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比較文学としての江戸漢詩  新刊

比較文学としての江戸漢詩

◎漢詩文が日本文化に及ぼした影響とは――和漢比較文学の視点から江戸漢詩を捉え直す!

著者 杉下 元明
ジャンル 日本古典(文学) > 近世文学
日本古典(文学) > 近世文学 > 漢詩文集
出版年月日 2023/08/28
ISBN 9784762936845
判型・ページ数 A5・356ページ
定価 10,450円(本体9,500円+税)
在庫 在庫あり
 

目次

序にかえて(西村康稔)


第一部 楠正成と「正気歌」

 第一章 林家漢詩に詠まれた楠公像―幕末の志士と比較して―
  一 「未来記」の謎
  二 林家と「未来記」
  三 林鵞峰と正成
  四 日柳燕石と詠史詩

 第二章 楠正成と室鳩巣
  一 『駿台雑話』の正成評価
  二 第一の謎 ―― 朱舜水・木下順庵の正成称賛
  三 第二の謎 ―― 三宅観瀾の正成賛美
  四 第三の謎 ―― 佐藤直方の正成批判
  五 『駿台雑話』と『鳩巣先生文集』

 第三章 文天祥「正気歌」と十九世紀文学
  一 『靖献遺言』と「正気歌」
  二 広瀬武夫と藤田東湖
  三 詠史詩における受容
  四 詠物詩における受容


第二部 花開く地方文化

 第四章 越中の儒者南部南山
  一 『停雲集』『鍾秀集』と南山
  二 延宝・天和・貞享期の南山
  三 南海・白石・鳩巣
  四 南部景春と祇園南海
  五 南山の晩年
  六 おわりに

 第五章 祇園南海と紀州詩壇

 第六章 祇園南海の壮年時代
  一 祇園南海の分水嶺
  二 正徳期
  三 新井白石と南部南山
  四 紀州の風光
  五 紀州の詩人たち
  六 享保期の活動
  七 紀ノ川・和歌の浦・鉛山

 第七章 梁田蛻巌と木門の人々
  一 梁田蛻巌の前半生
  二 明石藩儒となるまで
  三 唐金梅所
  四 元文・寛保時代
  五 木門詩の特徴について

 第八章 梁田蛻巌の見た関西
  一 詩集と構成
  二 須磨・明石
  三 明石での生活
  四 『源氏物語』
  五 大坂の風物 

 第九章 播州と近世紀行文
  一 上田秋成『秋山記』
  二 才麿『椎の葉』
  三 貝原益軒『続諸州めぐり』
  四 熊谷直好『船路のゆきゝ』
  五 長久保赤水『長崎行役日記』

 第十章 近世琉球と和漢比較文学
  一 白楽天と平敷屋朝敏
  二 『和漢朗詠集』その他と近世和歌
  三 盛唐詩と『中山詩文集』
  四 琉球の文学と陶淵明
  五 藪孤山と広瀬旭荘
  六 『萍水奇賞』


第三部 日本の故事を詠む詩歌

 第十一章 『庭竈集』に詠まれた人々
  一 はじめに
  二 鎌足・道長・信長
  三 毛受庄助・畑時能その他
  四 『源氏物語』と『庭竈集』
  五 その他の発句
  六 詠史詩と比較して
  
 第十二章 江戸後期の漢詩における藤原道長像 
  一 藤原道長の近世中期
  二 漢詩に詠まれた平安時代
  三 頼山陽と藤原道長
  四 藤原道長を詠む江戸漢詩
  五 大槻磐渓の詠んだ道長像

 第十三章 蒙古襲来は如何にして日本人の常識となったのか
  一 近世中期の文学と元寇
  二 中世文学にえがかれた元寇
  三 近世の史書と元寇
  四 頼山陽の時代
  五 幕末・維新期の漢文学

 第十四章 戦国武将と江戸漢詩―史観はどう変容したか―
  一 岡田新川と戦国武将
  二 川柳と戦国武将
  三 頼山陽
  四 江戸後期の詩人たち
  五 大槻磐渓
  六 中島米華
  七 大沼枕山


第四部 近代日本と漢文学

 第十五章 幕末維新期の知識人にうたわれたローマ帝国
  一 斎藤竹堂とコンスタンティヌス帝
  二 『西洋三字経』に詠まれた東ローマ帝国
  三 斎藤竹堂と東ローマ帝国
  四 サビーニ族からカエサルまで
  五 ローマの皇帝たち
  
 第十六章 朝鮮通信使と日本文学
  一 正徳の通信使と浮世草子
  二 宝暦の通信使と歌舞伎
  三 海外交流の光と影
  四 現代文学へ

 第十七章 『刺青』と漢文学
  一 「刺青」と「麒麟」
  二 谷崎が詠んだ漢詩
  三 谷崎と「長恨歌」
  四 漢詩と創作活動
  五 荷風「雨瀟瀟」について

初出一覧
あとがき
地名・人名索引

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内容説明

【「序にかえて」(西村康稔)より】(抜粋)
 …杉下元明氏がその奇才ぶりを発揮して、藤原道長、楠正成、武田信玄、徳川光圀、上田秋成、さらにはローマ帝国の皇帝まで、漢詩を通じてそれぞれの人物がどのように評価し、あるいは評価されているかを描写・分析した、素晴らしい江戸漢詩論です。…杉下氏の分析・解説を、歴史を楽しむ思いで読ませてもらいました。特に、第八章、第九章は私の地元明石が舞台となっており、私が知らなかった地元明石の歴史の事実も今回改めて認識させてもらいました。
 杉下氏の第八、第九章では、歴史的な人物が、例えば、大蔵谷(明石市の東の端)に頻繁に訪れた事実が記されており、当時の漢詩から読み取れる町の様子や人々の生活がいきいきと描かれています。
 杉下氏の分析力や想像力にあらためて感銘を受けた次第です。

【「あとがき」より】(抜粋)
 本書の関心は、漢詩文が我が国の文化におよぼした影響であり、あるいは逆に我が国の逸話を表現するときには中華の何になぞらえられたかである。第一部はその典型的な例として楠正成を詠んだ漢詩を取り上げ、また「正気歌」という作品が江戸漢詩にあたえた影響を明らかにした。
 第二部では、まず第二章で取り上げた室鳩巣に関連して、同時代の越中や紀州、播州明石など日本の各地で花開いた日本漢文学について検討をくわえた。さらに琉球の文化に漢詩文のあたえた影響についても明らかにした。
 第三部では藤原道長・蒙古襲来・戦国武将などにまつわる我が国の逸話を、江戸漢詩がいかに中華風にえがいたかを中心に論じた。
 第四部は、初めに第三部を受ける形で、西洋の逸話を詠んだ漢詩文を紹介した。さらに、江戸漢詩に関係する現代文学や、漢詩文の影響を受けた近代文学について論じた。

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