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汲古叢書99 明清中国の経済構造

汲古叢書99 明清中国の経済構造

明清時代はもとより、中国史全般・日本史・東アジア史までを視野に入れた実証研究なる

著者 足立 啓二
ジャンル 東洋史(アジア)
東洋史(アジア) > 明清
シリーズ 汲古叢書
出版年月日 2012/02/08
ISBN 9784762925986
判型・ページ数 A5・690ページ
定価 16,500円(本体15,000円+税)
在庫 品切れ・重版未定
 

目次

序 論
一 封建社会論から専制国家論に――現代史研究から前近代史へ(第一部)
二 小経営と小商品生産の発展(第二部)     
三 財政と貨幣の特質(第三部)
四 専制国家的社会における経営と流通(第四部)
五 再び封建社会と専制国家――前近代史研究から近現代史へ(終 章)
第一部 中国封建制論の克服
第一章 中国前近代史研究と封建制     
第二章 中国封建制論の批判的検討 
第三章 封建制と中国の専制国家
附編一 中国近代史研究の発展と前近代史  
附編二 書評:重田徳著『清代社会経済史研究』
第二部 小経営農業の発展
第一章 宋代両浙における水稲作の生産力水準
    陳旉『農書』における水稲作技術の地域類型
    「両浙農業」の地域類型〔耕地の存在形態・品種・肥培管理過程・その他〕
第二章 明清時代長江下流の水稲作発展――耕地と品種を中心として――
    耕地と品種をめぐって/耕地条件の改善/品種の改善/水稲作技術体系の転換
第三章 明末清初の一農業経営――『沈氏農書』の再評価――
    『沈氏農書』の構成/集約的小農法の発展段階/商業的農業の発展と剰余の追求〔商業的農業・労働生
    産性と剰余の追求・沈氏の経営収支〕/沈氏経営プランの歴史的位置
第四章 大豆粕流通と清代の商業的農業
    上農の形成と金肥・購入飼料/清代中期に至る大豆粕の流通〔大豆粕の利用・流通の発展・大豆粕流通
    と江南農業〕/清代後期における流通の変化〔流通の変動と衰退・変動の背景〕
第五章 清代華北の農業経営と社会構造
    華北民農書の経営像〔『農言著実』の経営像・『西石梁農圃便覧』の経営像・太和堂李家の経営〕/
    華北農法の到達段階/作付方式と農産物商品化の地域類型/大規模経営の社会的位置とその解体傾向
第六章 清代蘇州府下における地主的土地所有の展開
    清末の土地所有/清初の土地所有/結びにかえて
第七章 清~民国期における農業経営の発展――長江下流域の場合――
    一九三〇年代における農村の階層構成/清代における江南農村の階層構成/上向発展の基礎
附編一 明清時代の商品生産と地主制研究をめぐって
附編二 書評:渡部忠世・桜井由躬雄編 『中国江南の稲作文化――その学際的研究――』
第三部 財政と貨幣の特質
第一章 専制国家と財政・貨幣
    専制国家における財政/国家的物流/財政と貨幣〔貨幣史認識の系譜・専制国家の内部貨幣としての銭・
    銀の内部貨幣への転化〕/中国前近代財政史の諸段階をめぐって
第二章 初期銀財政の歳出入構造
    『明史』の金花銀記事/戸部・内庫・太倉/明初期銀歳出入の規模と構成
第三章 明代中期における京師の銭法
    京師における私鋳銭の盛行/国家的支払いとの分離/銭信任の原理/私鋳銭登場の背景
第四章 明清時代における銭経済の発展
    明代中期における銭法の変質/銭行使の地域性/銀と銭/銭経済の発達
第五章 清代前期における国家と銭
    銭法不通/銭需要と銭供給〔順治初~康煕九年・康煕九年~康煕末・雍正期・乾隆期〕/国家的支払い
    と銭/銭の再生
第六章 中国からみた日本貨幣史の二・三の問題
    専制国家と銭/日本版専制国家と皇朝十二銭/中国の内部貨幣に取り込まれた中世日本/通貨的自立と
    しての鎖国
第四部 流通と経営の構造
第一章 明清社会の経済構造
    単系発展論から多系的・構造的発展論へ/明清社会における経営の構造/明清社会における市場の構造
    /人類社会発展史における中国経済構造
第二章 明末の流通構造――『杜騙新書』の世界――
    序言/牙人/客商/商人間関係/結語――非定形的流通構造
第三章 阿寄と西門慶――明清小説にみる商業の自由と分散――  小説史料/阿寄/西門慶
第四章 牙行経営の構造
    明清社会における経営/巴県経済における牙行経営/牙行経営と管行経営/不安定経営の要因
終 章 一八~一九世紀日中社会編成の構造比較
    日本封建社会成熟化の基礎過程/清代巴県の行政体制〔県衙の中核機構・書吏・差役の構成・職役戸〕/
    行政編成の社会的基盤〔メンバーシップの不確定・「公共業務」の存在形態〕/職役戸と書差
あとがき/英文目次/中文提要/索引

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内容説明

本書は、明清史研究を牽引する著者による、実証を中心とした論文集である。構成は第一部から第四部に分かれ、終章として第二回中国史学国際会議(二〇〇四年、北京)で報告した「清代後期地方行政対社会控制―与日本之比較―」を大幅に増補して収録する。本書をまとめるにあたり、著者は次のように述べている。

編集に際しては、すでに公にした論稿であること、読んでいただき、幸いに研究の素材にしていただける場合、部分的に論旨の改変を行なうことは不適切と考え、変更は明確な誤脱の訂正、引用論著の書誌情報の明示といった体例の統一などを中心に、最小限の補正にとどめた。・・・・・・こうしたことから生ずる制約をできる限り回避するため、この序論を設け、各章の内容についての総括等を示すことにした。本書に収録した論文は、明示的な反論を受けることなく通説の変更に帰結したもの、各時代・地域にかかわって大きな論争の起点となったもの、逆にいまだ一般的な認識を得ていないものなど様々である。こうした状況に鑑み、既発表の論文に修正・補綴を加える代わりに、筆者の認識の展開過程、それに伴って現時点で改めるべきと考える点、時々にいただいた批判点に関する回答の試み、既発表論文についてさしあたり補説すべき点、論文としては発表していないが史料的根拠をもって展望している点などを、各部に照応する形でまとめ、全体の構想を示す手立てとした。各論文への補記とせず、できるだけ研究全体の展開を説明し、現代史から始めた研究の見直しを現代へと返したいと考える。具体的には、本書各部に対応して、この序論を章立てした。序論各節の冒頭に、対応する各部に収めた論文とその初出を一覧表示した。各部は論文を章として、学界展望・書評等を附編として構成した。(序論より)

本書は、既発表論文を収めるとともに、研究の構想・展開を提示した明清史研究の基本図書であり、東アジア史を専攻する全ての研究者必備の一冊である。

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