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風土記文字表現研究  新刊

風土記文字表現研究

◎五国の風土記における文字表現の分析を通して、「史籍」としての風土記の性質を明らかにする!

著者 奥田 俊博
ジャンル 国語学(言語学)
日本古典(文学)
日本古典(文学) > 上代万葉
出版年月日 2024/02/29
ISBN 9784762936876
判型・ページ数 A5・256ページ
定価 7,700円(本体7,000円+税)
在庫 在庫あり
 

目次

凡  例
本書の目的と構成


序 章 風土記の文字表現――書くことと読むことをめぐる序説として――
  第一節 はじめに――問題の所在――     
  第二節 文章・文体のありよう
  第三節 文字表現と書き手・読み手      
  第四節 おわりに

第一章 地名説明記事と地名――『播磨国風土記』を中心に――
  第一節 はじめに――問題の所在――     
  第二節 用字と訓みの関係
  第三節 地名説明記事の事象         
  第四節 おわりに

第二章 『播磨国風土記』の表記――文体との関わり――
  第一節 はじめに――問題の所在――     
  第二節 仮名による表記の様相
  第三節 訓字による表記の様相        
  第四節 文体との関わり
  第五節 おわりに

第三章 『播磨国風土記』の漢語表現
  第一節 はじめに――問題の所在――     
  第二節 一般的に用いられる熟字
  第三節 漢語の使用の広がり         
  第四節 句との関係
  第五節 おわりに

第四章 『常陸国風土記』の漢語表現
  第一節 はじめに――先行研究と問題の所在――
  第二節 『常陸国風土記』の漢語の性質(一)――詩・辞賦に使用される漢語――
  第三節 『常陸国風土記』の漢語の性質(二)――用字の訓釈と漢語の用法――
  第四節 他国の風土記との関係――使用される漢語の広がり――
  第五節 おわりに――公文作成の手法――

第五章 『豊後国風土記』の漢語表現
  第一節 はじめに――先行研究と問題の所在――
  第二節 『豊後国風土記』の漢語の性質(一)――『日本書紀』に見える漢語――
  第三節 『豊後国風土記』の漢語の性質(二)――『日本書紀』に見えない漢語等――
  第四節 句との関係             
  第五節 おわりに

第六章 『肥前国風土記』の漢語表現
  第一節 はじめに――先行研究と問題の所在――
  第二節 『日本書紀』『続日本紀』の用字との関係(一)
  第三節 『日本書紀』『続日本紀』の用字との関係(二)
  第四節 おわりに

第七章 『出雲国風土記』の漢語表現――『文選』の受容をめぐって――
  第一節 はじめに――問題の所在――     
  第二節 『出雲国風土記』の表現と『文選』
  第三節 『文選』李善注本との関係      
  第四節 李善注受容の様相
  第五節 おわりに

第八章 風土記の文体と表記
  第一節 はじめに――先行研究――      
  第二節 問題の所在
  第三節 仮名の使用と文体         
  第四節 正格漢文への志向と和化漢文への志向――漢語の使用をめぐって――
  第五節 おわりに――風土記の文体と表記――

第九章 風土記と公文――「史籍」としての風土記――
  第一節 はじめに――問題の所在――
  第二節 風土記の記載内容と和銅官命の「史籍」
  第三節 「史籍」の用法            
  第四節 「史籍」としての風土記と目録
  第五節 公文から風土記へ

終 章 公文から古典へ――「史籍」としての文字表現――
  第一節 文字表現の多様性と同質性      
  第二節 「風土記」の成立と展開
  第三節 「史籍」としての文字表現
  

あとがき
索 引
 書名・文献名索引
 人名索引
 語詞索引
 漢語・漢字索引
 事項索引

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内容説明

【「本書の目的と構成」より】(抜粋)
 本書は、『常陸国風土記』『播磨国風土記』『出雲国風土記』『豊後国風土記』『肥前国風土記』の五国の風土記を対象にして、主に文字表現の検討を通して、風土記の表現の性質、および、風土記という文献資料の性質を明確にしようとするものである。
 本書の「文字表現」とは、字体・字形といった文字の視覚的な側面、表記の用法・方法等といった文字の運用的な側面、および字義の捨象・拡張・付与や比喩的な転換も含む文字の意味的な側面を、より一般的に捉えた表現を指す。文字を用いて表現しようとする希求と、文字を用いて表現したものへの認識、これらの心的様態は、表現としての希求、表現としてあるものへの認識として位置付けられる。本書では、このような心的様態を、伝本資料の文学的な表現にのみ適用するのではなく、公文や荷札といった日常的な業務に用いられる文書における漢字の使用にまで適用しようとするものである。
 近年の風土記の研究は、風土記を文学の観点から捉えようとする研究が少なくない。風土記を文学的観点から捉えようとすること、また、風土記を「豊かな文学性をもった書物」「文学作品」「文学書」と位置付けることの前提には、現在における風土記という文献に対する研究の姿勢が関係する。本書も、風土記を対象にした分析の方法を、国語国文学の研究方法に依拠している点で、五国の風土記を文学の観点から捉えようとしている。ただし、風土記が成立した当時において、風土記が文献としてどのように位置付けられていたか、という点については、改めて考えてみる必要性があるのではなかろうか。
 風土記の文字表現について検討・考察するにあたって、まず重視したいのは、伝本資料として残された現存する五国の風土記の本文そのものである。文字表現という検討・考察の対象を考慮しても、伝本間の異同も含め、まずは目の前にある本文に目を向けることから始める必要があろう。本書は、現存する五国の風土記の本文から窺える文字表現の分析を通して、風土記の表現の性質を明らかにするとともに、「史籍」としての文献の性質についても検討・考察を行いたい。

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