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百二十回本『水滸傳』の研究  新刊

百二十回本『水滸傳』の研究

◎百二十回本を精査することで判明した発見の一冊!

著者 中原 理恵
ジャンル 中国古典(文学)
中国古典(文学) > 明清
出版年月日 2023/02/21
ISBN 9784762967245
判型・ページ数 A5・408ページ
定価 11,000円(本体10,000円+税)
在庫 在庫あり
 

目次

序(小松  謙)     
序(潘 建 國)
敍   章
本書について      
各章の初出      
凡例
第一章 百二十回本 『水滸傳』 の諸版本

書誌の凡例                   

第一節 『忠義水滸全傳』の書誌

第二節 『忠義水滸全書』の書誌

附(一) 目錄で存在が確認できる百二十回本    
(二)『水滸傳』書目での扱い
(三) 百二十回本の封面の樣式         
(四) 百二十回本『水滸傳』諸版本の位置づけ
(五) カリフォルニア大學バークレー校東アジア圖書館藏百回本の書誌
(六) 不分卷百回本の書誌

第二章 『忠義水滸全傳』 について

第一節 甲本と乙本の相違その一――前付
(一) 甲本と乙本の前付            
(二)「讀忠義水滸全傳序」 
(三)「宋 鑑」               
(四) 序がなくなった理由
(五) 書肆・寶翰樓

第二節 甲本と乙本の相違その二――正文
(一) 異版部分の異同             
(二) 同版部分の異同

第三節 甲本と乙本の相違その三――圖題
(一)『全傳』と不分卷百回本との關係     
(二) 圖題の相違

第二章 『忠義水滸全書』 について

第一節 郁郁堂本

第二節 前田育德會尊經閣文庫藏本
(一) 匡郭の大きさについて          
(二) 第九十回最終葉「至一百十回止」の有無
(三) 第百十一回版心「第一百十一回」と「第又一回」

第三節 百二十回本の版本を利用した百回本     

第四節 版木の變遷

第五節 後 修 本
(一) 後修本甲                
(二) 後修本乙

第六節 變則的な葉
(一) 郁郁堂本における變則的な葉      
(二) 後修本における變則的な葉

第四章 日本における 『水滸傳』 の受容

第一節 曲亭馬琴
(一) 天理圖書館藏本の傳來          
(二) 馬琴と漢籍
(三) 天理圖書館藏本と馬琴の關わり      
(四) 馬琴の白話讀解力

第二節 江戸の大名――藩主・諏訪忠林
(一) 諏訪忠林と『水滸傳』          
(二) 忠林の白話研究
(三) 忠林の交友關係

第五章 書  肆――明淸時代の共同出版

第一節 郁郁堂と大業堂の關係――『西廂釋解』を例に
(一) 書肆・郁郁堂                
(二)『西廂釋解』の諸版本について
(三) 版本の所藏先及び書誌     
(四) 封  面
(五) 大業堂・郁郁堂刋本                
(六) 郁郁堂刋本
(七) 中國における共同出版

第二節 余氏と大業堂の關係――『廉明奇判公案』を例に
(一)『廉明奇判公案』の諸版本について       
(二)「殘篇故事」について
(三) 緃と横の關係                 
(四) 余氏刋本        
(五) 大業堂刋本                   
(六) 四卷本と二卷本との關係
(七) 書肆の活動

終   章
あとがき
索  引

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内容説明

【敍 章より(抜粋)】
 『水滸傳』は、中國文學史上で四大奇書とされる小説で、廣く流傳し、多くの版本が知られる。……本書では、この多くの版本を整理することから始めたい。原本を網羅的に調査し、繼承關係を明らかにして、版本の位置づけを行うことが、本書の中核であり、筆者の研究手法である。
 『水滸傳』は、その内容の繁簡により、大きく二つに分けることができる。描寫が詳細なものを「文繁本」、簡略なものを「文簡本」と呼ぶ。文繁本が先で、文簡本が後から成立したとされる。
 本書では文繁本を對象にして議論を進めていく。文繁本には、百回本、百二十回本、七十回本がある。……これら文繁本は、さらに二つに分けることができる。一つは、卷と回に分けて、數回分を一卷とする「分卷本」、もう一つは、卷に分けず回だけの「不分卷本」である。分卷本は、たとえば百卷百回本に容與堂刋本(萬曆中刋本で、現存最古の版本と考えられる)が知られる。……さて、中國文學研究者による『水滸傳』の研究は、多くが古いテキストである百回本、とりわけ容與堂刋本によってなされてきた。しかしながら、百回本以外は重要ではないかと言うと、そうではない。百二十回本は、まず金聖歎本を考える上でも重要である。金聖歎本は、小説を文學の一ジャンルに作り上げたテキストであった。その金聖歎が用いた底本は百回本ではなく、百二十回本なのである。これまで影響が手薄で重視されてこなかったため、本書では百二十回本を取り上げる。
 さらに、日本における需要を考える上でも重要である。曲亭馬琴や幸田露伴が、百二十回本を入手しようとし、多大な關心を寄せていたことは周知の通りである。馬琴や露伴をはじめ、日本文學にどのような影響を與えたのかを考える上でも、百二十回本は重要な意味を持つ。
 ところで、百二十回本には『忠義水滸全傳』(以下、『全傳』)と、それを翻刻した『忠義水滸全書』(以下、『全書』)がある。内容はほぼ同じだが、『全傳』、『全書』に見られる個別の特色も有す。……江戸時代から明治時代にかけて、日本で最も多く受容されたのは『全書』である。現存數は『全書』のほうが壓倒的に多い。長い期間に渡り印刷されてきたことから、殘存數が多く、時どきの補修の樣子などを細かく調査することで、明末淸初における書肆(本屋)の面白い實態も明らかになった。同一の版本を使って百二十回本と百回本の二種を刋行しようとした可能性が考えられるのである。『水滸傳』の内容のみならず、書肆の活動は研究する價値を有す。
 中國における出版については不明なことが多く、これまで先行研究もあまりなされてこなかった。『全書』を刋行した書肆を足がかりに、明淸時代の書肆の活動を調査してみると、共同出版や盜版の可能性が高いと思われる事例が存在し、刋行形態を考える上でも、『水滸傳』のみならず廣がりが見られた。



Bibliographical Studies of 120 chapters of Tales of the Marshes

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