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いくさと物語の中世 第二集  新刊

いくさと物語の中世 第二集

◎中世という戦乱の時代、いくさと物語と人はどうかかわり、後世に何をもたらしたのか。――総勢25名による第二論集刊行!!

著者 倉員 正江
鈴木 彰
源 健一郎
ジャンル 日本古典(文学) > 中世文学
日本古典(文学) > 中世文学 > 軍記物語
日本古典(文学) > 近世文学
日本史
出版年月日 2025/08/15
ISBN 9784762937002
判型・ページ数 A5・526ページ
定価 14,300円(本体13,000円+税)
在庫 在庫あり
 

目次

刊行の趣旨:倉員正江・鈴木 彰・源健一郎
第一章 戦争・いくさ物語と絵画表象
布施と捨身――『平家物語』灌頂巻における建礼門院の宗教的役割――(山本 聡美)
『男衾三郎絵巻』と吉見義世――観世音菩薩による救済と修羅道のはざまで――(横田 隆志)
絵入り版本が語る〈歴史〉――源平合戦の絵入り版本を中心に――(出口 久徳)
正保三年版『曽我物語』挿絵考――太刀の表象に注目して――(宮腰 直人)
遠山記念館蔵「源平武者絵」の存在が示すこと(龍澤 彩)
第二章 戦争と文化交流
武者のをりふし――西行和歌の「いくさ」語り――(平田 英夫)
『太平記』巻四「俊明極参内事」の諸相(森田 貴之)
『蔗軒日録』と『碧山日録』が記録する乱世
――五山僧の学問事情の一齣として――(田中 尚子)
「北川次郎兵衛筆」の成立とその背景(堀 智博)
キリシタン塚からヌエバ・エスパーニャまで
――『老媼茶話』「薬師堂の人魂」をめぐる考察――(南郷 晃子)
第三章 戦争に連なる論理
『太平記秘伝理尽鈔』における人倫・国家観――「報国ノ忠」をめぐって――(山本 晋平)
いくさ語りと禅僧
――『蔭涼軒日録』『碧山日録』から『明徳記』の問題に及ぶ――(源 健一郎)
モノが語る戦乱――刀剣説話「荒波」と記憶の行方――(ピエール カルロ・トンマージ)
大島忠泰『高麗渡』にみるいくさの論理
――秀吉と「高麗」をめぐる「因縁」と八幡大菩薩――(鈴木 彰)
〔コラム〕「女子と云はるる我等が面伏せにあらずや」――楠正行母顕彰――(榊原 千鶴)
第四章 中世のいくさ物語と近世・近代の生活文化
堀田正信著『忠義士抜書』に見る菊池氏三代像
――『九州軍記』『太平記大全』との関係を中心に――(倉員 正江)
島原・天草一揆の記憶――『天草軍談』の特徴――(菊池 庸介)
芸能における治承四年の高倉宮以仁王・源頼政の挙兵と宇治川合戦
    ――能〈頼政〉と浄瑠璃〈源三位頼政〉――(岩城賢太郎)
曲亭馬琴と『将軍家譜』(三宅 宏幸)
自己表現としての歴史詠へ
――明治三十年代、「新派」歌人たちの試行をたどる――(松澤 俊二)
第五章 いくさ物語を支える時間と空間
『将門記』試論――「大害」に至る諸段階の「少過」をめぐって――(久保 勇)
宇治川合戦譚の形成と『平家物語』(川合 康)
〈武〉の表現史における『平家物語』の源義経
――戦う貴人の創出が意味するもの――(佐倉 由泰)
『太平記』が語る戦場(和田 琢磨)
明治中期の石山合戦譚――四民平等の時代のいくさ語りについて――(塩谷 菊美)
あとがき/執筆者一覧/索引(書名・資料名、人名)/英文題目

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内容説明

【「刊行の趣旨」より】(抜粋)
 二〇一五年八月、多くの方々のご協力を得て、私たちは『いくさと物語の中世』(汲古書院。以下、前論集)を刊行することができた。大小さまざまな戦乱とともに進んでいった中世社会においては、創作・改作・享受など、中世文学にかかわるあらゆる行為や現象は、いくさや〈武〉にかかわる価値観とどこかで結びついていたに違いない。したがって、いくさや〈武〉を描く作品だけではなく、あらゆる中世の文学をこうした観点から読み直す必要がある。こうした問題意識を執筆者間で共有しつつ、前論集でめざしたのは、十三~十七世紀の社会的動向を見すえつつ、いくさと物語と人間のかかわりの歴史を見つめ直すことであった。
 本論集は、このようにして編まれた前論集から十年を経て、その基本的な問題意識を受け継ぐとともに、十年前には顕在化していなかったさまざまな課題をかかえる社会の現状と向きあいながら刊行するものである。日本中世におけるいくさと物語と人間のさまざまな関係性に光をあて、その分析を通して、この社会と世界の未来のかたちを描いていくことに、何らかのかたちで寄与することをめざしている。
◇          ◇          ◇
 本論集では、執筆者が共有する問題意識として、 「戦後」に流れる「時間」と向きあうことを掲げ ることとした。それがもつさまざまな作用や意義を、文学研究の観点から多角的に問うてみたいと考えたためである。
 ここでいう「戦後」に流れる「時間」とは、実際のいくさや出来事から経過した時間という意味だけではない。物語を物語として成り立たせている時間意識、事件解釈や記憶のかたちに作用する時間の問題、ある感情(の表現)を支えたりはぐくんだりする時間意識、ある文献が読み継がれたり保存されたりしてきた時間のもつ意味、後世の人々が抱くイメージとしての〈中世〉にまつわる問題、物語と物語絵の間に流れる時間の異質性と同質性、中世に生み出された物語の後世における享受のありかたなど、柔軟に広い意味でとらえ、そうした「時間」に連なる何らかの問題を、執筆者それぞれの問題意識のなかに組み込みつつ執筆していただくこととした。
 ただし、これを中世の文学の研究に関わる者のみで内向きに語りあうのではなく、できるだけひらかれたかたちで「いくさと物語の中世」という課題と時間をかけて向きあっていくために、近世・近代文学の研究や、歴史学、宗教思想史、美術史などに軸足をおいて研究に取り組んでいる方々にもご参加いただいた。

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