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汲古叢書110 西魏・北周政権史の研究

汲古叢書110 西魏・北周政権史の研究

唐朝成立へとつづく西魏・北周政権を政治制度(官僚制)と対外関係を中心に考察する

著者 前島 佳孝
ジャンル 東洋史(アジア)
東洋史(アジア) > 魏晋隋唐
シリーズ 汲古叢書
出版年月日 2013/08/06
ISBN 9784762960093
判型・ページ数 A5・500ページ
定価 13,200円(本体12,000円+税)
在庫 在庫あり
 

目次

 序

第一部 官制より見た政権構造

第一章 西魏宇文泰政権の官制構造について
 第一節 前提と史料         
 第二節 先行研究とその問題点  
 第三節 都督中外諸軍事について   
 第四節 録尚書事と(大)行台について
 第五節 宇文泰の官歴記事の再検討  
 第六節 丞相府と大行台

第二章 西魏行台考
 第一節 先行研究に基づく行台制度の概要とその疑問点
 第二節 事例の検出と分類  
 第三節 宇文泰の大行台  
 第四節 行台制度の再検討

第三章 いわゆる西魏八柱国の序列について――唐初編纂奉勅撰正史に於ける唐皇祖の記述様態の一事例――
 第一節 柱国大将軍         
 第二節 八柱国・十二大将軍任官者の人間関係
 第三節 官制の改革と大将軍の散官化 
 第四節 八柱国の序列についての考察
 第五節 李虎の序列位置の修正    
 第六節 『周書』における序列移動の背景と記述様態
 第七節 太尉・尚書左僕射・隴右行台

第四章 柱国と国公――西魏北周における官位制度改革の一齣――
 第一節 柱国大将軍  
 第二節 国  公  
 第三節 柱国と国公の拝受状況から見えるもの  

第二部 対梁関係の展開と四川獲得

第一章 西魏・蕭梁通交の成立――大統初年漢中をめぐる抗争の顚末――
 第一節 漢中をめぐる攻防  
 第二節 西魏・梁通交の成立――趙剛伝の検討――

第二章 西魏前半期の対梁関係の展開と賀抜勝
 第一節 漢中をめぐる攻防と通交の成立  
 第二節 西魏の荊州  
 第三節 太師賀抜勝
 第四節 西魏の対梁通交と賀抜勝

第三章 梁武帝死後の西魏・梁関係の展開
 第一節 梁の分裂  
 第二節 西魏の南進

第四章 西魏の漢川進出と梁の内訌
 第一節 戦役の発端  
 第二節 王雄の魏興・上津平定  
 第三節 達奚武の南鄭平定
 第四節 戦後処理   
 第五節 王雄の魏興・上津再平定 
 結 語――各陣営の情況の整理――

第五章 西魏の四川進攻と梁の帝位闘争
 第一節 梁の分裂――湘東王(元帝)繹と武陵王紀――
 第二節 尉遅迥の四川進攻  
 第三節 戦後処理  
 第四節 情況の整理

第六章 東魏・北斉等の情勢と西魏の南進戦略総括
 第一節 東魏・北斉の情勢  
 第二節 西魏の南進戦略

第七章 西魏・北周の四川支配の確立とその経営
 第一節 六世紀四川の概観  
 第二節 四川平定の展開概略  
 第三節 都督益州等諸軍事・益州総管の拝受者
 第四節 都督益州等諸軍事・益州総管の任免より見たる西魏・北周における四川の位置

第三部 人物研究

第一章 李虎の事跡とその史料

 第一節 清水李虎墓誌について  
 第二節 『冊府元亀』の李虎の記述   
 第三節 その他の史料から

第二章 北周徒何綸墓誌銘と隋李椿墓誌銘――西魏北周支配階層の出自に関する新史料――
 第一節 徒何綸墓誌銘  
 第二節 李椿墓誌銘  
 第三節 先世記事について

第三章 〔補論〕隋末李密の東都受官に関する一試論
 第一節 情  勢  
 第二節 李密と隋室  
 第三節 尊号拒否問題  
 第四節 李淵の即位

総  括
 
 北周(宇文氏)系図/引用史料使用版本一覧/あとがき/索 引(歴史人名索引・研究者索引)

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内容説明

【序より】(抜粋)

本書は西魏・北周政権史の基礎的研究を行い、爾後の隋唐時代に至るまでを視野に入れた広汎な研究の基盤を築くことを目的とする。

第一部では政治制度、特に官制に関わる点について考察する。西魏・北周史研究での主な論点として、両政権がどのような人々によって構成され、隋唐時代へと繋がっていったのかという、人・集団の動向が挙げられる。西魏から唐に至るまでが一連の政権として考えられるのは、これらを貫く人々の大きな流れが認められるからである。しかしながら、これらの先行研究や概説などが前提としてきた各種の認識・把握には、基本的な検討を経ていない、或いは不充分な点が少なくない。特に西魏時期の官制構造については、従来研究が無いといっても過言ではない。中央政府・政権中枢の構造を把握することは、一王朝の政治史・制度史の根幹であり、政権に参画した人物が政権内でどのような位置にあったかを知るための基本的な目安となる。

そして、西魏のそれが後の北周・隋・唐へ直接的な影響を及ぼしていることはいうまでもない。しかしながら、例えば宇文泰の官歴と丞相府・大行台の位置付けや、同一名称でも途中で位置付けが大きく変わった重要官職があることなどが、従来の研究では全く踏まえられていないのである。

第二部では、分裂時に存立した政権の最大の課題である、対外関係・戦争について考察する。西魏・北周から隋にかけては、この間の二度の王朝交代に際して決して何事もなく政権移譲が行われたわけではないものの、支配階級の上層部の構成に大きな変動は見られなかった。従って、これらを一連の勢力として扱うことには問題はなかろう。西魏から隋にいたる拡大の流れは、三〇〇年にもわたる中国の分裂時代を収束させた、大きな統一事業であった。

第三部には、人物に関する研究を載せた。特に隋唐時代への流れを重視する視点を保ちつつ、その影響が一個人に止まらない重要人物・一族から、従来の認識のされ方に問題がある事例を取り上げた。本書での検討の結果、新しい見解を提示し、従来の認識に問題点を生じさせた諸要因についても言及する。これらの諸要因は、文献・石刻にかかわらず、当時の史料を検討する上で常に考慮しておかねばならない事項であると考える。

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