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唐代の文化と詩人の心

白樂天を中心に

唐代の文化と詩人の心

唐代の實相を見つめ、その時代を生きた文人たちの心の温もりに触れる論考!

著者 丸山 茂
ジャンル 中国古典(文学) > 唐宋元
出版年月日 2010/02/17
ISBN 9784762928741
判型・ページ数 A5・662ページ
定価 19,800円(本体18,000円+税)
在庫 在庫あり
 

内容説明

 

 

 

 

【概要】より 

中國古典文學が「文藝」という「狹義の文學」の領域を超えた「人文科學」とも言うべき「廣義の文學」である以上,作品究や作家論といった從來の究方法のほかに「人?學」を志向する文化史的究が必要である。本究は,唐代の文學に政治的背景や生活環境などの文化史的側面から考察を加えた論考である。

全體は次の3部から構成される。

  第1部 唐代中期の政治と文學

  第2部 唐代詩人の生活環境

  第3部 『白氏文集』と白居易

第1部の中核を成す論考は,第2章の「張籍『傷歌行』とその背景――京兆尹楊憑左遷事件――」(『東方學』637488頁)で,唐代中期の詩人である張籍の樂府詩「傷歌行」が詠まれた社會的背景を考察することで「政治と文學の關係」を明らかにしたものである。この論考によって,「諷諭詩の生まれる背景には作者が實見した史事實が存在し,その體驗を作者がどのように作品化したか」が明らかになった。

第2部の中核を成す論考は,第1章・第3節の「唐代長安城の沙堤」(汲古書院『沼尻博士退休記念中國學論集』1738頁)で,考古學的發掘資料では再現することのできない「沙堤」の全貌を文獻資料から明らかにしようと試みたものである。この考察によって,『全唐詩』中に散見される宰相のための「沙堤」が具體的にどのようなものであったかが明らかになり,「沙堤」という詩語に象徴される文化史的背景を理解することで,從來の不完全な注釋では實感することのできなかった作者の心境をより深く感得することが可能となった。

第3部の中核を成す論考は,第2章の「回顧としての『白氏文集』」(『日本中國学會報』第4790105頁)で,白居易の「回顧癖」に着目し,その性癖と文學的特色との關係を明らかにしたものである。この論考によって,作者の??生活と創作活動との關連付けがなされ,從來の文學史や究論文の中で「平易通俗」「饒舌」とだけ説明されてきた評語の深意が明らかとなった。

上記3篇に共通する究上の特色は,「作品を通じて作者の人?性を理解する」ことを志向し,文學を「文藝作品としての美的技巧究の對象」や「單なる史的文獻資料」として扱うのではなく,「作者の??生活を理解するための文化資料」として整理・分析した點にある。

【内容目次】

 序 日本大學名譽?授 坂井健一

本 編 唐代文學の文化史的研究―白居易を中心に―   

序 説・概 要

第1部 唐代中期の政治と文學

   1章 唐代諷諭詩考――中唐の元和期を中心に――

   第1節 士大夫の文學觀  

   第2節 諷諭詩に見る元和期の社會問題  

   第3節 中唐期の觀念形態

  第2章 張籍「傷歌行」とその背景――京兆尹楊憑左遷事件――

第1節 張籍の「傷歌行」    

第2節 京兆尹楊憑左遷事件  

第3節 楊憑とその交遊

第4節 彈劾者李夷簡  

第5節 事件の背景  

第6節 事件と柳宗元  

第7節 官界の無常

  第3章 韓愈と張籍

   第1節 韓愈の張籍評價  

   第2節 張籍樂府における篇法の妙  

   第3節 張籍樂府「節婦吟」

第2部 唐代詩人の生活環境

 第1章 唐代の長安

第1節 唐代詩人の通った街道と宿驛  

第2節 唐代長安城の沙堤

第2章 唐代詩人の日常生活

第1節 樂天の馬  

第2節 「妾換馬」考  

第3節 唐代詩人の食生活――蟹・南食・筍

第3部 『白氏文集』と白居易

 第1章 自照文學としての『白氏文集』――白居易の「寫眞」――

第1節 白居易の創作意識  

第2節 『文集』の成長過程  

第3節 白居易の肖像畫

第4節 肖像畫の制作年代  

第5節 「集賢殿御書院」の肖像畫  

第6節 肖像畫を見つめる樂天

第2章 回顧としての『白氏文集』

第1節 饒舌と繁多  

第2節 回顧による「時?の層」  

第3節 1首の詩の中における「時?の層」  

第4節 複數の詩における「時?の層」

第5節 『文集』編集過程における「時?の層」  

第6節 人生の記

第3章 交遊としての『白氏文集』

第1節 白居易をめぐる人々 

   〔侯權秀才/?貢進士/進士/書判拔萃科受驗/校書郎/才

    識兼茂・明於體用科受驗/厔縣尉/集賢殿校理・翰林院

    學士/進士科再試驗事件/張山人)〕

   第2節 白居易の友人達――その人となり―― 

      〔人となり/友人の定義/『文集』の資料的價値/友人の種

       類/親友の條件/交友の「動」と「靜」/人物評價と評語

       /交友の諸相/誠實さ〕

第3節 白氏交遊

    【元宗簡】

    〔元稹や元集虚と混同された元宗簡/李建と元宗簡/

    「故京兆元少尹文集序」から蘇る元宗簡/白居易と周邊の

     詩人達の詩にみる元宗簡像/白居易の詩から蘇る元宗簡

     /隣人としての元宗簡/元宗簡の職歷と官僚生活/元宗

     簡の死〕

        【錢徽】

        〔出逢いより錢徽長逝に至るまでの交遊/正史に記され

         た錢徽像/周邊詩人の關連作品に見られる錢徽/錢徽

         の人となり――陶淵明・王維・錢起との關連/元宗簡

         との比較にみる錢徽との交遊の特色〕

        【李建】

        〔李建の死(死生の分・李建の死因・李建と道術)/李

         建の人となり(苦學・外淡中堅)/李建の交遊(利と

         名に及ばず・鄜州刺史李建と翰林學士白居易・李建と

         元稹・李建と韓愈・柳宗元・李建と元和期の名臣た

         ち)/年長の友(元宗簡・錢徽との比較)

        【元稹・劉禹錫】

        〔白居易・元稹・劉禹錫に關するこれまでの硏究/白居

         易の「詩敵」元稹と「詩友」劉禹錫/白居易・元稹・

         劉禹錫の關係/裴度・令狐楚との交遊における白・

         劉・元の態度(裴度と白居易と劉禹錫・令狐楚と劉禹

         錫と白居易・裴度と令狐楚と元稹・宰相元稹と元老裴

         度)/白居易・元稹・劉禹錫の詩作(詩作の場・寓言

         詩)〕

        【張籍】

        〔共通の「座主」高邸/太常寺太祝張籍/翰林學士・左

         拾遺白居易/太子左贊善大夫白居易・張籍の古樂府/

         江州司馬白居易/祕書郎張籍/新昌里の白居易と靖安

         坊の張籍/水部員外郎張籍/杭州刺史白居易/蘇州刺

         史白居易/杏園の春/聯句/刑部白侍郎の雙鶴/

         白賓客分司東都〕

附 編

AⅠ. 「王維の自己意識」

.王維の後姿  

.王維の原點  

.「觀別者」詩の中の「もう一人の王維」

.「渭城曲」の「柳色」と「故人」

.送別詩の中の王維  

.「輞川集」の中の幻影

.  書評 赤井?久(著)『中唐詩檀の研究』

BⅠ. 「樂天の筆力」

. 『白氏文集』流行の原因

.平安期に傳來してより盛行するに至るまで  

.先人の説  

.受容者の側から見た流行の原因  

.最近の説  

.先人諸説の再檢討  

.展望

. 「十訓抄序」と『白氏文集』

.執筆態度  

.狂言綺語觀

CⅠ. 『入唐求法巡禮行記』札記――圓仁的人物評価

. 『入唐求法巡禮行記』的文學性

.『入唐求法巡禮行記』的吸引力  

.在旅途中遇到的艱難[内容豐富詳瞻]

.文學性[文筆生動細膩]描寫力

掲載論文初出一覽・あとがき・詩人別詩題索引

 

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