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汲古選書 49 中国文学のチチェローネ

中国古典歌曲の世界

汲古選書 49 中国文学のチチェローネ

廓かよいの遊蕩児が小脇に抱えた小唄の本を通して、中国古典歌曲の世界に誘う!

著者 高橋文治
ジャンル 中国古典(文学) > 唐宋元
シリーズ 汲古選書
出版年月日 2009/03/31
ISBN 9784762950490
判型・ページ数 4-6・300ページ
定価 3,850円(本体3,500円+税)
在庫 在庫あり
 

内容説明

チチェローネとは、案内人・ガイドブックを意味するイタリア語で、19世紀スイスの碩学ブルクハルトがイタリア・ルネサンスの芸術を紹介する書籍の表題として用いたものです。従来の中国文学史は、詩・詞・曲を別々のジャンルとして区別し、それぞれに美の回廊を設けてその歴史を叙述してきました。本書は、その回廊を縦断するいくつもの意外な順路を設け、三者が交錯する新しい案内板を立ててみました。ガイドのように見せながら、確かな鑑識眼で芸術の歴史を解説したブルクハルトの顰に倣って、本書を『中国文学のチチェローネ』と名付けてみました。「十大曲」の一首一首を頼りに、中国の詩歌の回廊を散策してみましょう。

 

【本書より】 

『中国文学のチチェローネ』と題した本書が取り上げるのは、風流王煥が懐に忍ばせたという「十大曲」である。(「南戯」で「風流王煥」、のち「元雑劇」で「百花亭」に収録。)中国の文学、それも詩歌といえば、杜甫や李白に代表される唐詩を多くの人は思い浮かべるにちがいない。「楽府」や「詞」や「曲」といった歌曲を思い浮かべる人はまずいない。まして、廓に通う遊蕩児が小脇に抱える小唄の本など論外だろうが、本書は、その論外ともいえる「十大曲」を中心にすえ、「うた」をキーワードに、杜甫や李白にも論及しながら、解説付きのアンソロジーを作ってみようというのが野心のすべて。「十大曲」を「案内人」に仕立てて中国古典歌曲の世界を散策してみよう、というのである。本書がいう「中国古典歌曲」は、具体的には「楽府」「曲子詞」「散曲」の諸ジャンル、及び「楽府」と同様に扱うことができる一部の「古詩」「近体詩」を指す。

 

【内容目次】

はじめに(高橋文治)

『陽春白雪』と「十大曲」/古典歌曲のスタイル/『花間集』と『楽府詩集』/『花間集』から『陽春白雪へ』/詞と曲と十大楽と

Ⅰ 詠史と滑稽――蘇東坡【念奴嬌】(高橋文治)

    漁樵閑話と「三国志」/歌曲と詠史/詠史と「滑稽」

 Ⅱ 歌と物語の世界――無名氏【商調 蝶恋花】(陳 文 輝)

    「蘇小小の歌」/歌か物語か/歌となった物語

 Ⅲ 文人家庭の音楽――晏叔原【大石調 鷓鴣天】(加藤 聰)

    室内の風景/家庭の楽しみ/教養と愛唱のはざま

 Ⅳ 野外の音楽――?千江【望海潮】(高橋文治)

    詞とナショナリズム/野外の楽しみ/軍楽の系譜/歌曲と軍隊

 Ⅴ 惜春の系譜――呉彦高【春草碧】(藤原祐子)

    亡国の非哀/永遠の春/「惜春」の行方

 Ⅵ 諷諭の系譜――辛稼軒【摸魚子】(小林春代)

    「妾薄命」の系譜/嘲笑と風刺/諷諭と社会詩

 多情の饒舌――柳耆卿【双調 雨霖鈴】(谷口高志)

    歌謡性の証明/「多情」と「無情」/情の計量

 Ⅷ 女流の文学――朱淑真【大石 生査子】(陳文輝・藤原祐子)

    春心の競作/才女の限界/女流の挑戦

 Ⅸ 宴席の歌――蔡伯堅【石州慢】(高橋文治)

    外交使節の宴席/宮廷の歌舞曲/酒令の音楽

 Ⅹ 歌曲の二つの行方――張子野【中呂 天仙子】(谷口高志)

    歌曲と士大夫/歌曲と隠逸/歌曲と妓楼

 おわりに――詩と音楽詩と経典浅見洋二)

引用作品・作者一覧

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