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元刊雑劇の研究(三)

―范張雞黍

元刊雑劇の研究(三)

◎元代社会の問題点を先鋭に告発する社会劇「范張雞黍」の譯注なる

著者 赤松紀彦
金 文京
小松 謙
佐藤晴彦
高橋繁樹
高橋文治
竹内 誠
土屋育子
松浦 恆雄
筍 春生
ジャンル 中国古典(文学)
中国古典(文学) > 唐宋元
出版年月日 2014/09/09
ISBN 9784762965258
判型・ページ数 A4・340ページ
定価 11,000円(本体10,000円+税)
在庫 在庫あり
 

目次

解 説  「范張雞黍」解説 
元刊雑劇全訳校注
〔凡 例・新刊死生交范張雞黍〕
語句索引
校勘表

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内容説明

【本書より】(抜粋)

本書は、『元刊雑劇の研究』の三冊目に当たる。中国、更にいえば印刷物という観点に立てば、世界でも最古の戯曲刊本であり、成立からそれほど隔たらない時期に刊行されたテキストである以上、元刊雑劇研究についてはもとより、言語研究・出版史研究、ひいては元代史研究においてもかけがえのない価値を持つ資料である。・・・・・二〇〇七年に前述の『元刊雑劇の研究―三奪槊・氣英布・西蜀夢・單刀會』を、続いて二〇一一年に『元刊雑劇の研究―貶夜郎・介子推』を、いずれも汲古書院より刊行してきた。これらは、一見すると単なる解説を付した訳注のように見えるが、実際には単なる語釈の注ではなく、訳注の形を取った研究というべきものである。これは作品自体に密着し、その本文(表記も含める)と内容を徹底的に論ずるという作業を経ることによって、はじめてその作品の言語・内容、社会との関わりなどを明らかにすることができるという考えに基づくものである。こうした見地に立って、注釈に当たっては、疑問の余地を残さない透明性を目指すべく心がけた。元雑劇注釈においては、わからないところには注をつけないという結果になりがちであるが、ここでは結論を下しがたい場合には複数の可能性を示した上で、仮の訳を付すという形を取った。また関連文献をあげる際には、しばしば解釈が示されないためにどのような関連があるのかを理解できないことがあることに鑑み、すべて訳文を付すことによって、どのような理解のもとに関連性があると見なすのかを明らかにすることにした。その上で、本文の解釈に関わるもののみではなく、白話の漢字表記などの語学的問題や、内容と当時の社会の関わりなどの歴史学的問題に及ぶ考察を加えることにより、対象となった作品の内容だけではなく、その作品が歴史的にどのような意味を持ち、その本文が中国語の歴史の中でどのような位置にあるかを明らかにするとともに、作品を通して当時の社会の実相を探求することをも試みた。(解説より)

「范張雞黍」は、『後漢書』列伝七十一「獨行列伝」に収められた范式の伝が本事である。「范張雞黍」は、これまでの手法とちがい、民間伝説とは異なり史書の内容に基づき製作された点で、文学史上重要な意味を持つと共に、劇中で表現される社会状況に対する容赦のない体制批判は、史実を忠実に踏まえるものであり、その内容の多くが『元典章』に見える当時の公文書、更には故事とも符合することから元代社会の実態を明らかにする第一級資料と考えられる。

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