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民間漁業協定と日中関係

民間漁業協定と日中関係

「日中民間漁業協定」成立過程を日本の外交文書、中国の檔案館文書等から考察し、国交回復以前の日中関係の実像に迫る!

著者 陳 激
ジャンル 東洋史(アジア)
東洋史(アジア) > 近現代
出版年月日 2014/11/28
ISBN 9784762965272
判型・ページ数 A5・232ページ
定価 6,600円(本体6,000円+税)
在庫 在庫あり
 

目次

【内容目次】
はしがき
序〔日中漁業問題と日中民間漁業協定/民間漁業協定をめぐる研究史/本書の課題と方法〕
第一章 戦前日本の遠洋漁業と以西漁業
 1 遠洋漁業の発達〔漁業技術の革新/漁場の拡大〕
 2 以西漁業の形成・発展〔以西漁業その一:トロール漁業/以西漁業その二:機船底曳網漁業〕
 3 公海自由・3海里領海と日本〔公海自由の変遷/日本の公海自由原則/領海3海里と日本〕
第二章 占領期の以西漁業と講和問題
 1 マッカーサーラインと以西漁場〔マッカーサーラインの変遷/アメリカの政策転換とGHQ〕
 2 以西漁船の復興〔以西漁船の建造と許可/減船整理の実施〕
 3 以西漁業の企業と労働者〔企業の特徴/労働者の賃金と雇用形態〕
 4 講和と日本の漁業〔1950年末までのアメリカの方針/ダレス・吉田書簡と講和条約第九条/日米加
漁業条約の調印〕
 第三章 民間交渉と漁業協定
  1 中国による拿捕・抑留事件の発生〔拿捕・抑留の実態/拿捕・抑留による被害〕
  2 民間交渉への道〔話し合いによる問題解決の提起/日中漁業懇談会の活動とその影響/中国による民
間会談の再提起/日中漁業協議会の設立/交渉における政府の方針/拿捕原因の整理〕
  3 交渉の焦点―公海自由〔交渉の概況/第一段階:交渉準備段階(1月13日~1月22日)/第二段階:
私的会談段階:(1月31日~2月23日)/第三段階:局面打開段階(2月26日~3月2日)/第四段
階:最終調整段階(3月5日~4月11日)/協定内容〕
  4 協定の実施とその後〔協定の宣伝と国内措置/1956年の協定延長/1957年の協定延長/協定の中断
   とその後〕
 結〔日中漁業問題と民間漁業協定の形成過程/日中民間漁業協定の意義〕
  史料・文献目録/日中漁業関係関連年表/日中民間漁業協定全文/あとがき/人名索引

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内容説明

【本書より】(抜粋)

日本と中国は、経済、文化など多くの分野において、切っても切れない相互依存関係にあることは、いうまでもない。両経済大国の関係の良否は、当事国のみならず、アジア太平洋地域及び世界の平和と発展にも重大な影響を及ぼしうる。しかしながら、2010年の中国漁船拿捕事件以来、尖閣諸島の周辺海域をはじめとする東シナ海は、緊張感が日増しに高まっており、日中関係に大きな影を落としている。東シナ海を一日も早く平和な海に戻し、日中関係を再び正常な発展への軌道に乗せたい、と多くの人々が願っている。

しかし、こんな時こそ時代をさかのぼって、かつて中国との間に繰り返された漁業紛争とその要因を検証し、今日の日中関係に与えた影響を探るのがより大切な作業ではなかろうかと考える。

本書では、1955年に日中両国の民間漁業団体によって締結された日中民間漁業協定に着眼し、国交回復以前の日中関係を論じる。その目的は、半世紀以上前の日中漁業問題及び日中民間漁業交渉の実態を明らかにすることにより、「漁業をめぐる問題」の根底に横たわる今日的な課題の歴史的な背景を浮き彫りにし、日中共通認識の形成に寄与することである。

本書の第一章は、戦前期日本における遠洋漁業及び以西漁業の形成・発展の歴史を整理するものになっている。戦前の日中漁業問題及び、日本の遠洋漁業は野放図な漁場拡大政策によって発展してきたことと、その政策を無規制の公海自由原則が支えていたことについて、従来の研究よりも詳しく分析したつもりである。第二章は、占領期における以西漁業の実態を分析するものである。GHQと日本政府の漁業政策、以西漁業の企業経営と労使関係の特質、講和を進める中での漁業問題の扱いを検討し、日本漁船がマッカーサーラインを意識的に超えて操業するようになる背景を考察するものである。第三章は、中国側による漁船拿捕・船員抑留の実態と、日中民間漁業協定締結までのプロセスを分析するものである。

本書を通して、日本と中国が「戦略的互恵関係」の原点に立ち戻る意義を読者と共有できることを願い、日中関係の改善にも資すれば幸いである。

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