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中世真名軍記の研究

中世真名軍記の研究

◎真名本に関わる言語事象から、学問的基盤を探る!

著者 橋村 勝明
ジャンル 国語学(言語学)
国語学(言語学) > 語彙音韻
出版年月日 2022/11/11
ISBN 9784762936807
判型・ページ数 A5・400ページ
定価 11,000円(本体10,000円+税)
在庫 在庫あり
 

目次

序章 真名本研究の意義

    従来の漢字文研究に於ける真名本の位置付け
    真名本内の分類について
    真名本研究の意義と問題点

第一章 真名本の漢字の用法 用字と訓

 第一節 妙本寺本『曽我物語』の「則」字訓について
      真名本の「則」字訓について
      「ヤガテ」と「スナハチ」
      曽我物語諸本との用語上の差異

 第二節 中世真名本に於ける「而」字の用法と訓とについて
          ―妙本寺本『曽我物語』を中心として―
      妙本寺本『曽我物語』に於ける「而」字
      中世以前の「而程」「而事」について
      日蓮宗に於ける「而」の用法

 第三節 妙本寺本『曽我物語』の「是」字の用法とその訓とについて
      中世に於ける「是」字の使用状況について
      「カクテ」の表記と用法とについて

 第四節 妙本寺本『曽我物語』の訓読語について ―実字訓を視点として―
      妙本寺本『曽我物語』に於ける実字の全訓付訓語について
      古辞書との比較

 第五節 妙本寺本『曽我物語』と内閣文庫蔵『源平闘諍録』とに於ける
                    訓読語の共通性・差異性について
      『曽我物語』と『源平闘諍録』とに於ける全訓付訓語の比較
      真名本的標準の訓と個別的な訓とについて

 第六節 大分県立先哲史料館蔵『大友記』の「乃」字訓「イマシ」について
      先哲史料館本『大友記』の「乃」字
      真名本に於ける「乃」「則」「即」
      中世以降の「乃」字と「イマシ」
      先哲史料館蔵本と内閣文庫本との比較

 第七節 『豆相記』の訓点について
      付訓状況の比較
      連文節訓について

第二章 真名本の文構造 倒置記法と文末表示法

 第一節 中世真名軍記の倒置記法について ―『大塔物語』『文正記』を例に―
      倒置の用例数の多い漢字について
      二資料間で倒置の様相が異なる例について
      非倒置の用例について

 第二節 中世真名軍記に於ける倒置記法「有之」について
      真名軍記の用例について
      漢字仮名交じり表記の軍記の用例について
      第一義的変体漢文の用例について

 第三節 『花月対座論』の転倒符について
      『花鳥風月の物語』との関係について
      転倒符について
      返点と転倒符との関係性について
      返点の被注漢字について
   
 第四節 聖藩文庫本『豆相記』に於ける「矣」字の用法について
      『豆相記』の「矣」字の用法
      真名軍記に於ける「矣」字
      『豆相記』の「矣」字使用の背後

 第五節 中世真名軍記に於ける助動詞「ケリ」の表記について
      小書きの「ケリ」
      真仮名の「ケリ」
      漢字の「ケリ」
      『異本官地論』の「ケリ」

 第六節 中世に於ける助動詞「ケリ」の用字について
      中世に於ける助動詞「ケリ」の用字
      近世に於ける助動詞「ケリ」の用字

第三章 真名本の周辺

 第一節 『惟任退治記』に於ける表記差による本文異同について
      『惟任退治記』について
      比較検討

 第二節 東京大学史料編纂所本『加州官地論』について
      助詞の片仮名表記と平仮名表記
      章段による分類
      諸本の関係について

 第三節 『平家物語』所収文書の漢文訓読語
      「則」字訓の対応関係
      「於」字訓の対応関係
      「欲」字訓の対応関係

 第四節 平松家本『平家物語』の「於」字の用法について
      「於」字の使用状況
      「於」字訓について
      古辞書の記述

 第五節 松平本『文正記』に於ける古文の使用について
      問題の所在
      『文正記』に於ける古文の用例の検討
      漢字表記文との比較
      古文の来歴
      書写者福
      住道祐について

 第六節 類義の熟字「比年」「頃年」「年来」について
          ―中世真名本の用字の背景に関する一考察―
      「比年」「頃年」「年来」の出現状況について
      中世往来物・真名本に於ける「比年」「頃年」「年来」

 第七節 妙本寺蔵『いろは字』に於ける「和」注記について
      「和」注記の存する漢字とその訓について
      真名本の用例について

結 章
 第一節 真名本の成立と展開―真名軍記を手がかりとして―
      真名本の個別的特徴について
      漢語の歴史的展開と真名本の成立

 第二節 中世の漢字と訓 ―「既」字訓「カクテ」と「惢」訓「ユユシ」を通して―
      内閣文庫『聖徳太子伝宝物集』の「既」字訓「カクテ」
      「カクテ」訓と「カクテ」の用字
      「カクテ」の用例の検討 ―語義の重なりの可能性―
      千秋文庫蔵『源威集』の「惢」字訓「ユユシ」
      漢字仮名交じり文の「ユユシ」の用例について

 第三節 中世後期真名軍記の背後
      軍記と連歌
      軍記と時衆
      軍記とその用字

あとがき     
索  引

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内容説明

【序章 真名本研究の意義 より】
 本書に於いて研究対象とする中心的な資料は、中世の真名軍記である。真名軍記の真名は所謂真名 本を指し、そのうち軍記と称される資料群を研究対象とする。
 真名本の存在は早くから知られながらも、その成立事情の特殊性からか、日本語学の研究対象としては取り上げられてこなかったように思う。……
 真名本の用字法・訓読法を研究することによって、平安鎌倉時代及び江戸時代を中心に、訓点資料を主に行われてきた漢字文研究の隙間を埋めることが可能になる。
 第一義的変体漢文と第二義的変体漢文とを比較した際に、質的な差が認められなければそれらは日 本語学上は一括りにしてよいだろうし、差が認められるとすれば成立過程を含めた様々な要因について検討をしなければならない。その際に注意を要するのは、第二義的変体漢文には先行形態として仮名本が存するという先入観である。二種を同質と捉えられない理由を直ちに成立過程に求めてはならない、ということである。もちろん、先入観無く検討した結果、質的な差の痕跡が成立過程に求められるのであれば結論としてよい。そのような立場から、本書では一端研究の方法として所謂真名軍記を資料群として一括りとするが、そのことが日本語学上の特質による括りでは無いということを明確にしておく。
 本書では、真名本研究の主な視点として語彙語法と文構造を設定し、更に真名本を取り巻く資料との関係を踏まえつつ真名本の特質を明らかにすることを意図した。

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