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白居易文学論研究

―伝統の継承と革新―

白居易文学論研究

白居易の文学論・美学理論に迫る、初の本格的論集なる

著者 秋谷 幸治
ジャンル 中国古典(文学)
中国古典(文学) > 唐宋元
出版年月日 2012/07/18
ISBN 9784762929830
判型・ページ数 A5・232ページ
定価 8,250円(本体7,500円+税)
在庫 在庫あり
 

目次

序 門脇廣文(大東文化大学文学部中国学科教授)

序 章 研究の動機と目的

第一章 日本と中国の白居易文学論研究の概要とその問題点
 第一節 日本における白居易文学論研究
  白居易文学論研究の問題について
   ①鈴木虎雄「白楽天の詩説」 
   ②興膳宏「白居易の文学観―『元九に与える書』を中心に」
   ③静永健「詩集四分類の構想」「白居易『新楽府』の創作態度」
  白居易文学論研究の問題の再検討
   ①言説間における主張の矛盾について 
   ②言説の通りに実作を作っていないことについて
 第二節 中国における白居易文学論研究
  民国時代~八十年代後半の白居易文学論研究の概略〔蹇氏の論考のまとめ〕
   ①民国時代(一九一二年~一九四九年) 
   ②中華人民共和国成立(一九四九年)~文革(一九六六年)(「成就」に着目した研究) 
   ③文革後(一九七七年)~八十年代前半(「局限」に着目した研究)
   ④八十年代後半(「成就」と「局限」を公平に評価した研究)
  民国時代から八十年代後半に至る白居易文学論研究の問題点について
  九十年代から現在に至る白居易文学論研究について(今後の展望と課題)

第二章 伝統の継承にまつわる白居易の文学論
 第一節 「采詩の官」にまつわる言説について
  「采詩の官」について―その起源と考え方について―
   ①漢代に見られる「采詩の官」の言説について ②唐代に見られる「采詩の官」の言説について
  「採詩」の策に見られる考え方―青年期の「采詩の官」について―
  「洛詩に序す」で述べられる考え方―晩年期の「采詩の官」について―
 第二節 律賦や科挙の詩文にまつわる言説について
  唐代の科挙と律賦
  唐代の律賦をめぐる先行研究
  中唐の士大夫の律賦や科挙の詩文に関する言説
   ①律賦や科挙の詩文そのものを否定する立場 
   ②律賦や科挙の詩文を肯定する立場

第三章 伝統の革新にまつわる白居易の文学論
 第一節 「賦の賦」の限韻「賦者古詩之流」について
  「賦の賦」概観
  『詩経』と賦の関係について言及した賦論
   ①『詩経』の継承を論じたもの
   ②『詩経』からの発展を論じたもの
第二節 「賦の賦」で述べられる賦観について
  「賦の賦」の分析
   ①賦の淵源と勅撰の賦作品(伝統からの発展と継承)
   ②漢魏晋南北朝時代の名作を凌ぐ美しさ(勅撰の賦作品に対する評価①)
   ③『詩経』『楚辞』を越える美しさ(勅撰の賦作品に対する評価②)
  同時代の古文家にも見られる共通した考え方

第四章 左遷前と左遷後の詩観の変化
 第一節 白居易の詩観の二つの変化―江州左遷期の詩作の変化をもたらしたもの―
  先行研究の指摘
  第一の変化について―「逸脱」から「踏襲」へ―
  第二の変化について―「詩を広く社会へ向ける」姿勢から「内、個人へ向ける」姿勢へ―

終 章 まとめとこれからの課題

付録 白居易の文学論にまつわる研究文献目録

あとがき・索引

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内容説明

本書は、中唐の詩人白居易の前半生の文学論を、「詩の序文」・「手紙文」・「科挙の課題文(対策文・律賦)」 における言説を取り上げ、総合的に検討を加えた初の本格的な白居易文学論研究である。

 

【序章 研究の動機と目的】より(抜粋)

白居易は「新楽府」「長恨歌」をはじめとする名篇を多く世に残した、中唐の傑出した詩人である。白居易が制作した詩文は、本国中国のみならず、日本・朝鮮・ベトナムにも流伝し、多くの愛好者を生んだ。また白居易は優れた詩文を制作しただけではなく文学論も多くあらわしており、有名なものに科挙(制挙)の際に書いた「採詩」の策、「文章を議す」の策、左拾遺の時に書いた「新楽府の序」、江州司馬左遷直後に書いた「元九に与ふるの書」などがある。名作を多く作った李白や王維はほとんど文学論をあらわさず、『詩式』を書いた皎然は実作では必ずしも名が振るわなかったことを考えると、実作と理論の両面に秀でた白居易は唐代において特異な存在であったと言える。

白居易が生きた中唐時代、ことに青年期と壮年期(三十五歳~四十八歳)に当たる元和年間は、いわゆる変革期であった。安史の乱後、国家は衰退しつつあり、いかに国家を立て直すのかが時の急務であったのである。当時の新興士大夫たちは、「危機と情熱の時代」に具体的にいかなる問題意識を持って詩文を制作しようとしていたのだろうか。実はそれをうかがい知るための史料となるべき唐代の文学論は、まとまった著作として残っているものは少なく、書簡文や詩の序文という形で断片的に現存するものが多い。白居易の文学論もその例にもれないが、白居易が書いた文学論は多く残っており、それぞれの文学論に書かれている主張を総合すると体系的な文学思想を浮き彫りにすることができる。そしてこれらは当時の士大夫の考え方を捉える上で貴重な史料であると言える。

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