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呉趼人小論

―'譴責'を超えて

呉趼人小論

魯迅が命名した'譴責小説'、その本来の意味を新事実を交えて再考する

著者 松田 郁子
ジャンル 中国古典(文学)
中国古典(文学) > 近現代
出版年月日 2017/12/12
ISBN 9784762966026
判型・ページ数 A5・264ページ
定価 7,700円(本体7,000円+税)
在庫 在庫あり
 

目次


序 論 ― 中国小説史上における呉趼人の位置づけ

第一章 清末小説と呉趼人

  第1節 中国文壇における清末小説研究  
  第2節 呉趼人評価
  第3節 '譴責'の意味

第二章 創作姿勢と生涯

  第1節 一族の落魄と国家の危機  
  第2節 愛国、救亡
  第3節 女性性の視点

第三章 《写情小説》創始の意義

  第1節 清代の女性の結婚  
  第2節 呉趼人《写情小説》―恋愛描写の試み

第四章 《写情小説》における女性性の構築
  
  第1節 翻案外国《写情小説》「電術奇談」―恋と自己発現
  第2節 翻案中国《写情小説》「情変」―恋と自己実現

第五章 《社会小説》―'暗黒世界'の'魑魅魍魎'

  第1節 "悪党"原体験―梁鼎芬と洪述祖  
  第2節 清末の社会悪
  第3節 呉趼人の価値観

第六章〈理想科学小説〉『新石頭記』における'救世'
  
  第1節 '理想科学'世界における'文明'探究
  第2節 『新石頭記』における"ユートピア"追求

第七章「上海遊驂録」における'厭世'
  
  第1節 '厭世主義' と'恨み'について  
  第2節 '救世の想い'の行方   

第八章 梁啓超との関係

結論  

註  

呉趼人略歴  

作品年表 
 
初出一覧  
参考文献  
索引

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内容説明

【序論・第一章より】

清朝最後の十年間に新聞雑誌をはじめとする新たな出版業態を背景に盛行した小説を一般に清末小説或いは晩清小説と呼ぶ。呉趼人(1866-1910)は作品数、影響力ともに清末を代表する作家であったが、辛亥革命以降あい続き湧出した政治運動、文学運動の潮流に措き去られ、その人と作品についての全面的研究は二十世紀末年からようやく始まった。

文革終結後、多くの論者が作品分析、再検討を試みたその結果、政治思想面で後れた《社会小説》、社会意義に乏しい《写情小説》という評価が定論とされている。その根拠をなしているのは、鴛鴦胡蝶派小説の隆盛をもたらした写情小説、革命派を批判した「上海遊驂録」、旧道徳を称揚した「新石頭記」である。筆者は呉趼人の《社会小説》、《写情小説》各作品を考察する作業を進める過程で、幾つかの新発見を得た。……

さらに呉趼人作品の解析を進めながら、従来の評価を再検討していきたい。

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