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汲古叢書116 明清史散論

汲古叢書116 明清史散論

◎未発表稿「客家系棚民の一事件」を含む、長年の明清史研究の集大成なる!

著者 安野 省三
ジャンル 東洋史(アジア)
東洋史(アジア) > 明清
シリーズ 汲古叢書
出版年月日 2013/11/25
ISBN 9784762960154
判型・ページ数 A5・392ページ
定価 12,100円(本体11,000円+税)
在庫 在庫あり
 

目次

第一部 清代、地方官の生き様
杜甲の身辺     王穆の西郷県志
第二部 棚民とその周辺
 棚民と学校・科挙  棚民を詠んだ三つの詩篇  客家系棚民の一事件  清朝中期、秦嶺の民俗
第三部 嘉慶白蓮教乱諸相
 清代の農民反乱   中国の異端・無頼     厳如熤と白蓮教乱
第四部 明末清初、湖広の経済社会
明末清初、揚子江中流域の大土地所有に関する一考察
「湖広熟すれば天下足る」考          明代、川陝・湖広地方の茶の生産者と商人層
第五部 付 録
 地主の実態と地主制研究の間   書評・J・H・COLE 「Shaohsing」(紹興)
畬族、瑤族、客家、棚民     譚其驤主編『中国歴史地図集』沿革   北京の書肆
初出一覧/索 引

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内容説明

本書は著者が一九六〇年代から一貫して研究対象としてきた明清史諸問題の集成である。

第一部は、清代前期の二人の地方官である杜甲(河北河間府知府)と王穆(陝西西郷県知県)を俎上にのぼせ、二人が職責を完うするさいに介在した人物に焦点を当てている。杜甲は経済官僚の性格が色濃く、彼に群がった高級官僚・詩人・幕友等に注目した。王穆は清初の漢中府への移住現象の中で、彼が川陝総督鄂海を後盾に、法令の制約と湖広地方官の妨害をくぐり抜けながら移民招致に奮闘する姿を追った。

  第二部は被差別民である棚民の諸相を取り上げている。棚民は上流階級への登竜門である科挙・学校にも挑戦し、部厚い障壁を突き破った。棚民が科挙・学校に参加できたという考証は独創性をもつ。「客家系棚民の一事件」は未発表稿である。乾隆年間、江西の一事例。客家系棚民張嘉隆が山林伐採のさい不本意に一僧侶を死亡させた事件をめぐって、知県・巡撫・按察使が採択した対応と処罰である。そこには、棚民への理不尽な差別が厳存した。「棚民を詠んだ三つの詩篇」「清朝中期、秦嶺の民俗」は、厳如熤の詩作を軸として、主に秦嶺山脈で悪戦苦闘する棚民を描いた。加えて、江西・浙江の山間部を詠んだ詩篇も紹介する。詩篇を介して現実をどう把えることができるのかという命題への方法論的試作でもある。

  第三部は嘉慶白蓮教乱を素材として、農民反乱の様相を考察した。同時に清代社会を舞台とする正統・異端を瞥見する。

第四部の「明末清初、揚子江中流域の大土地所有に関する一考察」は、五、六〇年代学界を風靡した地主制研究の一環である。「湖広熟すれば天下足る」考は、この有名な諺言の本質に迫ろうとした。

  第五部はまず学界動向・書評。次は南方の畬族・瑤族と客家・棚民との関係。名著『中国歴史地図集』全八冊の成立経緯と北京の書肆についての随筆へと続く。

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