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汲古叢書168 ソグドから中国へ

―シルクロード史の研究―

汲古叢書168 ソグドから中国へ

◎待望の栄新江先生の論考(20本)刊行なる!

著者 栄 新江
ジャンル 東洋史(アジア)
東洋史(アジア) > 殷周秦漢
東洋史(アジア) > 魏晋隋唐
シリーズ 汲古叢書
出版年月日 2021/10/20
ISBN 9784762960673
判型・ページ数 A5・484ページ
定価 14,300円(本体13,000円+税)
在庫 在庫あり
 

目次


凡 例

 シルクロード史一般
漢代から唐代における東西交渉史──新旧史料の概観──
イスラーム化以前の中央アジア──東西交渉史上の役割──

 唐朝都城と周辺諸民族
八世紀における東アジアの外交情勢と遣唐使による中日交流
「井真成墓誌」からみた唐朝の日本遣唐使に対する礼遇について
新出墓誌から見る入唐西域人の活動──哥邏祿熾俟氏家族を中心として──

 敦  煌
盛唐長安と敦煌──俄蔵「開元廿九年(七四一)授戒牒」から──
唐代の佛・道二敎から見た外道──景敎徒──

 トルファン
シルクロードの新出土文書──吐魯番新出文書の整理と研究──
新出吐魯番文書に見える唐龍朔年間の哥邏祿部落破散問題
トルファン出土『金光明経』写本題記と高昌への祆教伝来
「西州回鶻某年造仏塔功徳記」小考

 于  闐
ダンダン=ウィリクの考古学的調查と研究(一八九六〜二〇〇二年)
「蘭亭序」および「尚想黃綺」帖の西域における流傳
唐朝時期における漢籍の西域流布

 ソグド
新出トルファン文書に見えるソグドと突厥
ソグド祆教美術の東伝過程における転化──ソグドから中国へ──
シルクロードにおけるソグド人居住地の日常生活
唐代六胡州ソグド人の畜牧生活形態
     ──二〇〇七年西北農牧交錯地帯の城址と環境調査記──
新出石刻史料から見たソグド人研究の動向
敦煌帰義軍節度使曹氏出自攷──ソグド後裔説をめぐって──

初出一覧
翻訳・編修者一覧

英文目次
索  引

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内容説明

【序より】

一九九〇年に私は初めて日本を訪れ、龍谷大学西域文化研究会で半年間研究に従事した。その間、京都大学人文科学研究所の桑山正進先生が主宰される『慧超往五天竺国伝』読書班に参加し、また、東京・大阪・奈良等にある学術機関を短期間訪問し、所によっては講演も行った。この後、私が日本を訪れる機会は年を逐って増え、最近十数年の間は、二〇二〇年は残念ながら新型コロナウイルス感染症流行の影響を受けたほかは、ほとんど毎年訪れており、時には一年に二~三回行くこともあった。短期訪問と研究、学術会議、または特別展覧会の見学、図書購入など、様々なことがあった。関連領域の日本の研究者もたびたび北京を訪れ、あるいはその他の地方で開催される学術会議で彼らと会うこともあり、交流は非常に頻繁であった。日本の先生方の中には、ご自身の学生を推薦して北京大学に来させ、私の指導の下で隋唐史・シルクロード・敦煌トルファン文書などを学ばせることがあり、それぞれの学生たちは、私の門下で二年間を過ごした。私もまた一視同仁の態度で、北京大学の自分の学生と同じように対応し、授業や指導の他に、時には彼らを連れて地方で資料調査を行うこともあった。
 「以文会友」の原則に基づいて、招聘を受けて日本の学術会議に参加したり論文を書いたりするときには、私は極力日本語の論文を提出するようにしてきた。残念ながら、私の日本語は大学で第二外国語として学んだに過ぎず、本を読むことはできるが、書くことはできない。しかしながら私を招聘してくれた日本の友人や会議、学術雑誌の主宰者、私がかつて教えた日本の学生、あるいは日本語が得意な中国の学生の協力によって、相前後して発表した私の日本語の業績は、既に四〇篇近い分量になり、内容も私の学問領域のほとんど全域に及んでいる。総じていえば、日本で発表した論文には、全て自分から見ても最も満足がいく、学術的な成果の豊富な作品を選んできた。そのため、これらの日本語論文は、私が行ってきた学問領域の主要な成果を含んでいるといってよい。
 二〇一九年の始めに、私は東洋大学で連続講義を行い、その機会に日本語で発表した自分の全ての文章を整理する機会を得たことから、日本語の論文集を出版してみたいという考えが浮かんだ。その考えは、日本の友人である氣賀澤保規・妹尾達彦両教授の賛同を得て、また汲古書院の三井久人社長の了解も得ることができ、特に東洋大学の西村陽子氏の協力を得ることができた。そこで既出版の日本語論文を全て集め、そこから二〇篇を精選し、『ソグドから中国へ──シルクロード史の研究』と題し、「シルクロード史一般」・「唐朝都城と周辺民族」・「敦煌」・「トルファン」・「于闐」・「ソグド」という六つの領域に分けて文章をまとめ、読者が筆者の全体的な学問の枠組みと研究過程を理解できるようにした。二年にわたる尽力を経て、今、論文集の編集はほぼ完成した。(中略)
 山川は域を異にすれども、風月は天を同じくす。これを学子に寄せ、共に来縁を結ばん。
 拙著の出版が、日本の研究者諸賢の批評と叱正のきっかけになることを願っている。中日両国の学術交流には悠久の歴史があり、筆者にとっても、過去三〇年来の日本の研究者との交流は裨益するところが大きかった。今後とも、より一層の努力を重ねつつ、友好を深め、学術を促進していきたいと願っている。





From Sogdiana to China: Research on the History of Silk Road

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