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森春濤の基礎的研究

森春濤の基礎的研究

◎幕末から明治にかけての漢詩人―森春濤の総合研究なる

著者 日野 俊彦
ジャンル 中国古典(文学) > 日本漢文学
出版年月日 2013/02/26
ISBN 9784762965043
判型・ページ数 A5・390ページ
定価 本体10,000円+税
在庫 在庫あり
 

目次

口 絵
序 文  揖斐 高
第一章 森春濤を取り巻く人々――親族・師のことなど――
春濤の両親、兄弟について/春濤の描いた妻の肖像――春濤の悼亡詩を通じて――/鷲津益斎について
第二章 森春濤「十一月十六日挙児」詩考
二つの「洗児」詩/森春濤の「洗児」詩/森春濤の清詩受容についての一管見
第三章 幕末期における森春濤
幕末期における春濤の位置――岡本黄石の漢詩との比較を通じて――/『銅椀龍唫』について
第四章 春濤と丹羽花南――明治初年の春濤――
幕末より明治初年にかけての春濤の経歴――『藩士名寄』を通じて――/
岐阜から東京へ――花南との再会、別れ――
第五章 春濤と槐南――『新文詩』の刊行を通じて――
幕末における漢詩集出版の状況について/『飛山詩録』について/『新文詩』刊行に至るまで/
『新文詩』の刊行――『新文詩』第一集を例として――/
若き日の森槐南――『槐南集』未収の詩文を通じて――
第六章 春濤と清詩
江戸より明治十年代に刊行された清詩の詞華集について/『清廿四家詩』刊行の経緯について/
『清三家絶句』刊行の経緯について/
春濤と清詩との関わり――『清三家絶句』所収の張問陶詩を通じて――/
春濤と清人との出会い――金邠と葉松石――
第七章 春濤と艶詩をめぐって
学海と春濤との交流について/「詩魔自詠」引について/成島柳北「偽情痴」と艶詩の流行/
「新潟竹枝序」について/「春濤詩鈔序」について/
おわりに――詞華集に選ばれた春濤の漢詩について――
第八章 野口寧斎の描いた森春濤像――野口寧斎の漢詩集『出門小草』の上梓をめぐって――
『出門小草』出版に至るまで/『出門小草』の構成について/「恭輓春濤森先生」詩について
跋 文
英語・中国語要旨/索 引(人名・書名)
附 録 春濤略年譜及び『春濤詩鈔』詩題一覧・『新暦謡』翻刻/森槐南略年譜及び『槐南集』詩題一覧
     明治漢詩人伝記データ(稿)

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内容説明

【序文(揖斐 高 先生)】より

日本文学研究の世界においては、日本漢詩文についての研究は近年広がりと深まりを見せつつある。そもそも日本文学の出発と展開が漢文学との交渉なしにはあり得なかったという否定しようのない事実を素直に踏まえれば、漢文学のもっとも直接的な影響を受けて成立した日本漢詩文を研究することは、日本文学それ自身の研究として必須の作業であることはいうまでもないからである。そしてまた、日本漢詩文には、和文体の日本文学にはなかなか現れない別種の日本文学の特性と魅力が存在することが、改めて評価されるようになってきたからである。けれども、明治期以後の日本漢詩文作品の研究においては、新たな問題が研究上の隘路として浮上してくる。近代日本文学は、小説にしろ詩にしろ、それまでの漢文学に代わる西洋文学の圧倒的な影響下に形成されることになった。そのような近代日本文学の展開において、近代の日本漢詩文はどのような文学的な意義を主張できるのかという問題である。日本漢詩文に近代はあり得たのか、あり得たとしたならば、それはどのような近代だったのであろうか。あるいは明治期の日本漢詩文作品が示し得たのは、消滅直前の花火が見せる淋しい輝きに過ぎなかったのではないかという、往々にして発せられる意地悪な質問に対して、腰の引けない答えを呈示することはできるのであろうか。もちろん、消滅直前の花火の輝きの美を解析することも、文学研究にとっては意味のあることであるが…。明治期日本漢詩文の研究には一筋縄では行かない困難さが潜んである。

日野俊彦君は、江戸と明治という二世を一身に生き、二世にわたる漢詩壇を代表する漢詩人として活躍した森春濤を研究対象にしている。日野君はこのたびその研究成果をまとめた『森春濤の基礎的研究』と題する学位論文を成蹊大学大学院文学研究科に提出し、博士号を取得した。本書はその学位論文を公刊するものである。

森春濤は明治期に活躍した漢詩人としては比較的研究の多い人物である。しかし、従来の森春濤研究が一部の見易い資料に限られた、不徹底な段階に止まるものであったことは否めない。日野君は本書において、本格的な伝記研究や作品論に必要な重要資料を整理・紹介し、森春濤研究のための基礎固めをおこなった。

日野君の今後の研究の出発点はここに確保された。漢詩人森春濤はいかなる意味において近代日本の詩人であり得たのか。森春濤の漢詩作品は日本近代詩の表現に何を新たにもたらしたのか。従来の研究の枠に収まることのない、着実にして大胆な研究が、これからの日野君に期待される。

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