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革命の儀礼

――中国共産党根拠地の政治動員と民俗――

革命の儀礼

◎中国共産党とその根拠地に関する諸問題を、時間・象徴・民俗に焦点をあて考察する

著者 丸田 孝志
ジャンル 東洋史(アジア)
東洋史(アジア) > 近現代
出版年月日 2013/08/29
ISBN 9784762965098
判型・ページ数 A5・360ページ
定価 9,900円(本体9,000円+税)
在庫 在庫あり
 

内容説明

【序章 問題の所在と本書の課題より】(抜粋)

本書は、日中戦争期から国共内戦期における時間・象徴・民俗とこれらに関わる信仰を使用した政治権力の政治宣伝・動員工作を、主に中国共産党(以下、中共)の根拠地を中心に検討するものである。

 中国が近代化路線へと転換し、文化大革命のもたらした混乱が明らかになり、革命史観の存立基盤が失われていく中、多くの研究者の関心は中共とその根拠地研究から離れ、研究対象は統治権力を含む様々な政治勢力、社会集団などにも広がるとともに、長期的な政治・経済・社会の変化に着目する研究が主流となっていった。この間、中共とその根拠地の歴史を中国近代政治史、社会経済史の流れの中に位置づける諸研究によって、革命史観は相対化されてきたが、現実の政治と社会の大きな転換は、「革命はいかにして成功したか」を問うことの魅力を失わせ、研究の関心はむしろ「現実には何が起こったのか」を問い直すことへと変化した。同時に、研究者は革命の負の側面にも向き合わざるを得なくなった。現在の中共とその根拠地に関する諸問題は、飛躍的に発展した中国近代史研究の諸領域の中で改めて位置づけ直され、伝統社会と近代化、国家建設、国民統合、地域の統合など様々な枠組みの中で研究されるようになっている。このような状況に加えて、比較革命研究の進展と地域ごとの革命運動の実証的研究の発展により、革命権力のリーダシップと農民の利益の本来的な一致の可能性は否定されるとともに、様々な階層、社会集団の革命に対する対応の重要性が確認されるようになり、研究者の関心は、伝統的な社会関係や心性の強固な継続を認めながら、人々がその中で権力や革命とどのように向き合うかという問題に集まるようになった。また、革命に対抗した諸統治権力や社会集団の国家統合、近代化への貢献などが再評価されるにつれて、中共研究は、改めて中共の権力掌握の意味を説明する必要に迫られているが、実証研究の進展は地域の文脈に即した様々な革命像を提供しているものの、中国革命の全体像を提示することは困難になっているとも指摘されている。

本書が政治動員分析において取り上げる時間、象徴、民俗の問題は、中国近代史研究において近年急速な発展の見られる社会史研究のテーマの一部分であり、中共根拠地の研究においては、これまで相対的に重視されてこなかった分野である。政治権力と社会を人々の生活感覚によって結ぶこれらの事象は、中共根拠地社会の伝統と近代化、社会統合、政治動員などについて考える際にも無視できない重要な問題である。

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