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汲古叢書89 宋元郷村社会史論

明初里甲制体制の形成過程

汲古叢書89 宋元郷村社会史論

明初里甲制体制の形成と性格を宋代以来の歴史的視角から追究するはじめての試み!

著者 伊藤 正彦
ジャンル 総記・書誌 > シリーズ
シリーズ 汲古叢書
出版年月日 2010/02/19
ISBN 9784762925887
判型・ページ数 A5・416ページ
定価 11,000円(本体10,000円+税)
在庫 在庫あり
 

目次

緒 論 宋元郷村社会史研究の課題と視角

 1970年代半ば―80年代半ばの成果と次なる課題
 専制国家形態の生成要因を問う視角
「唐宋変革」-「明末清初」の歴史的展開をとらえる視角
 小論の課題


第一章 郷村制の性格
――南宋期の都保制と明代の里甲制――

 宋代郷村制論の基調と問題点
 公課負担システムからみた郷村制の性格
 明代里老人制認識の到達点と課題
 里老人制の整合的把握にむけて


第二章 “義 役”
――南宋期における社会的結合の一形態――

 義役の弊害と解体
 義役の結成過程
 台州黄巌県における義役の動向
 義役改革の基調 


第三章 元代江南の義役・助役法とその歴史的帰結
――糧長・里甲制体制成立の一側面――

 元代江南社会における義役の継承
 助役法の施行をめぐって
 歴史的帰結――義役から糧長・里甲制体制へ――



第四章 「六諭」の淵源
――元代江南の勧農文とその歴史的帰結――

 勧農文と社制
 元―明初における勧農文の特徴
 歴史的帰結――勧農文から「六諭」へ――



第五章 元末一地方政治改革案 
――明初地方政治改革のイデオロギー――

 明初の地方政治改革
 元末、趙偕の地方政治改革案
 明初地方政治改革に対する先駆性


終 章 明初里甲制体制の歴史的特質
――宋元史研究の視角から――

 明初里甲制体制の画期性――職役の「正役」化――
 元末江南の役法改革――共同就役の創出と就役期間の短縮――
 明初期における「小農自立」
 おわりに――宋―明初期の歴史的性格――


附 論 中国史研究の「地域社会論」
――方法的特質と意義――

 「地域社会論」の提起と背景
 「地域社会論」の成果と意義
 日本史研究の「地域社会論」との相違と共通性

附 録 訳注『教民榜文』

あとがき
索引
中文提要
英文目次

 

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内容説明

明朝国家が組織した郷村制――里甲制は、催税と治安維持のほか、教化・紛争解決・儀礼・相互扶助・勧農にまでわたる中国史上最も総合的な統一的人民編成であり、郷村行政等に在野の読書人・有徳者層を起用すること、郷村社会レヴェルで租税・徭役台帳(「賦役黄冊」)を作成すること、複数人戸の共同就役等によって職役負担を軽減することなど、前代の郷村制にはない機能・特質をいくつも具えていた。それは、北宋後半以来の社会問題・地方行政課題――健訟・妄告の風潮と職役負担の矛盾――の解決を図る意義を有した。本書では、こうした人民編成を「里甲制体制」(江南の場合は「糧長・里甲制体制」)とよぶ。それは、どのような過程を経て形成されたのだろうか。本書は、主として南宋・元代の郷村における社会的結合=義役の結合原理と歴史的展開、里甲制体制を支える政治的イデオロギーの歴史的由来を探ることを通して、明初里甲制体制の形成過程とその歴史的性格を論ずる。

また本書は、1970年代半ばから80年代半ばにおける日本の「唐宋変革」期研究の成果をうけて浮上した二つの新しい課題――①専制国家形態の生成要因の追究、②「唐宋変革」から「明末清初」に至る時期の歴史的展開過程の把握――に接近するための具体的試みでもある。

 末尾には、中国史研究の「地域社会論」の方法と意義を整理した学界展望、ならびに明代里甲制・里老人制研究の基本史料である『教民榜文』(全41条)の訳註を附す。

 

 

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