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汲古叢書101 宋代政治構造研究

汲古叢書101 宋代政治構造研究

従来の「君主独裁政治」・「中央政権的官僚制」論を継承・発展させ、新しい宋代政治像を提起する

著者 平田茂樹
ジャンル 東洋史(アジア)
東洋史(アジア) > 宋元
シリーズ 汲古叢書
出版年月日 2012/02/15
ISBN 9784762960000
判型・ページ数 A5・556ページ
定価 14,300円(本体13,000円+税)
在庫 在庫あり
 

目次

序言――研究の視点・方法
史料の引用について
第一部 宋代の選挙制度の構造
第一章 「試出官法」条文の意味するもの
         ――唐から宋への銓選制度の展開――
第二章  「試出官法」の展開
         ――銓選制度をめぐる新法党,旧法党の争い――
第三章 「試刑法」 制定の構想
         ――王安石の刑法改革を手掛かりとして――
第四章 選挙論議より見た元祐時代の政治
第二部 宋代の朋党
第一章 宋代の朋党と詔獄
第二章 宋代の朋党形成の契機について
第三部 宋代の政治システム
第一章 宋代の言路
附篇 墓誌銘から見た劉摯の日常的ネットワーク
第二章 宋代の政策決定システム――対と議――
第三章 文書を通して見た宋代政治
          ――「箚子」,「帖」,「牒」,「申状」の世界――
第四章 文書を通してみた宋代政治
          ――「関」,「牒」,「諮報」の世界――
第四部 宋代の政治日記
第一章 宋代の政治史料――「時政記」と「日記」――
第二章 『王安石日録』研究
          ――『四明尊堯集』を手掛かりとして――
第三章 周必大『思陵録』・『奉詔録』から見た南宋初期の政治構造
第四章 『欧陽脩私記』から見た宋代の政治構造
第五部 宋代の政治空間
宋代の政治空間を如何に読むか?
結語 新たな宋代政治史研究の展望
あとがき・初出一覧・索 引・英文題目・中文要旨 

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内容説明

本書は,宋代の政治の仕組みを解き明かすことを目的に,内藤湖南・宮崎市定両氏が提唱した「君主独裁政治」論を出発点として,宋代の政治構造を多角的に捉え直し,新しい宋代政治像を提起した画期的な論文集である。

【序言――研究の視点・方法】より(抜粋)

本書は全十五章からなり,大きく五部に分かれる。第一部では当時の制度制定が複合的な原理に基づいて行われたこと,及び議論を分析することによって従来,新法党,旧法党と単純に色分けされてきたものが,実際にはどのように考え,行動したかを論じていく。

 第二部「宋代の朋党」では,朋党=政治集団とは何かという原理的な問題,ならびに朋党がどのように形成されていくかを論じている。具体的には個々の士大夫官僚がどのような地縁,血縁,婚姻,学縁,業縁といった樣々な関係性を有しているかを丹念に洗い出し,そのネットワーク構造が当時の人事システム(科挙=薦挙制度)や政策決定システムと結びつき,その政治システムを媒介として集団性を強め,政治闘争を展開していったかを論じていく。

第三部「宋代の政治システム」では,政策決定システムならびに文書システムの問題について論じている。

具体的には三省六部を中心とした行政府と論戦を繰り広げた「言路」の官の役割,政策決定システムの柱となる「対」と「議」,中央と地方とを結ぶ各種文書の類型とその機能について分析を行っている。

第四部「宋代の政治日記」は,政治史料の問題を論じた部分である。政治をより動態的な観点,すなわち「誰が,何を,いつ,どのようにして手に入れるのか」という観点から捉え直す場合,宋代の政治家が書き残した日記史料が有効となる。第四部では日記史料を用いながら,政治の背後にある世界を描き出すことを試みる。

第五部「宋代の政治空間」は,宋代の政治空間について多面的な角度から論じた部分である。従来の研究においては,政治空間というと都城や宮殿・役所の配置といった物理的な空間分析が中心であった。しかし,政治空間は人と人との交流によって作り出される「場」という側面を同時に有するのであり,ここでは物理的空間の問題に加えて機能的空間,象徴的空間の問題もあわせて論じている。この作業を通じて,唐代から宋代へ,そして宋代から元,明,清へどのように政治空間が変化していくかを俯瞰する。

  本書は,新しい宋代政治像の析出を目標としている。すなわち,本書全般において心がけてきたのは,先学が残してくれた日本の宋代政治史研究における大きな遺産,例えば宋代政治に関わる「君主独裁政治」,「中央集権的官僚制」,「文治主義」といった概念をそのまま継承するのではなく,一つ一つ洗い直すことによって独自の宋代政治像を提示しようとした点である。この像がどれほど有効かは学界の判断にゆだねなければならないが,今後の宋代政治史研究の発展に幾ばくかなりとも寄与できれば幸いである。

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