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一切経音義古写本の研究

一切経音義古写本の研究

◎「全文データベース」を駆使して、現存古写本や古辞書引用文の系統を明らかにする

著者 李 乃琦
ジャンル 国語学(言語学)
出版年月日 2021/12/15
ISBN 9784762936593
判型・ページ数 A5・186ページ
定価 6,050円(本体5,500円+税)
在庫 在庫あり
 

目次

第1章 一切経音義についての先行研究
    1.1 一切経音義
    1.2 一切経音義と日本古辞書
    1.3 先行研究の問題点

第2章 一切経音義の系統分類
    2.1 「一切経音義全文データベース」について
    2.2 経目名による系統分類
    2.3 本文による系統分類

第3章 一切経音義と原撰本類聚名義抄
    3.1 一切経音義諸本と類聚名義抄との不一致
    3.2 一切経音義高麗本系統と類聚名義抄
    3.3 一切経音義大治本系統と類聚名義抄
    3.4 一切経音義石山寺本系統と類聚名義抄
    3.5 まとめ

第4章 一切経音義古写本と天治本新撰字鏡
    4.1 独自項目と独自注文
    4.2 新撰字鏡との照合
    4.3 新撰字鏡の成立仮説

第5章 一切経音義の敦煌・吐魯蕃断片群
    5.1 現存する一切経音義の敦煌・吐魯蕃断片群
    5.2 フランス国立図書館蔵 P.2901
    5.3 サンクトペテルブルク本Φ230

結 論



付 録
(「一切経音義全文データベース」〈北海道大学で内部公開中〉の具体例を示す)
    1 一切経音義翻字の方針
    2 一切経音義の翻字(具体例)
    3 一切経音義古写本の画像

参考文献
構成論文初出一覧
あとがき
索引

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内容説明

【緒言より】(抜粋)

『一切経音義』は中国で編纂された書物であるが、現在中国では版本の『一切経音義』しか残されていない。それに対して、日本では、10種以上の写本が現存している。これまで、『一切経音義』の版本については、中国語学・文献学の視点から十分研究されてきたが、日本にのみ現存する古写本については十分な研究が未だなされていない状況である。一方、『一切経音義』は平安時代古辞書である『新撰字鏡』と『類聚名義抄』が編纂された時に、基幹資料として使われたことから、国語学研究においても貴重な資料である。にもかかわらず、両者の関係については研究が不十分だと言わざるをえない。その理由は、日本に現存する平安時代以来の『一切経音義』古写本に、少なくとも二つの系統が想定され、「日本古辞書がどの系統の一切経音義を引いたのか」がそもそも解明されていないためである。膨大な言語情報を持つ『一切経音義』が日本に伝来した後、どのように利用されたのか。特に、日本古辞書の編纂にどのような影響を与えたのかを解明することを、本研究の目的の一つとする。そのため、平安時代の代表的な古辞書である『新撰字鏡』、『類聚名義抄』と仏典音義の『一切経音義』を比較して、日本辞書編纂史における中国文献の享受の実態を考察する。
 第1章では、まず、今まで盛んに研究された『一切経音義』版本についての研究成果をまとめる。版本において、系統・校勘・音韻・語彙・字体・出典・情報学などの分野で研究されてきたが、その結果は写本の研究に対しても、有効な研究方法だと考えられる。次に、日本では既に『一切経音義』と日本古辞書についての研究があるが、それらの研究を検証した上で、残されている問題を明らかにし、本研究で解決すべき問題を定める。
 第2章では、膨大な量を持つ9種の『一切経音義』古写本を処理するため、「一切経音義全文データベース」を構築した。その結果に基づき、さらに『一切経音義』の構成を考慮し、経目名と本文との二つの部分に分けて、別々に系統分類を検討する。最後に、その結果と『一切経音義』の構成・書写形式を合わせて考察し、古写本の系統分類を明らかにする。
 第3章では、原撰本『類聚名義抄』における『一切経音義』の利用について検討する。原撰本『類聚名義抄』には「广云」などの形式で、『一切経音義』からの引用を明記している。それらの内容をすべて抽出し、既に分類された『一切経音義』の各系統と照合する。それにより、原撰本『類聚名義抄』の編纂時に、利用した『一切経音義』の系統を解明することが可能である。
 第4章では、天治本『新撰字鏡』における『一切経音義』の利用について検討する。原撰本『類聚名義抄』が出典を明記する編纂方針と異なり、天治本『新撰字鏡』は出典が明記されず、さらに各文献からの引用が混同している。そのため、『一切経音義』において特定の系統にあり、他の系統にない内容をすべて抽出し、それらを天治本『新撰字鏡』と比較する。それにより、天治本『新撰字鏡』が編纂された時に利用された『一切経音義』の系統を推測する。
 第5章では、『一切経音義』の写本でイギリス・フランス・ドイツ・ロシアに所蔵されている多数の敦煌・吐魯蕃断片群に着目する。その中、断片で項目数が最も多いP.2901(フランス国立図書館蔵本)と、前後の書写形式が異なるΦ230(ロシア科学アカデミー東洋学研究所蔵本)を中心として考察する。それにより、敦煌・吐魯蕃断片群の編纂方針を検証し、さらに同じ写本である日本古写本との照合も行う。

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