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汲古叢書131 清代文書資料の研究

汲古叢書131 清代文書資料の研究

◎清末まで流通し機能した満洲語文書の役割と、それを可能にした清朝の文書システムを解明する!

著者 加藤 直人
ジャンル 東洋史(アジア)
東洋史(アジア) > 明清
シリーズ 汲古叢書
出版年月日 2016/02/25
ISBN 9784762960307
判型・ページ数 A5・448ページ
定価 13,200円(本体12,000円+税)
在庫 在庫あり
 

内容説明

 

【本書より】(抜粋)

 

本書は、中国清代の文書資料について、その歴史的な変遷、特徴について考察したものである。

清代の文書資料の特徴のひとつとして、清朝の「国語」である満洲語文書が多く存在することである。従来、満洲語文書については、清朝の中原進出以前すなわち1644年以前の研究に多く用いられてきた。ただ、清朝の中原進出以後においても、「国語」満洲語は、通信、記録手段として幅広く用いられ、清朝の統治・支配貫徹にきわめて有効に機能しており、厖大な数の満洲語文書が残されている。

 それではなぜ清末にいたるまで、このように多くの満洲語文書が流通し、かつ機能していたのであろうか。この理由をあきらかにするためには、政務遂行上必要な「言語」としての満洲語の位置、また漢語文書との関係を正確にとらえる必要がある。すなわち、乾隆中期以降の満洲語文書の存在を、単に「満缺」等に属する人々の「義務的な所産」として矮小化して捉えるのではなく、外交、藩部関係、「辺疆」政策、旗務、旗人生計等、清朝の基本構造に係わる場面に登場する満洲語文書のもつ意味について、漢語資料との関係をも含め具体的な検討を加えていく必要がある。

 本書では、清朝における文書資料の特質を大きく分けて三つの側面から検討した。ひとつは、清朝において、満洲語だけでなく漢文を含めた各種言語で記された「文書」が、どのように出現し、かつ歴史的に展開されてきたのか、またそれらの「文書」によって編纂された「史書」はどのような性格を有するものかというものである。

 もうひとつは、19世紀以降に作成された清代の文書資料の特徴に関する検討である。ここでは、天理大学附属天理図書館(以下「天理図書館」)に所蔵されるいわゆる「辺疆」檔案をもとに、清朝文書の変遷、とくにいわゆる「辺疆」地区における清末の満洲語文書のもつ特徴、そしてその意味について考察するものである。

 そして、もうひとつの側面は、清代の宮中、また旗人間といった空間で作成されたさまざまなかたちの文書に関わる検討である。具体的には、清代「史書」の編纂過程において利用された文書、また「宮中儀礼」に係わる檔案類、そして「旗人」の入植に関する資料について考察する。そして特殊な事例として、清末光緒年間に提出された満洲語「直訴文」等についても触れる。

 なお、「附篇」として付したものは、本書第1部第3章で紹介した「逃人檔」の和訳である。漢語による一部翻訳はあったが、全文のローマナイズと翻訳は本訳が最初である。

(「序章」「終章」より構成)

 

【内容目次】

 序章 清代文書資料と満洲語

第1部 入関前清朝における文書制度の展開と「史書」の編纂                   

 第1章 入関前清朝文書資料に関する学説史的検討

 第2章 八旗値月檔と清初の記録

  第3章 清初の文書記録と「逃人檔」

第2部 19世紀以降における清朝文書制度の展開

         ―天理図書館所蔵の清朝檔案群を例として―

  第1章 天理図書館所蔵「伊犂奏摺稿檔」について

 第2章 天理図書館所蔵「伊犂奏摺」について

  第3章 天理図書館蔵、グキン(固慶)の奏摺について

      ―とくに科布多参賛大臣時代の奏摺を中心として―

第3部 清朝の文書の多様性――宮中、旗人、私文書――

  第1章 清代起居注の研究

  第2章 嘉慶帝の即位と皇后の冊立

           ―「嘉慶元年冊封皇后貴妃妃嬪檔」の分析をとおして―

  第3章 清代双城堡の屯墾について

           ―咸豊元年の副都統職銜総管設置をめぐって―

  第4章 19世紀後半、オロチョン人の編旗とブトハ問題

  終章 清朝文書資料の地平   

附篇  「逃人檔」訳注

参考資料、引用文献/初出一覧/あとがき/索引(事項・人名・地名)

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