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東アジア交流史のなかの遣唐使

東アジア交流史のなかの遣唐使

◎遣唐使に関わる諸史料の評価を定め、世界的視野から遣唐使の全貌を明らかにする

著者 河内 春人
ジャンル 東洋史(アジア)
東洋史(アジア) > 魏晋隋唐
日本史
日本史 > 古代
日本史 > 中世
出版年月日 2013/12/18
ISBN 9784762942129
判型・ページ数 A5・340ページ
定価 8,800円(本体8,000円+税)
在庫 品切れ・重版未定
 

目次

序章 本書の視角と構成
一 本書の視角  二 本書の構成  三 遣唐使における留意点
Ⅰ 遣唐使の機構
第一章 遣唐使の派遣動機
問題の所在
一 遣唐使以前
1対魏外交 2対宋外交 3対隋外交 4小結
二 外交における年期
1礼制における年期とその受容 2日本古代の年期 3日唐関係における年期
結 言
第二章 七世紀における遣唐使の組織構成
問題の所在
一 前史としての遣隋使
二 遣唐使の派遣
三 使職の名称と構成
四 使人と冠位
結 言
第三章 律令制下における遣唐使の組織構成
 問題の所在
一 使節構成とその位階
二 節刀をめぐる使節構成
三 特殊使節の位相
結 言
Ⅱ 国際社会の中の遣唐使
第四章 入唐僧と海外情報
問題の所在
一 七・八世紀の海外情報
1七世紀の海外情報 2八世紀の海外情報 3小結
二 九世紀の海外情報
三 入唐僧の情報伝達
結 言
第五章 日唐交流史における人名
問題の所在
一 七世紀の隋唐における倭国人名
1隋における倭国人名 2唐における倭国人名 3小結
二 八世紀の日本人名
三 唐からの名付け
四 非公式の位相
結 言
第六章 石山寺遺教経奥書をめぐって
問題の所在
一 人名部分の釈読
二 奥書の解釈
三 天平遣唐使の動向
結 言
Ⅲ 史料論としての遣唐使
第七章 唐から見たエミシ
問題の所在
一 中国史料におけるエミシ
二 唐への来朝年次
三 エミシの地理・風俗情報
四 媒介国としての倭国/日本
結 言
第八章 『新唐書』日本伝の成立
問題の所在
一 中国における日本情報の収集
二 『王年代紀』との関係
三 唐代からの伝来情報
四 倭国伝から日本伝へ
結 言
第九章 『王年代紀』の史料論
問題の所在
一 成立の時期と執筆動機
二 書名
三 神統譜の背景
結 言
総括と展望   あとがき/初出一覧/索 引

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内容説明

【本書より】(抜粋)

  遣唐使はもっとも人口に膾炙されたテーマのひとつである。しかし、そこで語られる内容は日唐間にお ける外交交渉の過程としての政治史であり、あるいは正倉院宝物等の文物に代表されるような文化史がほとんどである。遣唐使は往来の具体的様相として捉えられ、遣唐使を通して東アジアや、惹いてはシルク

ロードにおいて人やモノの行き交うその動態に注目が集まってきたといえる。それは換言すれば、遣唐使というフィルターを通した政治史・文化史の研究であった。現段階での遣唐使研究は個別の派遣やテーマについては成果を挙げているが、それを整理・統合して遣唐使全体のなかで問題点の所在を明確にする必要がある。遣唐使の全貌を明らかにするためには、外交史的な視角だけではなく、遣唐使がどのような全体像を有し、いかなる時代的変遷を経たのか、さらにはその政治的・経済的・文化的・社会的背景に何があったのか、日本古代史や唐代史と関連づけてそれらの課題を追究する必要があるといえる。そして何よりも、歴史学という立場においては遣唐使に関わる諸史料の評価を定めていかなければならない。これまでの遣唐使研究には一種の制約があった。それは、先述のように研究が基本的には日本史の範疇において対外関係史の一環として進められてきたことである。そのため「遣唐使」といえば日本が派遣した外交使節とする暗黙の了解がある。しかし、それは決して自明ではない。そもそも遣唐使というネーミングは日本に限られるものではなく、諸外国が唐に使節を派遣すればそれは須く遣唐使のはずである。しかし、そうした世界史的視野を有するテーマであるにも関わらず、日本に限られてしまうことによって本来遣唐使というテーマが持つべき多様性が損なわれている。そしてそのような視線の根源にあるのは、日本史という一国史的観点に基づいて世界を把握しようとする視野狭窄である。しかし、遣唐使が外交使節である以上そこには複数の視線が交錯するのであり、一国史的な観点のみで語られるべきではない。日本の遣唐使と諸国の遣唐使の比較は、世界史の構築にとって有効であることは疑いない。また、遣唐使というフィル

ターを通して、日本から見た唐と唐から見た日本という双方向的な視点が確保されるのであり、さらにはそれ以外の諸国との関係も視野に収めて、それが日唐関係にいかに反映したのかという多角的・複合的な分析視角を有することが可能となる。そこで本書では、日本の対外関係史を構成要素の一つとする、東アジアあるいはそれよりも広域的な世界という国際関係のなかにおける遣唐使という視角を検討のバックグラウンドとして設定する。

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