなく、一般の人々が、勉強のためでも、実用のためでもなく、ただ楽しみのために書物を読むという行為がどのようにして始まり、定着していったかを描き出すことでもあるはずである。かつて筆者は、「「庶民」の発見が近代文学の一つの定義たりうる」という問題意識のもとに、文体の面から庶民の生活を含む「現実」が描かれるに至る過程の再現を試みた。本書においては、社会的な側面からのアプローチを試みたい。本書の目的は、文学の「近代」が始まる時を浮き彫りにすることにある。

このページのトップへ