ホーム > 汲古叢書151 朝鮮王朝の対中貿易政策と明清交替

汲古叢書151 朝鮮王朝の対中貿易政策と明清交替

汲古叢書151 朝鮮王朝の対中貿易政策と明清交替

◎16世紀末から17世紀半ばに至る、明清交代時期における朝鮮の対明清貿易政策の実態に迫る

著者 辻 大和
ジャンル 東洋史(アジア)
東洋史(アジア) > 明清
東洋史(アジア) > 朝鮮
シリーズ 汲古叢書
出版年月日 2018/02/20
ISBN 9784762960505
判型・ページ数 A5
定価 8,800円(本体8,000円+税)
在庫 在庫あり
 

目次

序 論

第一章 一七世紀初頭朝鮮の対明貿易―初期中江開市の存廃を中心に―
 一 壬辰・丁酉の乱後、朝鮮の対明貿易の展開   
 二 中江開市の継続要因
 三 中江開市の問題点              
 四 燕行使貿易をめぐる明・朝鮮間の摩擦

第二章 朝鮮の対日通交再開と朝明関係
 一 日朝通交の再開過程と貿易          
 二 明からみた日朝貿易
 三 明の干渉の背景―琉球侵攻の影響―

第三章 一七世紀初頭の朝明貿易と人蔘政策
 一 一六世紀末以降の中国向け人蔘輸出拡大と朝鮮における人蔘流通
 二 人蔘調達難の要因と朝鮮政府の取締策
 三 人蔘取引取締策の通時的意義

第四章 一七世紀朝鮮・明間における海路使行と貿易の展開
 一 海路使行の実施状況             
 二 海路使行にともなう貿易の拡大
 三 海路使行の諸問題              
 四 朝鮮・明政府による密貿易対策

第五章 朝鮮の対後金貿易政策
 一 朝鮮・後金間における貿易の形態       
 二 朝鮮政府の対後金貿易政策
 三 朝鮮の対後金貿易政策の背景

第六章 丙子の乱後朝鮮の対清貿易について
 一 朝貢と開市    
 二 朝貢と開市によらない貿易    
 三 密輸とその対策

結 論

初出一覧
参考文献一覧
あとがき
索引


図表一覧
第二章 表1 一五九〇年代末~一六一〇年代における明官の釜山訪問歴
第三章 表1 一七世紀初頭に朝鮮使節が明皇室に献上した人蔘の数量
      表2 万暦癸丑(一六一三年)版『攷事撮要』にみる人蔘産地の分布
      表3 一七、一八世紀の諸法令における人蔘商人取締規定の比較
第四章 表1 海路による対明使行一覧
      表2 本章で用いる使行録一覧
      表3 対明使行時の船隻数
      表4 仁祖元(一六二三)年使行時の船別、人員配置
      図1 朝鮮の対明使行路の変遷
第五章 表1 歳幣の品目一覧
      表2 天聡九年(一六三五年)中における越境採蔘事件一覧
第六章 表1 定期的な進貢方物の一覧
      表2 崇徳二(一六三七)年当初の歳幣額
      表3 平安道 軍官の往来状況(仁祖一五(一六三七)年)

このページのトップへ

内容説明

【序論より】(抜粋)

 本書は一七世紀前半における朝鮮の対明清貿易政策の展開について論じる。朝鮮国王は明清の皇帝から冊封を受け、毎年定期的に朝鮮から明清へ使節を派遣した。そのため、朝鮮は明清から政治上大きな影響を受けた。一七世紀前半の時期は明から清へ王朝が交替する時期にあたり、一九世紀末まで朝鮮をとりまく国際環境の基礎が形成される時期であることから注目される。ただ後述するように朝鮮の対明清関係に関する研究において、貿易政策に関する分野は未だ課題が多い。例えば朝鮮は貿易によって銀や、薬材といった貴重な物資を明清から入手することができたが、その輸入のために使節団の貿易や国境地帯での貿易を朝鮮王朝がどのように管理していたのかということは明らかでない。第一の課題としては、朝鮮からみた開市と朝貢の違いに対する分析が深められていないことがある。第二の課題としては一七世紀対明貿易に関する研究において、光海君一三年以降、朝鮮が明と海上通交を行った時期がほとんど取り上げられていないことがある。近年は朝鮮と明の海上通交に関する研究も盛んであるものの、そこでは貿易の問題がほとんど取り上げられておらず、貿易研究上の空白時期となっている。第三の課題としては、朝鮮の対後金(清)貿易政策がほとんど明らかになっていないことがある。第四の課題は、一七世紀前半朝鮮の対明関係が日朝通交にどう影響したかが明らかになっていないことである。(中略)

 本書では一六世紀末から一七世紀半ばに至るまでの明清交代の時期における、朝鮮政府の対明清貿易政策の展開を明らかにするために、前述の課題に沿って通時的に貿易政策を検討する。第一章では第一の課題を検討する。壬辰・丁酉の乱後、一五九〇年代から一六一〇年代にかけて朝鮮が中江開市と燕行使貿易に対してとった立場の形成過程と背景を明らかにする。まず朝鮮が対明貿易をどのように進行させたのかを、中江開市に重点をおいて考察し、次に燕行使による貿易活動が継続した一方で、開市(互市)が廃止にいたる過程を検討する。そして中江開市と燕行使貿易が持っていた問題に対する朝鮮政府の施策を明らかにする。第二章では第四の課題である、朝明関係が己酉約条以降の日朝通交に及ぼした影響について考察する。一五九〇年代から一六一〇年代の日朝貿易において朝明関係がどのように作用し、朝鮮政府が対策を行っていたかを中心に論じる。まず日朝通交が再開した過程について整理した上で、明からみた日朝貿易の問題点について論じ、明が行った日朝通交への干渉の背景について、琉球侵攻の影響を中心に論じる。第三章では、第一の課題に関係した、朝鮮政府による貿易政策の具体例を考察する。一五九〇年代から一六〇〇年代における朝鮮政府の輸出商品であった人蔘の輸出管理問題を取り上げる。中国への人蔘輸出が盛んに行われた一六〇〇年代において、朝鮮政府による人蔘取引への取締政策が具体的にどのように形成され、その後どのような経緯により定立したのかを解明する。第四章では一六二〇年代から一六三〇年代にかけての海路使行と貿易の問題(第二の課題)の実施状況について、使行経路の変遷経緯および使節団の構成と使行船を中心に整理した上で、海路使行にともなう貿易の拡大を論じ、海路使行により生じた諸問題を考察する。そして問題への対処策として朝鮮と明政府による密貿易対策を分析する。第五章は、第三の課題の前半として仁祖六(一六二八)年以降、仁祖一五年まで朝鮮が後金(清)に対してとった貿易政策を明らかにする。まず朝鮮・後金(清)間の貿易の展開過程の開市、使節貿易など形態別に整理する。そして開市をめぐる朝鮮政府の具体的な政策を分析し、朝鮮政府の貿易政策の背景を論じる。第六章は第三の課題の後半(仁祖一五(一六三七)年以降)として、丙子の乱後、明滅亡(仁祖二二年)までの間、朝清間の朝貢や開市などの公式な貿易、密貿易を含め、どのような貿易政策を朝鮮政府がとったのかを考察する。まず朝清間における朝貢と開市の展開過程について整理した上で、朝鮮が行った朝貢と開市以外の貿易について考察し、そのような貿易を朝鮮政府がどのように成立させたのかを知るために、朝鮮と清間における官員の往来について考察する。そして密輸問題と朝鮮政府の対策、その影響について論じる。

このページのトップへ