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冒襄と『影梅庵憶語』の研究

冒襄と『影梅庵憶語』の研究

風流遺民“冒襄”を通して見る明末清初の文人生活!

著者 大木 康
ジャンル 中国古典(文学) > 明清
出版年月日 2010/02/10
ISBN 9784762928710
判型・ページ数 A5・540ページ
定価 本体12,000円+税
在庫 在庫あり
 

内容説明

【序章】「風流遺民」冒襄 より 

明末清初の江南を舞台に活躍した文人に、冒襄という人があった。現在では、もと南京秦淮の妓女であり、のちにその側室となった董小宛の没後、彼女の思い出を詳細に書きつづった『影梅庵憶語』によって最も廣く知られる。本書は、この冒襄と『影梅庵憶語』を中心に、明末清初の江南における文人たち、そして彼らをとりまく女性たちの生活と文學を浮き彫りにすることを目的とする。はじめに、冒襄の生涯を簡單にながめてみたい。

冒襄(明萬暦三十九年 一六一一~清康煕三十二年 一六九三)、字は辟彊、號は巣民、樸巣、如皐(江蘇)の人。韓菼の撰になる「潛孝先生冒徴君墓誌銘」(『友懐堂文藁』巻十六、また『碑傳集』巻一二六、逸民下之下にも収む)では、その前文(「墓誌銘」は前文、序、銘からなる)において、冒襄の生涯のハイライトを記している。

冒襄は名家に生まれ、明末江南にあって諸生として復社などで活躍し、ということは言いかえれば、科擧に及第できず、官職につくこともなく(推官におされたことはあったようだが)、明の滅亡の後には遺民としての生涯を送った人ということになる。韓菼の「墓誌銘」では、續く序(傳の本體部分)において、冒家代々の人物たち、冒襄の親孝行ぶり、その正妻や息子、孫たちのことを述べているのだが、韓菼がわざわざ冒頭部分において、冒襄の逝去によって「東南故老遺民の風流の餘韻が絶えた」と述べていることが注目される。若い頃の秦淮での遊びにはじまり、その生涯は美姫、風流とは切っても切れない關係にあった。

明末清初の時代には、錢謙益と柳如是、龔鼎孳と顧媚、侯方域と李香君など、當代一流の文人と妓女との交遊が一時の佳話として喧傳されていた。ここで文人冒襄の生活と、そのまわりにあった董小宛、呉扣扣、蔡含、金玥らの女性たちとの交情のさまを知ることは、この時代の風氣を知るための好材料なのである。

本書においては、冒襄について、「風流遺民」という方向から光をあててみたい。第一部は「文人としての冒襄」、第二部は「『影梅庵憶語』と女性たち」と題した。

同 『同人集』について 

冒襄には、みずから編集した『同人集』というなかなか珍しい詩文集が残されている。『同人集』十二巻は、冒襄の生涯の間に師友たちから贈られた詩文を集めた書物である。……『同人集』によってうかがわれる冒襄の交遊の幅はきわめて廣い。その一斑を示すならば、長輩としての江南文人には董其昌、陳繼儒、王思任などが、文學で知られる人には、清初詩壇における錢謙益、龔鼎孳、呉偉業の「江左三大家」、また王士稹、王琬、孔尚任、施閏章、黄周星、周亮工、曹學佺、張自烈、張潮などの名をたちどころに見出すことができるし、繪畫で知られる?壽平、王時敏、書では王譯、また復社をはじめとする政治的な關係では、魏學濂、姜垓、倪元璐、黄道周らの名を擧げることができる。藏書家の世界でも、黄虞稷、錢曾、毛晉たちがあり、ほかにも茅元儀、楊文聰、杜濬、米萬鐘、尤侗などなど、明末清初における各界の名人をほとんど網羅しているといっても過言ではない。『同人集』一書を見ることによって、冒襄がいつ、誰とどのような交際をしていたかがすぐにわかる。冒襄を研究對象として取り上げることの一つの大きなメリットがここに存するのである。

 

【内容目次】

序 章 「風流遺民」冒襄 

如皐における活動の舞臺/『同人集』について

第一部 文人としての冒襄

第一章 黄牡丹詩會

影園黄牡丹/虞山錢牧齋/黄牡丹詩集の編刊/その他

第二章 宣爐因縁

發端/寧古塔/宣爐歌/宣爐/結び

第三章 順治十四年の南京秦淮

冒襄の順治十四年/龔鼎孳の順治十四年/

錢謙益の順治十四年/余懷の順治十四年/結び

第四章 冒襄の演劇活動

觀劇の記録/活動の場――得全堂/冒襄が見た演目(阮大鋮の『燕子箋』・呉偉業の『秣陵春』・湯顯租諸作/その他)/冒襄の「家班」/結び

付論一 呉兆騫の悲劇――丁酉江南科場案と寧古塔

才子呉兆騫/父母に寄せる手紙/呉偉業の同情と怒り/

寧古塔にて/友人たちの助け

付論二 荷風のおうむ

 

第二部 『影梅庵憶語』と女性たち

第一章 冒襄『影梅庵憶語』譯注

運命の出會い――「紀遇」/遊覧の記録――「紀遊」/

性格のこと――「紀静敏」/

つつましきさま――「紀恭儉」/

教養について――「紀詩史書畫」/

趣味について――「紀茗香花月」/

飲食について――「紀飲食」/

苦難の記録――「紀同難」/看病の記録――「紀侍藥」/

死の豫兆――「紀讖」

第二章 『影梅庵憶語』について

『影梅庵憶語』の内容と構成/『影梅庵憶語』の流通と評價

/結び

第三章 陳維?「呉姫扣扣小傳

心の樂屋/神に愛でられた人/扣扣の才華/死の豫兆/

結び――春の一日

第四章 蔡夫人傅

正妻蘇氏/蔡含の誕生から輿入れまで/

蔡含の生涯における三つの大事件/蔡含と繪畫/

蔡含をめぐる文人たちの集い/結び

第五章 冒襄、『影梅庵憶語』と『紅樓夢』

『紅樓夢』の順治帝・董小宛モデル説/

囘憶文學」の一線――『影梅庵憶語』と『紅樓夢』/

通俗的才子佳人物語批判/『紅樓夢』の秋海棠/

冒襄と秋海棠

付論一 清代女流詩人と柳如是

顧媚と柳如是/顧柳書畫合璧/呉瓊仙/柳如是の墓

付論二 中國明末の妓女と文學

 

あとがき

『同人集』目録・所収詩文作者索引

索引(人名・書名)

英文要旨・中文要旨

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