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懐徳堂研究 第二集

懐徳堂研究 第二集

◎懐徳堂・重建懐徳堂研究の最新成果を公刊!

著者 竹田 健二
ジャンル 日本漢学
出版年月日 2018/11/21
ISBN 9784762936425
判型・ページ数 A5・460ページ
定価 11,000円(本体10,000円+税)
在庫 在庫あり
 

目次

序章 懐徳堂研究の現在 (竹田健二)


第一部 五井蘭洲研究

第一章 大阪府立中之島図書館蔵蘭洲遺稿について (寺門日出男)
第二章 五井蘭洲『非伊編』について (寺門日出男)
第三章 五井蘭洲「『中庸』天命性図」について (湯城吉信)
第四章 五井蘭洲と中井履軒の格物致知論 (佐藤由隆)


第二部 懐徳堂の思想的特質

第一章 懐徳堂学派の『論語』解釈――「異端」の説をめぐって―― (湯浅邦弘)
第二章 中井履軒にとっての「命」――『論語原』の程注批判から―― (藤居岳人)
第三章 尾藤二洲の朱子学と懐徳堂の朱子学と (藤居岳人)
第四章 儒者と寛政改革と (藤居岳人)
第五章 中井履軒の服喪説
       ――『服忌図』と「擬服図」との成立過程及びその特色―― (黑田秀教)
第六章 尽くは書を信ぜざる儒者――中井履軒の経書観―― (黑田秀教)
第七章中井履軒の忠孝観――忠孝背反事例を中心に―― (佐野大介)
第八章 懐徳堂の「不孝有三無後為大」解釈 (佐野大介)


第三部 幕末期の懐徳堂

第一章 並河寒泉の陵墓調査――幕末懐徳堂教授の活動―― (矢羽野隆男)
第二章 幕末懐徳堂の情報環境――島津久光の率兵上洛を中心に―― (矢羽野隆男)


第四部 懐徳堂資料の継承と顕彰運動

第一章 中井木菟麻呂が受け継いだ懐徳堂の遺書遺物
          ――小笠原家に預けられたものを中心に―― (竹田健二)
第二章 中井木菟麻呂宛「西村天囚書簡」の基礎的検討 (池田光子)
第三章懐徳堂文庫新収資料中の大田源之助旧蔵資料 (竹田健二)


第五部 懐徳堂資料のデジタルアーカイブ化

第一章 書簡と扇のデジタルアーカイブ――懐徳堂文庫の取り組み―― (湯浅邦弘)
第二章 懐徳堂文庫所蔵「版木」のデジタルアーカイブ (湯浅邦弘)

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内容説明

【序章より】

 懐徳堂は、「五同志」と呼ばれる大坂の大商人らによって享保九年(一七二四)に設立され、その後百四十年あまり活動を続けた「学校」である。懐徳堂は享保十一年(一七二六)に江戸幕府による官許を得て、その後はいわば半官半民の学校として近世大坂の文教を担った。学主や助教として三宅石庵・五井蘭洲・中井甃庵・中井竹山・中井履軒らが、また門人として山片蟠桃・富永仲基・草間直方らが活躍したことはよく知られている。
 明治二年(一八六九)に懐徳堂は閉鎖されるが、明治四十三年(一九一〇)に懐徳堂記念会が設立され、同会は明治四十四年(一九一一)十月五日、大阪公会堂において懐徳堂記念祭を盛大に挙行した。大正二年(一九一三)、懐徳堂記念会は財団法人として認可され、大正五年(一九一六)には重建懐徳堂と称される講堂を建設した。この重建懐徳堂においては、松山直蔵をはじめとする専任の教授・助教授・講師に加えて、京都帝国大学等から招かれた講師が多数の講義・講演を行った。昭和二十年(一九四五)三月に大阪大空襲によって焼失するまで、重建懐徳堂は戦前の大阪における文科大学・市民大学として機能したのである。
 懐徳堂研究会は、このように近世から近代にかけて大阪における文教の拠点として長く重要な位置を占めた懐徳堂と重建懐徳堂とを研究対象として、日本漢学におけるその思想史的位置の解明に取り組む共同研究組織である。大阪大学大学院の湯浅邦弘教授を中心として二〇〇〇年に設立された本研究会は、その設立後、懐徳堂関係資料の総合調査や解題の作成、或いはデジタルアーカイブ化などの事業に取り組んできた。そして、その活動の中で研究会メンバーが執筆した論文の中から特に精選されたものを収録し、日本学術振興会平成十九年度科学研究費補助金(研究成果公開促進費)を得て刊行したのが、湯浅邦弘編著『懐徳堂研究』(汲古書院、二〇〇七年)である。本書『懐徳堂研究 第二集』は、この『懐徳堂研究』刊行後、懐徳堂研究会が更に共同研究を継続する中で構想されたものであり、懐徳堂・重建懐徳堂に関する最新の研究成果である。(中略)
 本書の構成は、以下の通りである。
 先ず第一部は「五井蘭洲研究」である。「懐徳堂の総合的研究」による研究成果の中で特筆すべきものの一つは、五井蘭州関係の資料調査の進展を踏まえた、初期懐徳堂の学問の実態の解明である。大阪府立中之島図書館に収蔵されている『質疑篇』・『蘭洲先生遺稿』等が蘭洲自筆の資料であるかどうか、また従来『非物篇』と並んで蘭洲の代表的著述の一つとされながらも実態が不明であった『非伊編』とは何か、といった諸問題の解明が大いに進展した。
 第二部は、「懐徳堂の思想的特質」と題し、懐徳堂の全盛期とも言うべき中井竹山・履軒兄弟等が活躍した時期に関する論考九編を収録した。
 第三部は、「幕末期の懐徳堂」である。懐徳堂の最後の教授として活躍した並河寒泉が、幕末という大きな社会的変動の中でどのような活動を展開したのか、また懐徳堂が大坂の知的拠点としてどのような機能を果たしていたのかについて論究した。
 第四部は「懐徳堂資料の継承と顕彰運動」である。「懐徳堂の総合的研究」によるもうひとつの特筆すべき成果が、懐徳堂の閉鎖後に、懐徳堂関係の資料がどのように伝承されたのかについて、従来注目されてこなかった資料の調査結果を踏まえて解明が進んだ点である。懐徳堂の閉鎖後から明治の末以降の懐徳堂顕彰運動の隆盛までの間は、これまでいわば空白の時期であった。その四十年間に、大田源之助など、これまでほとんど注目されることの無かった人物が、資料の保存や蒐集といった面で重要な役割を果たしていたことが明らかになりつつある。また、西村天囚関係の新資料も発見されている。
 第五部は、「懐徳堂資料のデジタルアーカイブ化」である。デジタルアーカイブ化の進展は人文科学研究に多大な影響をもたらしつつあり、懐徳堂関係資料のデジタルアーカイブ化の一層の進展は、今後懐徳堂研究の裾野を大きく広げるものと期待される。そこで前著『懐徳堂研究』には無かった要素として、特に本書にこの部を加えた。
 以上のように、「懐徳堂の総合的研究」により、懐徳堂・重建懐徳堂に関する資料の調査・整理は進展し、そして初期懐徳堂における学問の実態や、懐徳堂顕彰運動の実態について、従来の研究では十分には解明されていなかった問題の解明が大きく進みつつある。
 「懐徳堂の総合的研究」の成果を集約した本書が、今後の日本漢学史、或いは広く近世から近代にかけてのアジアの歴史研究に資するものとなれば幸いである。

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