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汲古叢書120 秦漢官文書の基礎的研究

汲古叢書120 秦漢官文書の基礎的研究

◎法律や制度は現実にはどのように運用されていたのか、膨大な簡牘資料を分析しその実態を明らかにする

著者 鷹取 祐司
ジャンル 東洋史(アジア)
東洋史(アジア) > 殷周秦漢
シリーズ 汲古叢書
出版年月日 2015/03/23
ISBN 9784762960192
判型・ページ数 A5・772ページ
定価 17,600円(本体16,000円+税)
在庫 在庫あり
 

内容説明

【主要目次】

序 言

第一部 秦漢官文書の種類と用語

 第一章 漢代官文書の種別と書式

  第二章 秦漢官文書の用語

第二部 文書の傳送

  第一章 漢代の詔書下達における御史大夫と丞相

  第二章 秦漢官文書の下達形態

  第三章 漢代の文書傳送方式

  第四章 漢代懸泉置周邊の文書傳送

  第五章 漢代居延・肩水地域の文書傳送

  第六章 文書の宛名簡

第三部 斷獄の文書

  第一章 漢代の擧劾文書の復原

  第二章 斷獄手續きにおける「劾」

第四部 聽訟の文書

  第一章 漢代邊境における債權回收手續き

  第二章 證不言請律と自證爰書の運用

 第三章 「前言解」の意味と尋問命令の再録

  第四章 「候粟君所責寇恩事」册書の再檢討

  第五章 漢代の聽訟

結 語

あとがき/中文提要/索 引

【序言】より(抜粋)

凡郡國一百三、縣邑千三百一十四、道三十二、侯國二百四十一。地東西九千三百二里、南北萬三千三百六十八里。提封田一萬萬四千五百一十三萬六千四百五頃、『漢書』 卷二八下 地理志下『漢書』地理志に記す平帝期の漢帝國の郡國數と領域および戸口數である。漢帝國では、たった一人の皇帝が、これほど廣大な領土のこれほど多くの縣邑道侯國に分かれて住む六千萬弱もの人々を統治していたのである。その統治を支えていたのが、丞相以下佐史に到るまで十二萬人を超える官吏であった。漢皇帝は、この膨大な數の官吏を自分の手足としてうことによって、巨大な帝國を治めていたのであり、それは秦帝國においても同じであった。實際の人體で言えば、手足を動かすためにはその筋肉を收縮させるための榮養と酸素が必である。しかし、榮養と酸素だけで手足が動くわけではなく、動きをコントロールする神經信號が傳わって初めて動く。漢皇帝が官吏を手足の如く使う際も同樣で、官吏を動かすための榮養と酸素は官吏への俸給やさまざまな賜與にあたろう。動きをコントロールする神經信號に當たるのが、皇帝などからの命令に他ならない。そして、その命令は、簡牘に文字で記された文書という形で帝國内に散在する官吏に傳えられたのである。本書において考察對象とする官文書は、秦漢兩帝國にとって如上の重要性を持つものであり、それ故、秦漢史研究にとっても極めて貴重な料といえる。ところが、周知のように、典籍史料の中に現存する官文書は『史記』三王世家くらいであって、石刻資料も乙瑛碑や張景碑など數點を數えるに過ぎない。そのような料況を大きく變化させたのが簡牘資料の出現であった。本書は、簡牘資料を主たる材料として、秦漢時代官文書の書式や用語について考察を加え、秦漢官文書理解の基礎を確立することを目指すものである。

  二十世紀初頭の敦煌漢簡の發見以來、秦漢時代の簡牘は數多く發見されており、現在では秦漢時代史研究に不可缺の史料群となっている。秦漢簡牘の史料的重性はその數量の多さだけでなく、それらの多くが長城烽燧遺址や官衙址などから出土したものであるために多量の官文書を含んでいる點にもある。敦煌漢簡や居延漢簡の發見によって、漢代の文書行政の具體像が明らかにされるようになったが、それは何より漢簡が實際の行政の中で使用された文書や簿籍の實物であったことによる。・・・一九九〇年代以降、邊境の長城烽燧遺址以外の場所からも大量の秦漢簡牘が發見され、それらが公表され始めるに及んで、それ以前の簡牘解釋に對して少なからざる疑義が提示されるようになってきた。これは、とりもなおさず、簡牘資料の質的量的増加によって、より正確な解釋ができるようになったということを意味するものである。

 本書は、秦漢簡牘の發見・公表および研究をめぐる如上の状況を承けて、簡牘資料に含まれる秦漢官文書について、從來の解釋を檢證しより正確な理解を追究するものである。全體は四部構成で、第一部と第二部では官文書の書式や用語、文書傳送について考察を行い秦漢官文書に對する基本的な理解を確立することを目指し、第三部と第四部では訴訟關係の官文書を取り上げ漢代における訴訟手續きの具體像を解明することを目指す。

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