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本草和名

-影印・翻刻と研究-

本草和名

◎最善本の一つ岩瀬文庫蔵本を影印・翻刻 ――『本草和名』の歴史的意義と国語学的意義を明らかにする!

著者 丸山 裕美子 編著
武 倩 編著
ジャンル 国語学(言語学)
日本史
日本史 > 古代
出版年月日 2021/08/30
ISBN 9784762942396
判型・ページ数 A5・614ページ
定価 14,300円(本体13,000円+税)
在庫 在庫あり
 

目次

序章 ――西尾市岩瀬文庫所蔵『本草和名』解題――
   『本草和名』概略
   『本草和名』の再発見と版本刊行
   『本草和名』の写本について
   岩瀬本『本草和名』書誌
   小島尚質(宝素)・尚真父子略歴
   小島尚質(宝素)・尚真父子と『本草和名』
 
第Ⅰ部 影印  凡例 上巻・下巻   
     
第Ⅱ部 翻刻  凡例 上巻・下巻

第Ⅲ部 研究

 第一章 敦煌写本本草書と古代日本の本草書
         ―『本草和名』の歴史的意義―
   日本における『新修本草』の受容
   『本草和名』について
   『本草和名』の伝来
   『本草和名』の構成
   敦煌写本本草書について
   『本草和名』と敦煌写本『新修本草』

 第二章 『本草和名』の諸本
   先行研究の整理
   『本草和名』の写本
   『本草和名』の版本

 第三章 『本草和名』と『倭名類聚抄』
  第一節 『倭名類聚抄』と『本草和名』の共通出典
          ――『新修本草』以外の漢籍を中心に――
        両書の体裁と引用方法
        両書の間で共通する『新修本草』以外の漢籍出典
  第二節 『倭名類聚抄』における『本草和名』の誤引
        誤引とは
        河野の諸点
        棭斎による誤引の指摘
        棭斎の考証

第Ⅳ部 補論

  第一章 延喜典薬式「諸国年料雑薬制」の成立と『出雲国風土記』
    天聖令による日本令薬物徴収関連条文の復原
    日唐医疾令の比較による古代日本の薬物徴収制度の特質
    『延喜式』の薬物徴収システムと諸国年料雑薬制の成立
    『出雲国風土記』の薬物リストと諸国年料雑薬制

  第二章 北宋天聖令による唐日医疾令の復原試案 
    唐医疾令復原の再検討
    日本医疾令復原の再検討

  第三章 唐医疾令断簡(大谷三三一七)の発見と日本医疾令
        ――劉子凡「大谷文書唐《医疾令》・《喪葬令》残片研究」を受けて――
    唐医疾令断簡(大谷三三一七)による条文の復原
    唐医疾令断簡(大谷三三一七)による条文排列の訂正
    唐医疾令断簡(大谷三三一七)による日本医疾令の復原と条文排列 
 
第Ⅴ部 索引   
    和名索引・薬名索引・書名索引

あとがき(付・担当、初出一覧)
            
(令和2年度日本学術振興会助成図書)

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内容説明

  本書は、『本草和名』写本として最善本の一つとみなされる西尾市岩瀬文庫所蔵本(岩瀬本)を影印・翻刻して、日本古典全集本による誤りを正し、あわせて『本草和名』の歴史的意義と国語学的意義を明らかにすることを目指したものである。
 『本草和名』は、延喜末年頃(920~923)に、醍醐天皇の勅を受けて、権医博士深根輔仁が編纂した漢和薬名辞書である。唐の勅撰本草書である『新修本草』によって薬名を配列し、「食経」などによって薬名を補い、その和名を記している。当該期の医学・薬学知識の水準を知ることができる史料であり、かつ、多くの逸書を引用している点でも貴重である。『和名類聚抄』に先行して、和名を対照させた辞典であり、古代の日本語の語彙研究にも欠かすことができない大切な史料である。
 現在広く流布している日本古典全集本は、多紀元簡によって享和2年(1802)に版行された版本(「寛政版本」)に、森立之・森約之父子が書入れを行った松本書屋本を複製したものである。狩谷棭斎や小島尚質(宝素)・尚真父子の書入れも転写されており、江戸時代末の本草学・考証学の研究成果の集大成であるといえる。しかし、その考証の結果として、本来の写本にはない撰者名「深根輔仁」を「深江輔仁」と誤って刻し、かつ「奉勅新撰」という原本にはない文言を書き加えてしまった。また、写本には記載のない「唐」(和名がなく、日本に産出しないことを記す)をいくつも加えていたり、和名が付け加わっていたり、異なる出典名を翻刻したりしている例がある。全集本は、江戸時代の本草学・考証学のレベルの高さを示す貴重な成果ではあるが、本来の古写本の姿を伝えたものではない。
 本書は、古写本の忠実な写本である岩瀬本を影印・翻刻し、信頼にたる新たなテキストを提示した。今後の『本草和名』研究の基本的テキストとして、歴史学、国語学、東アジアの医学・薬学史に裨益するであろう。

本書はⅠ~Ⅴの5部で構成される。

【岩瀬本『本草和名』について(Ⅰ影印・Ⅱ翻刻)】
 西尾市岩瀬文庫所蔵の『本草和名』は、唯一の古写本である紅葉山文庫本を謄写した医学館本(所在不明)の忠実な写本である。幕府医官で書誌学者の小島氏の旧蔵書で、19世紀半ばに書写されたと考えられる。紅葉山文庫本が、現在所在不明であり、書写年代が明確な台北・国立故宮博物院所蔵本(1860年書写、森立之・楊守敬旧蔵)の影印出版が困難な状況であるなか、岩瀬本は最善の写本と評価される。
『本草和名』の活字としては、続群書類従に収載の『輔仁本草』しかなかったが、誤植が多い上に、寛政版本によっているため、その誤りを引き継いでしまっている。今回の翻刻は、写本に基づくはじめての翻刻で、故宮本や寛政版本との異同を頭注で示し、今後の『本草和名』研究の基礎となる。

【本書の特色(Ⅲ研究・Ⅳ補論・Ⅴ索引)】

研究:『本草和名』に直接関わる研究をまとめたものである。『本草和名』の歴史的意義と国語学的意義を明らかにする論考からなる。

補論:『本草和名』成立の背景となる、日本古代の医学・医療制度に関する論考をまとめた。新出史料を分析し、散逸した日本と唐の医疾令の復原を試みた論考と、年料雑薬徴収制度の成立について考察した論考を加えた。

索引:万葉仮名で表記された和名に平仮名を付した「和名索引」、薬名を現在の漢方の一般的呼称によって五十音順に並べた「薬名索引」、逸書を含む多くの引用典籍の索引「書名索引」からなる。『本草和名』の利便性を高め、万葉仮名の使用例を示すとともに、舶載された典籍の利用の実態や逸文蒐集の便宜を図ったものである。

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